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ヌルッとスタート編
第17話 ミルクスープ (前編)
しおりを挟む「お待たせ。さあ食べよっか」
私を挟むように隣にクレールさんが座った。
おお、両手に男前、前方にほかほかスープ。
良き。
「美味しそう! いただきまーす」
ふう~、スープしみる~。
具沢山ミルクスープ。
見てくれは人参じゃがいも玉葱、多分キャベツに鳥肉入り。
もぐもぐ……。
人参とじゃがいもと順に食べてみたが、やはり地球と同じ味、同じものかなと思う。
ソーセージが豪快に丸ごと1本入ってる。
視線を感じチラッと隣に視線をやると、やはりクレールさんは私を見ていた。
「コニー。君は日本人なのかい?」
「うん、そうだよ。詳しい自己紹介まだだもんね。食べながらでもいいなら気楽にぽつぽつしよっか? でもよく分かったね? なんで?」
「日本人のおヌル様が、食べる前に『いただきます』っていうのが日本人ならではの習わしだって伝えてから、地域によって定着してたりするんだよ。
それに14年前に招かれたおヌル様って実は日本人女性なんだ。当時彼女の指導班に所属してたり、彼女の夫が僕の親戚筋だから、魔道具回路の仕事を頼まれたり。打ち合わせも兼ねて食事に呼んでもらったこともあったよ。だから少しは僕も日本の事を知ってると思う」
「本当!? 日本人のおヌル様! わあぁ会いたい!!」
「もちろん連絡とるよ、安心して。ただね、今妊婦さんで体調を気遣って養生してらしいんだ」
「え! それはとても心配だね……」
「又聞きだからはっきりとは言えないけど、本人がとても行動派で、上2人の子供の世話になにやかやと、ついつい張り切ってしまうから、周りの家族が心配して万が一に備えての養生らしいよ」
「私の友人も2人目の妊娠の際、切迫早産気味で入院とかしてた子がいたよ。なんか心配……知らないとは言え大変な時に気軽に会いたいなんて、私……。ごめんなさい。
お会いしたこともない方だけど、母子共に元気に出産を迎えられるよう祈るぐらいしか、私にはできないけど」
「コニーは優しいな。
ほら、しっかり温かいうちに食っちゃえ」
エタンさんはさらっと私の頭を一撫でした。
「クレール、いつものマスタードくれ」
「ん、ちょい待って」
クレールさんが立ち上がり、冷蔵庫から小瓶を取り出して、スプーンも持ってきてくれた。
「僕の家は乳製品が好きでね、しょっちゅうこのミルクスープ食べてるんだ。消化に良いし身体が温まるから、もしも今日君が目覚めた時にこれなら食べられるかなと思ってさ。簡単だから作ってみたんだ。僕の好物だよ。
コニーが起きたあとの会話で、お腹すいたって元気に言ってくれたから、君が洗面所に行ってる間にエタンのリクエストもあって、食べ応えのあるソーセージを急いで突っ込んでさ。別の鍋で茹でれば良かったんだろうけど、まあ手抜きってことで」
「クレールさんが作ったの? とても美味しいよ。このパンとも合うね」
「ほい、ソーセージにはこのマスタードつけて食うのが俺らのお気に入り」
エタンさんは私のお皿にマスタードをスプーンで瓶から掬って載せてくれた。
そして彼自身のスープ皿からプスっとソーセージをフォークで刺して取りだし、あらかじめ皿に盛っておいたマスターをつけて、ガブっと齧り付く。
「美味ぇ」
うん良き笑顔だね!
しからば私も。
「うん、美味しい!」
ふーむ? どれもこれもなんか馴染みがなきにしもあらずあらず……
「ねえ。食べ物は地球と共通する感じがするんだけど。素材や製造法も、もしかして地球の皆様の影響力ってある?」
「もちろん、おヌル様の影響は食べ物に限らずそこかしこに。今回の食べ物で言うと」
「待って待って! 私当てたい!
えっと、このライ麦パンはロシアの。こっちのライ麦パンとソーセージはドイツ。この白い普通のパンは一般的過ぎてよく分からないや。そんでマスタードはフランス。
どうかな?」
「コニーすげえ! クレール、全部合ってるよな?」
「うん、合ってる……。ソーセージは日本人のおヌル様の蛍様も分かったみたいだったけど、他のまでは。
それに2種のライ麦パンの由来国の違いがわかるなんてビックリだよ。白いパンはこっちの世界で主に食べられてる物だよ。
そしてこのマスタードは300年程前の方、フランス人の6人目おヌル様が監修された物だ」
もぐもぐ。
「当たった? やったね! 嬉しいな。
日本人って外国の食べ物とか積極的に食べるの好きな国民っぽくてさ。都会にはありとあらゆる国の料理店があって。
家の近所にあるロシア人のやってるロシア料理店には何回か行ったことあるんだ~」
「ねえ。確かロシアとソ連て同じで合ってる?」
「そうだね。うーん、(詳しくはイコールじゃないけど)合ってる」
アホなのでちゃんと答えられないから同意した。
「ドイツパンはね、会社員時代会社の近くに専門店があったからわりと買って食べたりした。
今日のこのパン達、両方ともライ麦多め小麦と混ぜた配合かと思うんだけど。
サワー種とかライ麦の種類とか、好みなのか地産特徴なのかよくわからないけど、それぞれ味の系列に特徴があってさ。
それがそのまんま異界の地に、何百年か経ても受け継がれてるなんて驚きだよね! 感動する」
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