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【第三章】閑話休題

【第八話】お風呂事件簿⑥

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「ところで、私も恭司に話があるんだけどこr」

「その前にその魔法使いとやらの普及率も教えてくれ」


恭司は間一髪の所で質問を滑り込ませる。

ユウカは頬を膨らませているが、何とか話題の維持には成功した。

この後どうするかはまだ考えついていないが、今はとりあえず会話を続けるしかない。


「……魔法の普及率なんて具体的な数字は知らないけど……武芸者に比べたらけっこう多いんだと思うよ。その違いについてはさっき説明したけど、武芸者の方はエネルギーを自分の中から引っ張り出す分、ほとんど才能80%くらいだからね」

「要は魔法以外で何か特殊能力使える奴が武芸者になるわけか。どちらでも無い奴もいるのか?」

「もちろんいるよ。てか、ほとんどがそうだね。そして、魔法と武芸の決定的な差でもあるんだけど、魔法は生まれ持った才能が無くても、努力次第で何とか身に付けられるものらしいの。魔力って大小や気付く気付かないはともかくとして、ほとんどの人間に備えついてるものなんだって。だから、それに気づけるよう努力して、さらに使えるよう努力すれば、才能の無い凡人でも魔法使いにはなれるみたいだよ」

「ふーん、なるほどなぁ……。逆に魔法を使える武芸者なんてのも存在するのか?両方こなすみたいな」

「それもいるみたいだよ。魔力は武芸者の中にも存在するんだって。だから、武芸者が自分の魔力を操ることが出来れば一番いいって感じみたい」

「へぇー、てことは武芸者の方が魔法使いより全体的な潜在能力は秀でてるんだな。アベルトさんが世の中を武術主義にしたがってるのも、その辺が関係してるのかね?」

「多分そうだと思うよ。てか、今でこそ『武芸者』っていうオブラートに包まれた言い方されてるけど、元々は『化け物』とかそんな感じに扱われてたんだって。魔法は気付きと訓練さえあれば誰でも使えるようになるけど、武芸者の使う特殊能力は、生まれながらに出来る出来ないが決まり切っちゃうから、やっぱり差別的なことも多かったらしいよ」

「……要はビビられてるってことか」

「そうだね。魔法使いからすれば、自分と同じかそれ以上の力を、自分たちと違って制限なく使われるわけだから、やっぱり怖いんじゃないかな。今でこそ魔法が世の中に普及してるけど、それまでは魔法も一部しか使える人いなかったらしいし」

「つまり、武芸者の武力に対抗する術が何もなかったってわけか。そこに魔法っていう起死回生の存在が現れて、皆飛び付いたと」

「そういうことだね。まぁ、魔法使いの中でも貴族については、当時の一部に属していた人間たちの子孫みたいだから、魔法使いとしてのレベルが違い過ぎて、正直あんま関係ないのかもしれないけどね」

「ふーん……」


恭司は思案する。

アベルトの言う『世の中を武術主義にする』の概略が、ようやく見えてきたような気がした。

鍵はおそらく、『武芸者の方が全体的な潜在能力が高い』というのと、『差別的な意識』ではないかと思う。

アベルトから聞いた情報によると、今の世の中は魔法主義よりらしいし、政府の幹部会のほとんども魔法主義で、王自体も魔法使いだと聞いている。

アベルトがこの世のどの点に問題を感じたかは分からないが、そのアベルトが提示した問題解決手段が、『王が武術派の人間になること、あるいは、その下の幹部会の人間の大半が武術派の人間になること』だ。

逆算して、アベルトの考える内容を一通り予想して考えてみて、恭司はウンウンと頷いた。


(あの人けっこうヤバい考えしてるな)


まぁ、解決手段に暗殺が入っている時点で分かっていた話ではある。

アベルトの言う武術派とは魔法が使えない人間のことで、両方使える人間は却下ということだから、アベルトはこの世から戦闘手段としての魔法を排除していきたいと思っているのだろう。

そして、

魔法を除けば、戦闘手段は機械か武芸のどちらかになる。

つまり、

武芸者がことごとく排除されるか、特別待遇されるかどちらかの世の中になると予想できるのだ。

アベルトが欲しがっているのが果たしてどちらの世の中なのかは分からないが、恭司は自分の行うべき内容を少しずつ理解していった。
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