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【第四章】学園生活
【第九話】フェルビア学園⑦
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結局ユウカに案内されることになったわけだが、案内先としてユウカに連れてこられたのは、学校の正門から見て右の校舎だった。
こっちが『武芸科』の校舎になっているらしい。
恭司がこれから通うのもこの右の武芸科校舎だ。
まずは当然ながら1階の昇降口になるわけだが、校舎内は全て土足可になっているらしく、下駄箱は存在しなかった。
代わりにあるのは、4つのエレベーターと、やたら横に広い階段。
それらが大きくこの1階部分を占領し、その前にはとても広い空間が広がっている。
まるで広場のようなフロアだ。
1校舎あたり1学年で500人以上とユウカが言っていたから、この空間は学生が順番待ちするための場所ということなのかもしれない。
しかも、
全部で5つの入口の上にはそれぞれ紙が貼られ、その紙に各入口の名称が書いてあった。
1番左のエレベーターの上には『職員用』、
2番目のエレベーターの上には『A,Bクラス』、
3番目のエレベーターの上には『C,Dクラス』、
4番目のエレベーターの上には『E,F.Gクラス』、
やたらと横に広い階段の上には『それ以外』だ。
「……何だこれ」
恭司は紙に書いてあるそれぞれの名称を見ながら、率直な感想を呟いた。
振り分けのようにしか見えないが、意図が分からない。
「エレベーターはそれぞれ使っていいクラスの物と、そうでないクラスの物に分かれてるんだよ。クラスが何かは実力ごとに決められてるの」
「……ちなみに全部で何クラスあるんだ?」
「Hまでだから……8クラスだね」
「最後なんだから『H』くらい書いてやれよ……」
階段の上の『それ以外』の文字を見て、恭司は不憫そうに呟いた。
階段ということは、そのHは最下層クラスなのだろう。
「いや、実は階段使うのってHだけじゃないんだよね。クラスは下にいけばいくほど人数も多くなるようになってて、A,Bクラスなんて人数すごく少ないの。C,Dはまだ普通だけど、E,F,Gなんて、クラスの人数多い上に3つ全部まとめられてて、大概エレベーター乗れないから、結局階段ばかり使ってるんだよね。だから結局階段は常に満員になっちゃうんだよ」
「なるほど。なんて非効率的なんだ……」
この右側の広い空間に人が山ほど並ぶ光景を想像して、恭司は思わず呻いた。
それが左にいけばいくほど利用者の数が減って、毎朝の教室移動が楽になるということだ。
階段しか使えないHクラスはとても気の毒な思いをする。
兎にも角にも実力主義の学校なのだなと、恭司はしみじみ思った。
「それで、俺たちはどのクラスに配属されてるんだ?」
恭司は肝心なことを尋ねてみた。
別に恭司とユウカが同じクラスだなんて聞いたわけではないが、アベルトなら多分同じクラスで話を通しているだろうと思っている。
ユウカはそこまで考えていたかは分からないが、自分の所属するクラスを答えた。
「Bクラスだよ」
上から2番目。
エレベーターも左から2番目を使っていいということだ。
職員を除けば、この学校内で最も優遇されたエレベーターを使うことができる。
とりあえず朝はその行列に並ぶことはないのだなと、恭司はホッと胸を撫で下ろした。
「まぁ、教室は2階なんだけどね」
「エレベーターの意味ねぇじゃねぇか」
恭司はツッコミを入れた。
結局はエレベーターでも階段でもどっちでもいいということだ。
「さっ、それじゃ職員室に向かおうか。職員室は最上階だから、エレベーターを使うよ」
「おお……」
既に面倒臭そうな気配を醸し出す今後の学校生活にテンションを下げつつも、恭司とユウカの2人は、左から2番目の『A,Bクラス』のエレベーターに乗った。
こっちが『武芸科』の校舎になっているらしい。
恭司がこれから通うのもこの右の武芸科校舎だ。
まずは当然ながら1階の昇降口になるわけだが、校舎内は全て土足可になっているらしく、下駄箱は存在しなかった。
代わりにあるのは、4つのエレベーターと、やたら横に広い階段。
それらが大きくこの1階部分を占領し、その前にはとても広い空間が広がっている。
まるで広場のようなフロアだ。
1校舎あたり1学年で500人以上とユウカが言っていたから、この空間は学生が順番待ちするための場所ということなのかもしれない。
しかも、
全部で5つの入口の上にはそれぞれ紙が貼られ、その紙に各入口の名称が書いてあった。
1番左のエレベーターの上には『職員用』、
2番目のエレベーターの上には『A,Bクラス』、
3番目のエレベーターの上には『C,Dクラス』、
4番目のエレベーターの上には『E,F.Gクラス』、
やたらと横に広い階段の上には『それ以外』だ。
「……何だこれ」
恭司は紙に書いてあるそれぞれの名称を見ながら、率直な感想を呟いた。
振り分けのようにしか見えないが、意図が分からない。
「エレベーターはそれぞれ使っていいクラスの物と、そうでないクラスの物に分かれてるんだよ。クラスが何かは実力ごとに決められてるの」
「……ちなみに全部で何クラスあるんだ?」
「Hまでだから……8クラスだね」
「最後なんだから『H』くらい書いてやれよ……」
階段の上の『それ以外』の文字を見て、恭司は不憫そうに呟いた。
階段ということは、そのHは最下層クラスなのだろう。
「いや、実は階段使うのってHだけじゃないんだよね。クラスは下にいけばいくほど人数も多くなるようになってて、A,Bクラスなんて人数すごく少ないの。C,Dはまだ普通だけど、E,F,Gなんて、クラスの人数多い上に3つ全部まとめられてて、大概エレベーター乗れないから、結局階段ばかり使ってるんだよね。だから結局階段は常に満員になっちゃうんだよ」
「なるほど。なんて非効率的なんだ……」
この右側の広い空間に人が山ほど並ぶ光景を想像して、恭司は思わず呻いた。
それが左にいけばいくほど利用者の数が減って、毎朝の教室移動が楽になるということだ。
階段しか使えないHクラスはとても気の毒な思いをする。
兎にも角にも実力主義の学校なのだなと、恭司はしみじみ思った。
「それで、俺たちはどのクラスに配属されてるんだ?」
恭司は肝心なことを尋ねてみた。
別に恭司とユウカが同じクラスだなんて聞いたわけではないが、アベルトなら多分同じクラスで話を通しているだろうと思っている。
ユウカはそこまで考えていたかは分からないが、自分の所属するクラスを答えた。
「Bクラスだよ」
上から2番目。
エレベーターも左から2番目を使っていいということだ。
職員を除けば、この学校内で最も優遇されたエレベーターを使うことができる。
とりあえず朝はその行列に並ぶことはないのだなと、恭司はホッと胸を撫で下ろした。
「まぁ、教室は2階なんだけどね」
「エレベーターの意味ねぇじゃねぇか」
恭司はツッコミを入れた。
結局はエレベーターでも階段でもどっちでもいいということだ。
「さっ、それじゃ職員室に向かおうか。職員室は最上階だから、エレベーターを使うよ」
「おお……」
既に面倒臭そうな気配を醸し出す今後の学校生活にテンションを下げつつも、恭司とユウカの2人は、左から2番目の『A,Bクラス』のエレベーターに乗った。
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