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【第四章】ドラルスの街
【第十四話】魔法医師 ②
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「こんにちは。ずいぶんと可愛らしいお客様ね」
入ると、狭い店内で、受付というよりは店主にしか見えない女性に出迎えられた。
妙な貫禄がある。
緑色のロングヘアーで、可愛さよりは美しさが際立つ、美女だった。
20代の後半といった所だろうか?
まだまだ若い内に入る年頃だが、その女性からは何とも言えない妖艶さがあり、人を惑わすような魅力がある。
あまり医者っぽくはなかった。
「えっと……治療を受けたくてきたんだが……ここは治療院ってことで良かったんだよな……?」
女性の雰囲気があまりにそうは見えなかったため、スパイルは尋ねてみる。
女性はクスリと笑った。
「ええ、そうよ?私一人のお店だから、他にスタッフはいないの。私じゃ不安かしら?」
「いや、アンタみたいな美人のお姉さんに診てもらえるってんなら大歓迎だ。野郎に体をベタベタ触られるよりよっぽど良い」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。そっちのアナタも構わないかしら?」
そう言って、女性は視線を恭司の方に向ける。
「あぁ…………。構わない」
女性の格好をしながら、恭司はいつも通りの口調で返答した。
今の所、特に問題は発生していないはずなのに、何か違和感を感じる。
何がどうとは言えないが、何故かいつも通りじゃない感覚ーー。
その正体は分からないまま、恭司は曖昧に頷いた。
その様子に、女性はニッコリと笑う。
「……何だ?」
「いえ、ごめんなさい。男の子だったのね、と思ってね」
恭司はそこでハッとなった。
見た目はそうでも声は変わっていないのだ。
男の声で男の口調なら、気付かれてもおかしくなかった。
恭司はスパイルにジト目をぶつける。
「いや、これは俺のせいじゃねぇ……」
スパイルは肩を竦めた。
今のは恭司のミスだ。
しかし、
そこで、またしても女性に笑われた。
「ふふ、アナタも……てっきり貴族様と執事のご関係なのかと思ったけど、そうでもないのね?訳ありのお客様……ということなのかしら?」
「ッ!!」
スパイルにもボロが出た。
設定はしていたものの、結局他人と会った時にどう対処するかの話し合いを、2人揃って失念していたのだ。
さっきしたばかりの変装をこんなにも早く見破られるとは……。
不覚だった。
「……訳ありだとマズいのか?」
恭司は相変わらずの口調で問いかける。
もうバレてしまったのだからどっちでも良かった。
静かに臨戦体制を取り、スパイルもそれに合わせて動けるようにする。
「いやね……。別に突き出したりとかは考えてないわ。訳ありのお客様は大歓迎よ。そういう人も多い街だしね?」
「「…………」」
「私はお金さえちゃんと支払ってくれれば何の問題もないわよ?荒事は嫌いなの。だから……そんな風に身構えるのを、止めていただけないかしら?」
「「ッ!!」」
ピシィィイイイイイイイイッと、場が締まったのが分かった。
殺気とも違う、異質な空気が女性から放たれ、思わず2人は跳び退く。
店の入口近くまで距離を取った2人は、それぞれ戦闘モードに移行した。
どうやらタダの医者というわけではないようだ。
2人の背中は、大量の汗でビショビショになっていた。
「お前は一体……」
恭司は殺気混じりに問い掛ける。
だが、
恭司の殺気を浴びても尚、女性はクスリと笑い、口を開いた。
「申し遅れてごめんなさいね?私の名は『ウィクシル・ディーブラス』。世間からは、『魔法医師』と呼ばれているわ」
入ると、狭い店内で、受付というよりは店主にしか見えない女性に出迎えられた。
妙な貫禄がある。
緑色のロングヘアーで、可愛さよりは美しさが際立つ、美女だった。
20代の後半といった所だろうか?
まだまだ若い内に入る年頃だが、その女性からは何とも言えない妖艶さがあり、人を惑わすような魅力がある。
あまり医者っぽくはなかった。
「えっと……治療を受けたくてきたんだが……ここは治療院ってことで良かったんだよな……?」
女性の雰囲気があまりにそうは見えなかったため、スパイルは尋ねてみる。
女性はクスリと笑った。
「ええ、そうよ?私一人のお店だから、他にスタッフはいないの。私じゃ不安かしら?」
「いや、アンタみたいな美人のお姉さんに診てもらえるってんなら大歓迎だ。野郎に体をベタベタ触られるよりよっぽど良い」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。そっちのアナタも構わないかしら?」
そう言って、女性は視線を恭司の方に向ける。
「あぁ…………。構わない」
女性の格好をしながら、恭司はいつも通りの口調で返答した。
今の所、特に問題は発生していないはずなのに、何か違和感を感じる。
何がどうとは言えないが、何故かいつも通りじゃない感覚ーー。
その正体は分からないまま、恭司は曖昧に頷いた。
その様子に、女性はニッコリと笑う。
「……何だ?」
「いえ、ごめんなさい。男の子だったのね、と思ってね」
恭司はそこでハッとなった。
見た目はそうでも声は変わっていないのだ。
男の声で男の口調なら、気付かれてもおかしくなかった。
恭司はスパイルにジト目をぶつける。
「いや、これは俺のせいじゃねぇ……」
スパイルは肩を竦めた。
今のは恭司のミスだ。
しかし、
そこで、またしても女性に笑われた。
「ふふ、アナタも……てっきり貴族様と執事のご関係なのかと思ったけど、そうでもないのね?訳ありのお客様……ということなのかしら?」
「ッ!!」
スパイルにもボロが出た。
設定はしていたものの、結局他人と会った時にどう対処するかの話し合いを、2人揃って失念していたのだ。
さっきしたばかりの変装をこんなにも早く見破られるとは……。
不覚だった。
「……訳ありだとマズいのか?」
恭司は相変わらずの口調で問いかける。
もうバレてしまったのだからどっちでも良かった。
静かに臨戦体制を取り、スパイルもそれに合わせて動けるようにする。
「いやね……。別に突き出したりとかは考えてないわ。訳ありのお客様は大歓迎よ。そういう人も多い街だしね?」
「「…………」」
「私はお金さえちゃんと支払ってくれれば何の問題もないわよ?荒事は嫌いなの。だから……そんな風に身構えるのを、止めていただけないかしら?」
「「ッ!!」」
ピシィィイイイイイイイイッと、場が締まったのが分かった。
殺気とも違う、異質な空気が女性から放たれ、思わず2人は跳び退く。
店の入口近くまで距離を取った2人は、それぞれ戦闘モードに移行した。
どうやらタダの医者というわけではないようだ。
2人の背中は、大量の汗でビショビショになっていた。
「お前は一体……」
恭司は殺気混じりに問い掛ける。
だが、
恭司の殺気を浴びても尚、女性はクスリと笑い、口を開いた。
「申し遅れてごめんなさいね?私の名は『ウィクシル・ディーブラス』。世間からは、『魔法医師』と呼ばれているわ」
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