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【第五章】鋼鉄山
【第十五話】鋼鉄山 ④
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「おっ、この辺なら、街の様子も見えるんじゃねぇか?」
「………………」
頂上へ到達する手前、スパイルはそう言って立ち止まった。
標高的にも、もう相当高い所まで来ている。
振り返ると、下界がかなり小さくなっていた。
普通なら遠すぎて見えないほどの距離だが、2人の目なら多少は視認できる。
そこには……
森を覆い尽くすほどの大量の影が列をなし、その先頭が数多く街中に入り込んでいる姿があった。
ミッドカオスとディオラスが、ドラルスへの侵略を開始したのだろう。
ウィクシルの言う通り、このまま街をメチャクチャにするということはないだろうが、街中には大勢の捜索員を放っているはずだ。
シェルやティアルなら、それを必ず実行する。
一度逃がした恭司とスパイルを、今度こそ確実に捕まえるためにーー。
「相変わらず、遠慮ってもんを知らねぇんだろうなぁ……あいつら。壊滅まではしないでも、ついでに略奪くらいは絶対やってるぞ……」
スパイルは呟く。
恭司も同意見だった。
「だろうな……。おそらく、家や店を全て調べ切ろうとしているはずだ。普通に考えて、俺もお前もあそこ以外に逃げ場所なんてないようなものだからな。徹底的に調べるだろう」
「ウィクシルもあの店にいて大丈夫なのかねぇ……?来てほしくない奴には魔法で認識すらさせねぇって話だったが、今回は流石にアイツもヤバいんじゃねぇか……?」
「あの女については心配するだけ無駄だろう。おそらく、相当な腕前の持ち主だ。俺たちを頼るのが不思議なほど……な」
「あー、まぁ、確かにな。俺はあれほど胡散臭ぇ奴に会ったのは生まれて初めてだったが、確かに腕だけは間違いなさそうだ。一応、俺たち"同志"らしいから、せいぜい無事を祈っとくとしようぜ」
「……そうだな」
そう言って、2人は残り少しの道のりを消化した。
麓からはボヤけていた山頂がクッキリと姿を現し始め、辺りに霧が出始める。
不審に思って、恭司は足を止めた。
「何だ……?」
ここまでの道中で、霧が出てきたのは初めてのことだ。
視界が急に悪くなり、恭司は警戒して周囲を見回す。
「あぁ、コレはいつものことだから気にすんな。"この先の木"の前には絶対に出るんだ」
「……?」
恭司はスパイルの言葉に訝しさを感じつつ、歩を進めることにした。
頂上に近づくにつれ、霧は濃くなり、木々は少なくなっているように思える。
しかし、
それをある程度進むと、その霧も嘘のように晴れ晴れとしてきた。
そして、
「うっ」
霧を抜けた途端、
2人は真っ白な強い光に包み込まれた。
眩しすぎて思わず目を瞑る。
ゆっくり目を開けると、そこにはあまりに巨大な、光り輝く一本の木が立っていた。
真っ白に輝くその大木は、常識では考えられないほどの凄まじい大きさを誇っている。
天辺が見えないほどだった。
恭司は再び足を止めて見つめる。
「これは…………凄いな……」
木自体の高さは勿論だが、太さも凄まじかった。
直径で3キロメートル以上はあるだろうかーー。
常識では考えられないほどのサイズ感に、白く発光するその姿は、正に神々しさすら感じる。
何故か、スパイルが自慢げになった。
「………………」
頂上へ到達する手前、スパイルはそう言って立ち止まった。
標高的にも、もう相当高い所まで来ている。
振り返ると、下界がかなり小さくなっていた。
普通なら遠すぎて見えないほどの距離だが、2人の目なら多少は視認できる。
そこには……
森を覆い尽くすほどの大量の影が列をなし、その先頭が数多く街中に入り込んでいる姿があった。
ミッドカオスとディオラスが、ドラルスへの侵略を開始したのだろう。
ウィクシルの言う通り、このまま街をメチャクチャにするということはないだろうが、街中には大勢の捜索員を放っているはずだ。
シェルやティアルなら、それを必ず実行する。
一度逃がした恭司とスパイルを、今度こそ確実に捕まえるためにーー。
「相変わらず、遠慮ってもんを知らねぇんだろうなぁ……あいつら。壊滅まではしないでも、ついでに略奪くらいは絶対やってるぞ……」
スパイルは呟く。
恭司も同意見だった。
「だろうな……。おそらく、家や店を全て調べ切ろうとしているはずだ。普通に考えて、俺もお前もあそこ以外に逃げ場所なんてないようなものだからな。徹底的に調べるだろう」
「ウィクシルもあの店にいて大丈夫なのかねぇ……?来てほしくない奴には魔法で認識すらさせねぇって話だったが、今回は流石にアイツもヤバいんじゃねぇか……?」
「あの女については心配するだけ無駄だろう。おそらく、相当な腕前の持ち主だ。俺たちを頼るのが不思議なほど……な」
「あー、まぁ、確かにな。俺はあれほど胡散臭ぇ奴に会ったのは生まれて初めてだったが、確かに腕だけは間違いなさそうだ。一応、俺たち"同志"らしいから、せいぜい無事を祈っとくとしようぜ」
「……そうだな」
そう言って、2人は残り少しの道のりを消化した。
麓からはボヤけていた山頂がクッキリと姿を現し始め、辺りに霧が出始める。
不審に思って、恭司は足を止めた。
「何だ……?」
ここまでの道中で、霧が出てきたのは初めてのことだ。
視界が急に悪くなり、恭司は警戒して周囲を見回す。
「あぁ、コレはいつものことだから気にすんな。"この先の木"の前には絶対に出るんだ」
「……?」
恭司はスパイルの言葉に訝しさを感じつつ、歩を進めることにした。
頂上に近づくにつれ、霧は濃くなり、木々は少なくなっているように思える。
しかし、
それをある程度進むと、その霧も嘘のように晴れ晴れとしてきた。
そして、
「うっ」
霧を抜けた途端、
2人は真っ白な強い光に包み込まれた。
眩しすぎて思わず目を瞑る。
ゆっくり目を開けると、そこにはあまりに巨大な、光り輝く一本の木が立っていた。
真っ白に輝くその大木は、常識では考えられないほどの凄まじい大きさを誇っている。
天辺が見えないほどだった。
恭司は再び足を止めて見つめる。
「これは…………凄いな……」
木自体の高さは勿論だが、太さも凄まじかった。
直径で3キロメートル以上はあるだろうかーー。
常識では考えられないほどのサイズ感に、白く発光するその姿は、正に神々しさすら感じる。
何故か、スパイルが自慢げになった。
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