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【第三章】閑話休題

【第八話】お風呂事件簿⑧

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「…………お父さんも随分無茶な依頼出してきたね……。ボルディスなんて、魔家貴族の中でも3番目くらいには強い家だよ?正直、世界全体で見ても相当強い部類にいるし、絶対一筋縄じゃいかないと思う」


ユウカは真剣な面持ちで話した。

ラウドの時のような感情的な評価じゃないことは歴然。

恭司は頭をポリポリと掻きむしった。


「やっぱそうか……。貴族の力がどれほどかは正直まだ全く分かってないんだが、そもそも貴族の長男が死ぬなんて社会的大問題だよなー」

「うわ。今更それ言っちゃう?それを言うなら今どき人を殺すってだけでも大問題だよ。ここ数十年は他大陸からの侵攻もなくて平和そのものなんだから」

「他大陸からの侵攻?そんなのもあるのか?」

「あるみたいだよ。私が生まれるより前のことだから、そんなに詳しくは知らないんだけどね」

「へぇー……」

「てか、貴族なんて常に誰かしら護衛も付いてるだろうし、屋敷の警備も厳重だと思うけど、暗殺なんてどうやってやるの?」

「あー、それはな……」


恭司は少し言い淀んだ。

アベルトの言ったイベントのことはまだ話していない。

言えば気まずくなることは間違いないからだ。

何とか別の話題にすり替えたい所だが、ユウカもここまでのやり取りで学習してきている。

ここぞとばかりに追い討ちをかけてきた。


「お風呂の話でもいいよ。恭司が私の裸を覗き見してきた理由について、たっぷり教えて」

「…………」


万事休すだった。

2択あるが、どちらも気まずくなるゴールしか見えない。

ここまでくれば、もう腹をくくるしかなかった。

お風呂だ。

これだけ執念深くてはどうせ有耶無耶には出来ないだろうし、話し合えるタイミングで話し合っておかないと後々に後悔しそうな気がする。

ここで逃げたら次に切り出すのは至難の技だ。

アレが事故であることをきっちり認識してもらえるまで、今のうちにしっかり話し合っておくべきだと判断した。


「……お風呂の件は、ホントにすまなかった。わざとじゃないんだ。ユウカが先に入ってることに気付かなくて、うっかりドアを開けてしまった。俺のミスだ。申し訳ない」

「…………」


直球勝負を仕掛けた。

雰囲気もさっきまでと違うし、ユウカも真っ向から受け返してくれるだろう。

ユウカはなんだかんだで優しいから、事情さえ伝われば許してくれるはずだ。

恭司は真摯な気持ちで頭を下げる。

誠実こそが説得の最大の武器だ。


「いや、実は見られて意外と気持ちいい気分になってたから別に怒ってないんだけどね」

「俺の誠実返してください」


思わず敬語になってしまった。

なんて予想外の切り返しだ。

ずっこけるかと思った。


「まぁ、見られて恥ずかしかったのも事実なんだけどね……。ただ、相手恭司だったし、胸もお尻もアソコも見られたんだなって思ったら、なんか恭司に全部捧げちゃったような気持ちになって……って何言ってんだろ!!今のは無し!!忘れて!!この件はもう大丈夫だから!!」


ユウカはそう言ってフルフルと首を振る。

自分から振っておいて自爆かよ……と思いながらも、恭司は内心で少し安心した。

内容はともかくにして、結局はユウカからこの話題の終了を嘆願してきたのだ。

複数あった解決のビジョンとしては上々。

これで明日からは何も問題なく毎日が送れるはz


「そうだ!!私だけ見られたから駄目なんだ!!恭司のも見せてくれたら上手く解決だね!!」

「…………」


いや、解決のビジョンとしては結局一番問題あるパターンに落ち着いた。

その後も抵抗を続けたが説得には至らず、結局、恭司は一人で謎のストリップをさせられることになった。

そして、

何故かは分からないが、明日から恭司とユウカはお風呂も一緒に入ることになり、この話は一応解決?した。
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