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【第六章】クレイア
【第十二話】実技訓練⑨
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モーリスとクルトの戦いを見て、ある意味で恭司は愕然としていた。
弱そうに見えても、戦えばそれなりにやるのだろうと思っていたのだ。
しかし、
試合を見て恭司が素直に感じた感情は、『退屈』だ。
欠伸の出るような遅い攻撃を仕掛けるモーリスに、カウンターどころか防ぎきることすらマトモに出来なかったクルト。
上から2番目のクラスなどとは到底思えない。
Bクラスということは、少なくともこの有名校の中で60位以内には入る実力のはずだ。
これがBクラスの実力なら、C以下のクラスはどれだけゆっくりと攻防を行っているのか……。
そして、
こんなレベルの人間たちと何故ユウカは同じクラスに所属しているのか。
ユウカと模擬戦を行った時のことを思い返しても、辻褄が合わない。
恭司は率直に聞いてみることにした。
「ユウカ。ユウカは何でBクラスなんだ?」
「Aクラスが嫌いだからだよ」
「…………」
好き嫌いだった……。
「そんな感じでいけるものなのか?」
「上がりそうになったら学校休んで不戦敗になっちゃったらいいんだよ。てか、そもそも私、学校自体そんな来ないし」
「…………」
サボリでもあった……。
「なんか腑に落ちないというか残念というか……。何でAクラスが嫌いなんだ?」
「え?だって貴族の子どもって全員Aクラスにいるんだよ?関わりたくなくない??」
「同意する気持ちがないわけじゃないが……勿体なくないか?」
「勿体なくないよ。このBクラスっていうのは、昇降口で渋滞に会うこともなく、貴族のいない中で無口な同級生たちを尻目にただ眠ることを許容されている最高のクラスなんだよ?先生も私にほとんど関わってこないし、サボってても何も言われないし。こんないい環境から、何が悲しくて自ら面倒臭い所に移動するのさ?」
「どこから突っ込むべきか迷う所だな……」
つまりは実力はあっても上がりたくないから、わざと適度に負けているということだ。
武芸者としての武士道精神からはビックリするくらい離れているが、ユウカはそもそも学校自体に登校するメリットを感じていない子だ。
勉学や武術の自己研鑽に興味があるわけでもなければ、卒業後の進路について考えているわけでもない。
その上友達もいらないときては、Aクラスが居心地悪そうだから行かないというのも、あながち間違った判断ではないだろう。
勿体ないという気持ちはないでもなかったが、一応納得はできた。
「同じクラスでこんなに実力差があることにようやく合点がいったよ。ちなみに、世間的にはこいつらのレベルっていうのは大体どのくらいのレベルと認識されてるんだ?」
恭司は次の対戦に目を向けつつ、気になったことを尋ねてみた。
ユウカは少し考えてから答える。
「まぁ、別に低いとは思われてないと思うよ。君がいた時代と違って今は戦争が起きてるわけでもないし、別に弱かった所で日々の生活に差し支えないしね。ただ単純に内申点が欲しいだけみたいな」
「おいおい……。なら何で政府主導の国立学校に武芸科なんてものがあるんだ……。普通に学力の方が優先度高いんじゃないのか?」
「さあ?王様の意向なんじゃない?確か戦争があった時から今も現役で生きてる人らしいし」
「いやいやそれはさすがに無いだろう。それって最低でも200年は生きてるってことだぞ」
「それが本当らしいよ。この学校の設立は勿論、その大会が開催されることになったのもその人の考えらしいし。軍拡大も進められてるとか」
「化け物だな……。200歳オーバーの御老人が、人生最後の花火に戦争でも起こそうってのか?」
「さあ?どうなんだろ。まぁでも、そういう意味では、この状況はその人にとっては残念なことなんだろうね。武芸科学生全体のレベルが低いってことだから」
「だろうな。お気の毒な話だ」
弱そうに見えても、戦えばそれなりにやるのだろうと思っていたのだ。
しかし、
試合を見て恭司が素直に感じた感情は、『退屈』だ。
欠伸の出るような遅い攻撃を仕掛けるモーリスに、カウンターどころか防ぎきることすらマトモに出来なかったクルト。
上から2番目のクラスなどとは到底思えない。
Bクラスということは、少なくともこの有名校の中で60位以内には入る実力のはずだ。
これがBクラスの実力なら、C以下のクラスはどれだけゆっくりと攻防を行っているのか……。
そして、
こんなレベルの人間たちと何故ユウカは同じクラスに所属しているのか。
ユウカと模擬戦を行った時のことを思い返しても、辻褄が合わない。
恭司は率直に聞いてみることにした。
「ユウカ。ユウカは何でBクラスなんだ?」
「Aクラスが嫌いだからだよ」
「…………」
好き嫌いだった……。
「そんな感じでいけるものなのか?」
「上がりそうになったら学校休んで不戦敗になっちゃったらいいんだよ。てか、そもそも私、学校自体そんな来ないし」
「…………」
サボリでもあった……。
「なんか腑に落ちないというか残念というか……。何でAクラスが嫌いなんだ?」
「え?だって貴族の子どもって全員Aクラスにいるんだよ?関わりたくなくない??」
「同意する気持ちがないわけじゃないが……勿体なくないか?」
「勿体なくないよ。このBクラスっていうのは、昇降口で渋滞に会うこともなく、貴族のいない中で無口な同級生たちを尻目にただ眠ることを許容されている最高のクラスなんだよ?先生も私にほとんど関わってこないし、サボってても何も言われないし。こんないい環境から、何が悲しくて自ら面倒臭い所に移動するのさ?」
「どこから突っ込むべきか迷う所だな……」
つまりは実力はあっても上がりたくないから、わざと適度に負けているということだ。
武芸者としての武士道精神からはビックリするくらい離れているが、ユウカはそもそも学校自体に登校するメリットを感じていない子だ。
勉学や武術の自己研鑽に興味があるわけでもなければ、卒業後の進路について考えているわけでもない。
その上友達もいらないときては、Aクラスが居心地悪そうだから行かないというのも、あながち間違った判断ではないだろう。
勿体ないという気持ちはないでもなかったが、一応納得はできた。
「同じクラスでこんなに実力差があることにようやく合点がいったよ。ちなみに、世間的にはこいつらのレベルっていうのは大体どのくらいのレベルと認識されてるんだ?」
恭司は次の対戦に目を向けつつ、気になったことを尋ねてみた。
ユウカは少し考えてから答える。
「まぁ、別に低いとは思われてないと思うよ。君がいた時代と違って今は戦争が起きてるわけでもないし、別に弱かった所で日々の生活に差し支えないしね。ただ単純に内申点が欲しいだけみたいな」
「おいおい……。なら何で政府主導の国立学校に武芸科なんてものがあるんだ……。普通に学力の方が優先度高いんじゃないのか?」
「さあ?王様の意向なんじゃない?確か戦争があった時から今も現役で生きてる人らしいし」
「いやいやそれはさすがに無いだろう。それって最低でも200年は生きてるってことだぞ」
「それが本当らしいよ。この学校の設立は勿論、その大会が開催されることになったのもその人の考えらしいし。軍拡大も進められてるとか」
「化け物だな……。200歳オーバーの御老人が、人生最後の花火に戦争でも起こそうってのか?」
「さあ?どうなんだろ。まぁでも、そういう意味では、この状況はその人にとっては残念なことなんだろうね。武芸科学生全体のレベルが低いってことだから」
「だろうな。お気の毒な話だ」
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