49 / 134
【第三章】閑話休題
【第八話】お風呂事件簿⑥
しおりを挟む
「ところで、私も恭司に話があるんだけどこr」
「その前にその魔法使いとやらの普及率も教えてくれ」
恭司は間一髪の所で質問を滑り込ませる。
ユウカは頬を膨らませているが、何とか話題の維持には成功した。
この後どうするかはまだ考えついていないが、今はとりあえず会話を続けるしかない。
「……魔法の普及率なんて具体的な数字は知らないけど……武芸者に比べたらけっこう多いんだと思うよ。その違いについてはさっき説明したけど、武芸者の方はエネルギーを自分の中から引っ張り出す分、ほとんど才能80%くらいだからね」
「要は魔法以外で何か特殊能力使える奴が武芸者になるわけか。どちらでも無い奴もいるのか?」
「もちろんいるよ。てか、ほとんどがそうだね。そして、魔法と武芸の決定的な差でもあるんだけど、魔法は生まれ持った才能が無くても、努力次第で何とか身に付けられるものらしいの。魔力って大小や気付く気付かないはともかくとして、ほとんどの人間に備えついてるものなんだって。だから、それに気づけるよう努力して、さらに使えるよう努力すれば、才能の無い凡人でも魔法使いにはなれるみたいだよ」
「ふーん、なるほどなぁ……。逆に魔法を使える武芸者なんてのも存在するのか?両方こなすみたいな」
「それもいるみたいだよ。魔力は武芸者の中にも存在するんだって。だから、武芸者が自分の魔力を操ることが出来れば一番いいって感じみたい」
「へぇー、てことは武芸者の方が魔法使いより全体的な潜在能力は秀でてるんだな。アベルトさんが世の中を武術主義にしたがってるのも、その辺が関係してるのかね?」
「多分そうだと思うよ。てか、今でこそ『武芸者』っていうオブラートに包まれた言い方されてるけど、元々は『化け物』とかそんな感じに扱われてたんだって。魔法は気付きと訓練さえあれば誰でも使えるようになるけど、武芸者の使う特殊能力は、生まれながらに出来る出来ないが決まり切っちゃうから、やっぱり差別的なことも多かったらしいよ」
「……要はビビられてるってことか」
「そうだね。魔法使いからすれば、自分と同じかそれ以上の力を、自分たちと違って制限なく使われるわけだから、やっぱり怖いんじゃないかな。今でこそ魔法が世の中に普及してるけど、それまでは魔法も一部しか使える人いなかったらしいし」
「つまり、武芸者の武力に対抗する術が何もなかったってわけか。そこに魔法っていう起死回生の存在が現れて、皆飛び付いたと」
「そういうことだね。まぁ、魔法使いの中でも貴族については、当時の一部に属していた人間たちの子孫みたいだから、魔法使いとしてのレベルが違い過ぎて、正直あんま関係ないのかもしれないけどね」
「ふーん……」
恭司は思案する。
アベルトの言う『世の中を武術主義にする』の概略が、ようやく見えてきたような気がした。
鍵はおそらく、『武芸者の方が全体的な潜在能力が高い』というのと、『差別的な意識』ではないかと思う。
アベルトから聞いた情報によると、今の世の中は魔法主義よりらしいし、政府の幹部会のほとんども魔法主義で、王自体も魔法使いだと聞いている。
アベルトがこの世のどの点に問題を感じたかは分からないが、そのアベルトが提示した問題解決手段が、『王が武術派の人間になること、あるいは、その下の幹部会の人間の大半が武術派の人間になること』だ。
逆算して、アベルトの考える内容を一通り予想して考えてみて、恭司はウンウンと頷いた。
(あの人けっこうヤバい考えしてるな)
まぁ、解決手段に暗殺が入っている時点で分かっていた話ではある。
アベルトの言う武術派とは魔法が使えない人間のことで、両方使える人間は却下ということだから、アベルトはこの世から戦闘手段としての魔法を排除していきたいと思っているのだろう。
そして、
魔法を除けば、戦闘手段は機械か武芸のどちらかになる。
つまり、
武芸者がことごとく排除されるか、特別待遇されるかどちらかの世の中になると予想できるのだ。
アベルトが欲しがっているのが果たしてどちらの世の中なのかは分からないが、恭司は自分の行うべき内容を少しずつ理解していった。
「その前にその魔法使いとやらの普及率も教えてくれ」
恭司は間一髪の所で質問を滑り込ませる。
ユウカは頬を膨らませているが、何とか話題の維持には成功した。
この後どうするかはまだ考えついていないが、今はとりあえず会話を続けるしかない。
「……魔法の普及率なんて具体的な数字は知らないけど……武芸者に比べたらけっこう多いんだと思うよ。その違いについてはさっき説明したけど、武芸者の方はエネルギーを自分の中から引っ張り出す分、ほとんど才能80%くらいだからね」
「要は魔法以外で何か特殊能力使える奴が武芸者になるわけか。どちらでも無い奴もいるのか?」
「もちろんいるよ。てか、ほとんどがそうだね。そして、魔法と武芸の決定的な差でもあるんだけど、魔法は生まれ持った才能が無くても、努力次第で何とか身に付けられるものらしいの。魔力って大小や気付く気付かないはともかくとして、ほとんどの人間に備えついてるものなんだって。だから、それに気づけるよう努力して、さらに使えるよう努力すれば、才能の無い凡人でも魔法使いにはなれるみたいだよ」
「ふーん、なるほどなぁ……。逆に魔法を使える武芸者なんてのも存在するのか?両方こなすみたいな」
「それもいるみたいだよ。魔力は武芸者の中にも存在するんだって。だから、武芸者が自分の魔力を操ることが出来れば一番いいって感じみたい」
「へぇー、てことは武芸者の方が魔法使いより全体的な潜在能力は秀でてるんだな。アベルトさんが世の中を武術主義にしたがってるのも、その辺が関係してるのかね?」
「多分そうだと思うよ。てか、今でこそ『武芸者』っていうオブラートに包まれた言い方されてるけど、元々は『化け物』とかそんな感じに扱われてたんだって。魔法は気付きと訓練さえあれば誰でも使えるようになるけど、武芸者の使う特殊能力は、生まれながらに出来る出来ないが決まり切っちゃうから、やっぱり差別的なことも多かったらしいよ」
「……要はビビられてるってことか」
「そうだね。魔法使いからすれば、自分と同じかそれ以上の力を、自分たちと違って制限なく使われるわけだから、やっぱり怖いんじゃないかな。今でこそ魔法が世の中に普及してるけど、それまでは魔法も一部しか使える人いなかったらしいし」
「つまり、武芸者の武力に対抗する術が何もなかったってわけか。そこに魔法っていう起死回生の存在が現れて、皆飛び付いたと」
「そういうことだね。まぁ、魔法使いの中でも貴族については、当時の一部に属していた人間たちの子孫みたいだから、魔法使いとしてのレベルが違い過ぎて、正直あんま関係ないのかもしれないけどね」
「ふーん……」
恭司は思案する。
アベルトの言う『世の中を武術主義にする』の概略が、ようやく見えてきたような気がした。
鍵はおそらく、『武芸者の方が全体的な潜在能力が高い』というのと、『差別的な意識』ではないかと思う。
アベルトから聞いた情報によると、今の世の中は魔法主義よりらしいし、政府の幹部会のほとんども魔法主義で、王自体も魔法使いだと聞いている。
アベルトがこの世のどの点に問題を感じたかは分からないが、そのアベルトが提示した問題解決手段が、『王が武術派の人間になること、あるいは、その下の幹部会の人間の大半が武術派の人間になること』だ。
逆算して、アベルトの考える内容を一通り予想して考えてみて、恭司はウンウンと頷いた。
(あの人けっこうヤバい考えしてるな)
まぁ、解決手段に暗殺が入っている時点で分かっていた話ではある。
アベルトの言う武術派とは魔法が使えない人間のことで、両方使える人間は却下ということだから、アベルトはこの世から戦闘手段としての魔法を排除していきたいと思っているのだろう。
そして、
魔法を除けば、戦闘手段は機械か武芸のどちらかになる。
つまり、
武芸者がことごとく排除されるか、特別待遇されるかどちらかの世の中になると予想できるのだ。
アベルトが欲しがっているのが果たしてどちらの世の中なのかは分からないが、恭司は自分の行うべき内容を少しずつ理解していった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる