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【第四章】学園生活

【第九話】フェルビア学園②

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「ユウカ……。学校生活ってのはな、一生に一度のことなんだぞ?5年後になって学校行きたいって行っても行けないんだぞ?」

「専門学校があるよ。お金払えば入れてくれるらしいの」

「一人年上だと恥ずかしいじゃないか」

「通信制度っていうのがあって、家にいながらでも授業が聞けるし卒業資格ももらえるんだよ。ニートしながら卒業出来ちゃうんだから最高だよね。今の所でもやってくれればいいのに」

「アベルトさんはそういうのじゃなくて普通に行ってほしいんだと思うぞ。友達作って思い出作って、勉強もちゃんと学んで……」

「友達は恭司がいるし、思い出も恭司と作ってるし、勉強はしたら負けだと思ってるよ」

「…………」


引き篭もり体質が末期に差し掛かっている。

真っ向から挑んでもダメそうだ。

あまり乗り気はしないが、ここは奥の手を使うしかない。


「学校行かないんなら、明日からユウカの分はご飯作らないぞ」

「ッッ!!」


未来ではなく直近のリスクを提示した。

こうすれば、ユウカもさすがに考えざるを得ないはずだ。

それも、

普段からカップとインスタントしか食べていなかったユウカにとって、恭司の作るご飯は、普段の生活に新しい楽しみを見出していたに違いない。

恭司の料理の腕は決して良いわけではないが、同じメニューで全く同じ味を食べ続けていたユウカからすれば、砂漠の中のオアシスに近いものだったはず。

取引としては十分使える材料だ。


「ふ、ふん。そんなこと言われたって別に……」

「明日からまた麺類とカレーのループか……。俺なら嫌だけど、ユウカはそいつら大好きだもんな。俺の料理なんて無くても別に問題ないもんな」

「…………」

「所詮、そのメニューの中に卵焼きと目玉焼きとウインナーのバリエーションが無くなるだけだもんな。焼きそばとウインナーのコラボレーションとか、ラーメンと目玉焼きのコラボレーションとか特に魅力も無かったよな……」

「…………」

「まぁ、これからは俺も一人分しか作らなくて済むし、それはそれで……」

「待って」


ユウカは掌をパッと前にかざし、恭司の言葉を押し留めた。

恭司は心の中でガッツポーズする。

頑固なユウカに、恭司の策がようやく通じt


「私にも作り方教えて」


いや、確かに成長したかもしれないが、求めていた方向性と違った。

引き篭もりを改善するのではなく、引き篭もりのクオリティを上げようとしている。

あくまで家の中にいたいらしい。


「い、いや、今から教えるってなったらけっこう大変だし、ユウカには難しいんじゃないかなー?」

「……?フライパンに油ひいて適当に炒めたらいいだけじゃないの??」


バレている。

実は腕もクソもない、何なら料理と呼ぶにもおこがましい代物だとバレてしまっている。

作る過程を見られていたとは……不覚だった。
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