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【第六章】クレイア
【第十四話】ククル・ウィスター<2>⑩
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「え?き……ギルス?」
突如パチパチと手を叩き始めた恭司のことを、ユウカは訝しげな表情で振り返った。
何も知らないユウカからすれば摩訶不思議な行動だ。
しかし、
恭司はユウカにフォローの言葉も入れず、ただただ不敵な笑みで返す。
「本当の親族じゃない……ね。こちらのミスによるものとはいえ、よくそこまで気づいたな」
「おお……!!ではっ!!」
「いや……確かに俺は “まだ” ユウカの本当の親族じゃないが、まるっきりな嘘じゃないんだ。混乱や変な噂が流れるのを警戒して曖昧な言い方になったが、俺がユウカの親族になったのは “最近” でな」
「……?どういうことですか?」
頭にクエスチョンマークを浮かべるククルに、恭司は相変わらずの不敵な笑みを返した。
正直、内心は冷や汗塗れの錯乱状態なのだが、今はこのスタイルでいくしかない。
急場凌ぎでたった今思い付いたことをぶっつけ本番でやろうとしていることなど、決して気取られてはならないのだ。
勿論、ユウカもコレについて知っているはずもなく、さすがに戸惑っているようだったが、肝心のククルは恭司に一杯一杯になって気付いていないようだ。
ここはボロが出ないうちに捲したてるしかない。
恭司は緊張隠しに一息吸い込むと、精一杯堂々と言い放つ。
「俺は、ユウカと夫婦関係にあるんだ」
空気がザワついた。
ククルはおかしなものを見るような顔になり、ユウカは純粋に驚いている。
どういうことなのか、瞬時には理解できない様子だ。
恭司は今のうちに畳み掛ける。
「ユウカの母親が知らなかったのは当然だ。コレはユウカの母親が出て行ってからの話なのだからな」
「い、いや、そんなデタラメ信じられません!!馬鹿にするのも大概にしてください!!」
ククルもそこに応戦した。
いくら混乱してるとは言っても、ここまで荒唐無稽な話を鵜呑みにするほど可愛い経験値じゃない。
諜報の意地を賭けても、間違った情報を本部に与えることこそが彼女の恥だ。
だからこそ、
ククルは食い下がる。
しかし、
恭司の不敵な笑みはここでも崩れなかった。
「ふっ、デタラメなのではない。信じられないなら、今から証拠を見せてやる」
「証拠?」
心底疑問そうに問いかけてくるククルをよそに、恭司は呆然としているユウカのもとに歩み寄った。
ユウカはここきても訳の分からなそうな様子だ。
アワアワとどうすればいいか分からなくなっている所に、恭司はユウカを真正面から抱きしめる。
「ひゃう!?」
ユウカから出る素っ頓狂な声。
事態をまるで理解出来ていない様子だ。
恭司がたった今思い付いただけのものなのだから当たり前だが、恭司はそんなユウカを尻目に、抱き締める腕を強くする。
ここがトイレで、さらには第三者もいることを抜きにすれば、とてもいい雰囲気だ。
恭司はユウカを抱き締めながら顔を近づけると、耳元で小さく呟く。
「ごめん」
途端、
恭司はユウカのその唇にキスをした。
唇と唇を合わせるだけの子どものキスだが、17歳の彼らにはとても刺激的な一瞬だった。
「ん~~~~~~ッッッ!?」
ユウカは唇を防がれながら、声にならない声を上げる。
いきなり繰り広げられた急展開に、さすがのククルも付いていけないようだった。
恭司はユウカの唇から自分の唇を離すと、ククルの方に視線を戻す。
突如パチパチと手を叩き始めた恭司のことを、ユウカは訝しげな表情で振り返った。
何も知らないユウカからすれば摩訶不思議な行動だ。
しかし、
恭司はユウカにフォローの言葉も入れず、ただただ不敵な笑みで返す。
「本当の親族じゃない……ね。こちらのミスによるものとはいえ、よくそこまで気づいたな」
「おお……!!ではっ!!」
「いや……確かに俺は “まだ” ユウカの本当の親族じゃないが、まるっきりな嘘じゃないんだ。混乱や変な噂が流れるのを警戒して曖昧な言い方になったが、俺がユウカの親族になったのは “最近” でな」
「……?どういうことですか?」
頭にクエスチョンマークを浮かべるククルに、恭司は相変わらずの不敵な笑みを返した。
正直、内心は冷や汗塗れの錯乱状態なのだが、今はこのスタイルでいくしかない。
急場凌ぎでたった今思い付いたことをぶっつけ本番でやろうとしていることなど、決して気取られてはならないのだ。
勿論、ユウカもコレについて知っているはずもなく、さすがに戸惑っているようだったが、肝心のククルは恭司に一杯一杯になって気付いていないようだ。
ここはボロが出ないうちに捲したてるしかない。
恭司は緊張隠しに一息吸い込むと、精一杯堂々と言い放つ。
「俺は、ユウカと夫婦関係にあるんだ」
空気がザワついた。
ククルはおかしなものを見るような顔になり、ユウカは純粋に驚いている。
どういうことなのか、瞬時には理解できない様子だ。
恭司は今のうちに畳み掛ける。
「ユウカの母親が知らなかったのは当然だ。コレはユウカの母親が出て行ってからの話なのだからな」
「い、いや、そんなデタラメ信じられません!!馬鹿にするのも大概にしてください!!」
ククルもそこに応戦した。
いくら混乱してるとは言っても、ここまで荒唐無稽な話を鵜呑みにするほど可愛い経験値じゃない。
諜報の意地を賭けても、間違った情報を本部に与えることこそが彼女の恥だ。
だからこそ、
ククルは食い下がる。
しかし、
恭司の不敵な笑みはここでも崩れなかった。
「ふっ、デタラメなのではない。信じられないなら、今から証拠を見せてやる」
「証拠?」
心底疑問そうに問いかけてくるククルをよそに、恭司は呆然としているユウカのもとに歩み寄った。
ユウカはここきても訳の分からなそうな様子だ。
アワアワとどうすればいいか分からなくなっている所に、恭司はユウカを真正面から抱きしめる。
「ひゃう!?」
ユウカから出る素っ頓狂な声。
事態をまるで理解出来ていない様子だ。
恭司がたった今思い付いただけのものなのだから当たり前だが、恭司はそんなユウカを尻目に、抱き締める腕を強くする。
ここがトイレで、さらには第三者もいることを抜きにすれば、とてもいい雰囲気だ。
恭司はユウカを抱き締めながら顔を近づけると、耳元で小さく呟く。
「ごめん」
途端、
恭司はユウカのその唇にキスをした。
唇と唇を合わせるだけの子どものキスだが、17歳の彼らにはとても刺激的な一瞬だった。
「ん~~~~~~ッッッ!?」
ユウカは唇を防がれながら、声にならない声を上げる。
いきなり繰り広げられた急展開に、さすがのククルも付いていけないようだった。
恭司はユウカの唇から自分の唇を離すと、ククルの方に視線を戻す。
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