舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

文字の大きさ
上 下
4 / 133
ヌルッとスタート編

第4話 アンポンタンポカン(第三者視点のちコニー視点)

しおりを挟む

******(第三者視点)

「おーい! 今いくぞー!!」
 森の奥、遠くから男の声がする。 

 しかし今のコニーは、耳に届いてる筈だがこれっぽっちも聴いちゃいない、聞こえていない、そんな状態であった。

 声がするや否や後方森の奥より、地面の土や落ち葉やら枝屑を舞い上げ、疾風と共に男が現れた。

 その男は乗り物のようなものからバッと飛び降り、へたり込んでいたコニーに後ろから素早く駆け寄った。

 がしりと、その大きな手をコニーの肩にかけ

「しっかりしろ! 大丈夫か? 呼吸は? 意識はあるか? 俺の言ってること分かるか?!」

 覗き込むように顔を寄せ、男は矢継ぎ早に大声で話しかけた。

 乱暴に身体を揺さぶられたりはしないものの、突然肩を掴まれ、大声をかけられたのだ。

 茫然自失のコニーが受けた驚きたるや、大きな衝撃と言わずしてなんと言おう。


******


 え!!? 今度はいったい何が!?

 振り返ろうとガバッと横を向いた瞬間。
 私の目に飛び込んできたのは、髭面ロン毛のガタイのいい外人顔の男のドアップだった。

 ひぃぃ!!!

 思わず無言で横っ飛びで退き、男の大きな手を振り払う。
 人間あまりにも驚き過ぎると、キャーとかうわぁとか声にはならなかったりするものだ。

「あ、いや。驚かせてすまない。お、俺はけして怪しいものでは……」
 男は慌てふためいてはいるものの、先ほどの切迫した語気を打ち消すように、静かに落ち着いたトーンの声へと切り替えた。

 私の肩にかけていた手は、振り払われた今や、そのまま宙に浮いている。
 そして申し訳なさげに眉を寄せ、自身の膝の上に下ろした。

「具合は大丈夫か? 声はでるか? 俺の言葉は通じているか?」
 再度、幾つもの問いを私に投げかけ始めた。

 私の心臓は、未だばっくばくの尋常じゃない勢いのままだ。
 男と無言で見つめ合うこと数秒。

「おーい!! エタン! おヌル様はご無事かー!?」

 今度はさらにもう1人。
 男の後方森の中より掛け声と共に、キックボードのようなセグウェイのような乗り物に乗って、ものすごいスピードでこちらへと向かってくる。

 気がついたらあっという間に近くにまで迫っていて、キッと乗り物を停め颯爽と飛び降り、流れるように私の目前に跪ひざまずいた。

「私は王家森番、クレール・アルコンシエルと申します。
おヌル様を保護しに馳せ参じました!」

 目の覚めるようなキラキラ輝くオレンジ色の長い髪をした、外国人モデルばりの美男子。
 パジャマ姿で、宝石のように煌めく明るい緑の瞳で私を見つめながら、そう言った。

 驚き過ぎた時って、漫画みたく思わず口があんぐり開くもんなんだなぁ。
 アンポンタンポカンとなった私は悪くない。
 だってこんな白昼夢、ドグラマグラ過ぎる……。

 ドン冷えの卵白を頭から被り。
 なぜか死ぬほど息苦しい思いをして。
 助かったと思ったら、深夜の工場ではなく昼間のキラキラしい森にいて。
 見た目インパクト強な外国人男性が次々に現れ。
 ノリこそ違うが二人ともハイテンション&ペラペラな日本語で、私にぐいぐい話しかけてくる。

 本日三度目のフリーズ中。

「おい。エタン。いったいどこまでおヌル様にお伝えしたんだ?」

「いや、何も。『大丈夫か?』って話しかけただけだ。
そういや彼女まだ一度も口を聞いてないな。会話ができないのかも……」

 目の前の二人の男のやり取りに、慌てて私は口を挿んだ。

「わわ、大丈夫です! ちゃんと仰ってること理解できてます」
 あとから来た人が余りに素っ頓狂過ぎて、彼が何を言ってたんだか、いまひとつ聞いてなかったけれど……。

 へたり込みポーズから居住まいを正すために、もぞもぞとゆっくり動く。
 よし、ちゃんと動ける。

「す、すみません。ご心配おかけしまして。
なんだか頭も身体もヨレヨレで、『大丈夫です』とは正直言いづらいんですけど……。
でもちゃんと身体は動かせますし、会話もできるぐらい意識もしっかりしています。
お声かけしてくださってありがとうございます。それで、えっと……」

 にこやかに会話をするも、かたや心の中では。

『一体私に何が起きてて、そんでここはどこなの?』
『謎のまま独りぼっちより、この人たちを頼ったほうがいいような気がする』
『親切心から声をかけてくれてる感じが伝わってくるし、危険な人たちではなさそう』
『でもあまりにおかしなこの自分の現状を、しょっぱなから彼らに正直に伝えるのもなぁ……』
『まずは日本語流暢ですねって褒めるべきかな? いやハーフで日本国籍の方だったら逆に失礼にあたるか?』

 などなど、クエスチョンマークがブンブンと脳を高速で行き交っているものの、それらをぐっと押さえ込み、外面そとづらを張り付けて私がさらに喋ろうとすると……

「っっ! こんなにもしっかり理解し合って、流暢に会話が出来るとは……!」

 私の言葉を受け、オレンジの髪の男は片手で顔を覆い、俯いてもう片方のこぶしをググっと握り締めた。

 そして顔を上げて、私をじっと見つめながら、
「駆けつけるのが遅くなって申し訳ありません!
さぞや苦しかった事でしょう。お身体に何事もなくて良かった。本当にご無事で何よりです」

 盛大に謝罪の言葉を述べた。





【次回予告 第5話 非常時にプチトキメキを添えて】


𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣

今起きてるこの事態、次回明らかになります。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

処理中です...