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【第七章】本性

【第十五話】殺戮①

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ククルとのやり取りの後、2人はそのまま教室へと戻り、普通に授業を受けた。

クラスメイトたちにも謝罪の体でそれとなくフォローを入れ、完全ではないが、一応そっちは難を逃れた形になるだろう。

しかし、

肝心のククルはあれから教室に戻っては来なかった。

授業はそのままつつが無く進行され、ククルがいないまま、日常はとりあえず回り続ける。

恭司とユウカのまた、その波に呑まれた。


「てか、ここでいきなりあの展開はないだろうよ……」


恭司は他のクラスメイトたちに聞こえないようボソリと隣のユウカに話し掛けた。

本当にクレイアらしい、見事な不意打ちだ。

こっちが警戒して当たろうと方針を決めたそばからの奇襲。

うっかり眠ってしまった2人の失態も勿論あるが、2人の練度を考えても、アレが成功できたのはククルのレベルが故だろう。

同じ若さでありながら、本当に恐ろしい敵だった。


「ところで、さっきの件なんだけd」

「アレはすごく大変だったなあああああああああ!!」


小声で叫ぶという器用な技を披露しながら、恭司はユウカの不意打ちをギリギリで躱した。

これから色々とやることが山積みなのだ。

時間のかかる問題はひとまず後回しにするに限る。

ユウカはやはり不貞腐れた様子だったが、もういっそのこと気付かない振りをすることにした。

物事には優先順位というものがあるのだ。

今は別のことに構っている暇はない。


「私としてはとても大切なことだと感じる次第なんですけれども……。合意のない一方的なキスは犯罪ですよ?」

「………………」

「今ならまだ交渉の余地も残していますよ?」

「………………」

「ホントにいいんですか?このままだとアナタ、大変なことになりますよ?」


まるで悪徳宗教の勧誘のような口調で迫りながら、ユウカは強かに恭司を追い詰めていく。

しかし、

今日の恭司はいつもとは違う。

ユウカの強迫にも頑として迎え撃つ構えを見せていた。

今はこんな風に遊んでる暇はないのだ。

恭司の正体というデッドゾーンに差し掛かった今、恭司には急いでやらなければならないことが山ほどある。

例えユウカがどれだけ巧妙な手段を取ったとしても、今それに応じるわけにはいかない。

重ねて言うが、恭司にも優先順位というものがあるのだ。


「まぁ、そんなこと言いながら私も具体的にどうしようとかは決めてないんだけどね。なんせついさっきのことだし」

「………………」

「ククルさんの件とか、話し合わなきゃいけないことも沢山あるっていうのも分かってるし。こんな大変な時に無茶なことは言わないよ」

「………………」

「それに、さすがにあいつらに関しては私も他人事じゃいられないしね。自分の肉親が関わってる以上、私もいつまでも知らぬ存ぜぬじゃ通らないし……」

「………………」

「だから、とりあえずはまぁ、お父さんに事の次第をキッチリ報告するくらいにしとくよ」

「勘弁してください」


恭司の最優先課題に『言い訳を考える』が追加された。
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