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【第三章】閑話休題

【第八話】お風呂事件簿③

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「まったく!!覗きなんてホントあり得ないよ!!人としてどうかと思うよね!!」


リビングに戻ると、程なくしてユウカもやって来た。

服はもちろん着替えている。

今日は丈の短いハーフパンツにTシャツだ。

いつもよりラフな格好で、恭司的には少しばかり露出が激しいのではないかと感じたが、そこは口にしなかった。

さっきの今では、火に油を注ぐようなものだ。


「いや、だからアレは事故だって言っているだろう。部屋をノックしても返事がないから、てっきり寝てるもんだと思ってたんだ」


恭司は反論する。

さっきの策はあまりにチャレンジャー過ぎた。

最善手かと思ったがダメダメだった。

結局、事態の解決どころかユウカの怒りのボルテージを上げてしまう結果となったのだ。

大いに反省すべきだったと思っている。

だが、

だからと言ってユウカにこのまま覗き魔で通されるわけにはいかない。

アレは本当に事故なのだ。

親切心が裏目に出てしまっただけのことなのだ。

二人暮らしの都合を考えても、ここは引き下がるわけにはいかない。

真っ向で挑んでも説得は難しいかもしれないが、この件については何としてでもここで解決させ、普段の関係性に戻してみせる。


「別に見たいなら普通に言えばいいのにさ。私も鬼じゃないし、男の子がそういうのに興味があるってことも知ってるし……」


しかしユウカの中では既に解決どころか変な方向に進みつつあった。

話し始めて早々だが、これは時間がかかりそうだ……。

下手をすれば、このままあらぬ形で定着させられてしまうかもしれない。

それだけは断固ストップだ。

何とかして『裸体を見た』という事実を無かったものにし、ユウカの意識から取り除く必要がある。

とりあえず、今は一旦クールダウンだ。


「まぁ、見たのは確かだからな、お詫びにコーヒーでも入れてやるよ」


恭司はコーヒータイムを提案した。

ユウカも恭司と同じでコーヒーが好きだ。

しかも、

今日はアベルトの残した上等なインスタントもある。

ユウカの怒り度合いを確認する上でも、まずはこれで機嫌をとる作戦だ。


「いや、言っとくけど、そんなんじゃ全然ほだされないからね?今日の私はすごく怒ってるから」


ユウカはそう言うと、プンプンしながらも大人しく席に座った。

ほだされないけどコーヒーはもらうという意味だ。

恭司はユウカの怒りの具合をチェックしながら、慣れた手つきで手早くコーヒーを淹れる。

この様子を見るに、口ほど怒っているわけではなさそうだ。

恭司はユウカの分を先に仕上げにかかる。

今日のユウカの気分はおそらくアイスコーヒーのミルク入りガムシロップ無しだ。

風呂上がりで喉の乾いているユウカは絶対にこれを求めている。

そして、

ユウカのこのツンツンした反応くらいは想定内だ。

伊達に2人暮らししていない。

本番はこれからだ。


「いやいや、別にそんなつもりじゃねぇよ。いつも朝は2人でコーヒー飲んでるじゃないか。ただの日課だよ」


恭司はそう言いながら、アイスコーヒーの入ったコップをユウカの前に置く。

ユウカはプイッと顔をそむけながらも、コップに手を掛けて口へと運んだ。
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