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【第六章】クレイア
【第十四話】ククル・ウィスター<2>⑧
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「ゴキブリとはまた酷い言われようですが……私自身、ここはとても居心地のいい場所でしてね。単純に歳も相応ですし、純粋に学生をさせていただいているだけですよ」
「だったら尚更、私たちにちょっかい出す必要なんて無いじゃない。もう放っといてよ。三谷恭司が君たちにとって何なのか知らないけど、私たちにとっては迷惑極まりないの。これ以上関わってこないで」
「そうも参りません。三谷恭司様をお探しし、『共に同じ道を歩む』のが我等の悲願。それを目の前にして退がるわけにはいきません」
「と、共に歩むって……。それって……」
「ええ、貴方様の思っている通りかと思いますよ」
ククルは意外にもペラペラと自分たちのことを話してきた。
何か思惑があるのか、それとも学生相手と舐めているのか。
もしくは『嘘』か……。
現段階では判断がつかない。
ククルは嘘とも本当とも取れる仕草で話している。
だからこそ、
恭司は一度、揺さぶりをかけてみることにした。
「仮に、三谷恭司の目的とお前らの目的が違えばどうするんだ?」
「!?」
ククルはギョッとしたような顔を恭司に向けた。
長い前髪が乱れ、隙間から見える目は大きく見開かれている。
予想外に大きな反応だ。
てっきりコレも躱されると思っていただけに、むしろ恭司の方が驚いた。
初めて、ククルが感情的な面を露わにしたと言っていい。
「ど、どうしてそんなことを仰るんですか?そんな……心にも無い……」
「い、いや、単に可能性の話をしただけなんだが……」
「そんなことはあり得ません!!ねぇ、そうでしょう?そうですよね!?」
ククルは思いの外激情しながら、こちらに答えを求めてきた。
どう考えても、恭司を三谷恭司と信じて疑っていない様子だ。
やはり、ククルにはあるのだろう。
恭司が『三谷恭司である』という確証が。
恭司は尋ねる。
「何故、そこまで俺を三谷恭司だと決め付けるんだ?これくらいの背丈や体格の奴ならそこら中にいるだろう?」
「背丈や体格などという不確かなものではありません!!私の心がそうだと言っているのです!!」
「もっと不確かになってるじゃねぇか」
言葉の真意はともかく、あれだけ妖しげな雰囲気を持っていたククルが狼狽えているというのは、むしろ真実を聞くチャンスだった。
ククルはまるで年相応の少女であるかのように、論理性の欠けた主張を延々と繰り返している。
世界中を混乱に陥れてきたクレイアの諜報などとは到底思えない反応だ。
それだけ、ククルにとって三谷恭司は神か何かのような存在となっているのだろう。
ククルはこんなにも冷静さを失うくらい三谷恭司を狂信していて、尚且つ恭司のことを三谷恭司と確信しているということだ。
まぁ、問題は、その決め付けが『合っている』ことにあるのだが……。
恭司は首を横に振った。
「だったら尚更、私たちにちょっかい出す必要なんて無いじゃない。もう放っといてよ。三谷恭司が君たちにとって何なのか知らないけど、私たちにとっては迷惑極まりないの。これ以上関わってこないで」
「そうも参りません。三谷恭司様をお探しし、『共に同じ道を歩む』のが我等の悲願。それを目の前にして退がるわけにはいきません」
「と、共に歩むって……。それって……」
「ええ、貴方様の思っている通りかと思いますよ」
ククルは意外にもペラペラと自分たちのことを話してきた。
何か思惑があるのか、それとも学生相手と舐めているのか。
もしくは『嘘』か……。
現段階では判断がつかない。
ククルは嘘とも本当とも取れる仕草で話している。
だからこそ、
恭司は一度、揺さぶりをかけてみることにした。
「仮に、三谷恭司の目的とお前らの目的が違えばどうするんだ?」
「!?」
ククルはギョッとしたような顔を恭司に向けた。
長い前髪が乱れ、隙間から見える目は大きく見開かれている。
予想外に大きな反応だ。
てっきりコレも躱されると思っていただけに、むしろ恭司の方が驚いた。
初めて、ククルが感情的な面を露わにしたと言っていい。
「ど、どうしてそんなことを仰るんですか?そんな……心にも無い……」
「い、いや、単に可能性の話をしただけなんだが……」
「そんなことはあり得ません!!ねぇ、そうでしょう?そうですよね!?」
ククルは思いの外激情しながら、こちらに答えを求めてきた。
どう考えても、恭司を三谷恭司と信じて疑っていない様子だ。
やはり、ククルにはあるのだろう。
恭司が『三谷恭司である』という確証が。
恭司は尋ねる。
「何故、そこまで俺を三谷恭司だと決め付けるんだ?これくらいの背丈や体格の奴ならそこら中にいるだろう?」
「背丈や体格などという不確かなものではありません!!私の心がそうだと言っているのです!!」
「もっと不確かになってるじゃねぇか」
言葉の真意はともかく、あれだけ妖しげな雰囲気を持っていたククルが狼狽えているというのは、むしろ真実を聞くチャンスだった。
ククルはまるで年相応の少女であるかのように、論理性の欠けた主張を延々と繰り返している。
世界中を混乱に陥れてきたクレイアの諜報などとは到底思えない反応だ。
それだけ、ククルにとって三谷恭司は神か何かのような存在となっているのだろう。
ククルはこんなにも冷静さを失うくらい三谷恭司を狂信していて、尚且つ恭司のことを三谷恭司と確信しているということだ。
まぁ、問題は、その決め付けが『合っている』ことにあるのだが……。
恭司は首を横に振った。
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