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【第四章】ドラルスの街
【第十二話】道のり ⑤
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スパイルのもたらした情報をもとに、恭司とスパイルはドラルスへの道のりをひたすらにまっすぐ歩いていた。
2人のいた地点は元々国境沿いに近い所だったため、道のりとしてはほぼまっすぐ進むだけでいい。
道に迷う心配はないし、2人とも元々そこへ向かうつもりだったのだから、当然問題などない。
だが、
スパイルが言う『アテ』については、問題が大有りだった。
「えっと……『魔法医師』……だったか?…………何だそれ?」
恭司の声には不信感が満ち満ちていた。
恭司自身、情報収集は色々としてきたが、そんな話は聞いたこともない。
それに、
何より『魔法』だ。
おそらくは魔法のような速度で治すとかそういう意味なのだろうと推測できるが、普通に信じられない。
「いや、それがマジなんだって。俺も人から聞いた話だから詳しく知ってるわけじゃないんだが、どうにもソイツは本当に魔法が使えるらしいんだ」
「…………」
推測はハズれて、本当に魔法を使うという意味らしい。
恭司の疑惑の視線がより強くなった。
「仮に、その話が本当だとして、ソイツがどこにいるかは分かってるのか?こんな体で街中探し回るなんてゴメンだぞ……」
「あー……、どこにいるかって情報までは……流石に無いな。ただ、ソイツは女らしいぜ」
「女ってだけならそこら辺にいるだろう……。それだけの情報で探し回ってたら日が暮れるぞ」
「まぁ、確かにな。俺も流石に現実的じゃねぇとは思ってるよ。ただ、普通の医者は俺たちのことなんて診てくれないと思うが、その辺りはどうするつもりなんだ?」
「……??脅せばいいじゃないか」
「人の心はどこかに置いてきちまったのか?」
「真夜中に住民ごと家を焼いた奴に言われたくねぇよ」
「まぁ、確かにな」
そんな会話をしながら、2人はドラルスまでの道のりを着々と消化していった。
心なしか、2人とも進むペースが速くなってきている。
度重なる連闘で、体の限界を感じつつあるのだ。
なるべく早く治療に移った方が良い。
「この感じだとあと1日くらいかね?ドラルスに行くのは久しぶりだな……」
ふと、スパイルが話し出す。
本当に脅すかどうかは別にして、話題は切り替わったようだ。
恭司も特にやることはないため、普通に返事を返す。
「俺は今回が初めてだな。前にきたのはどんな時だったんだ?」
「ドラルスを攻めて領土拡大しようとした時だな」
「あぁ……。そういえばそんな話あったな……。結局、ミッドカオスに察知されて不発に終わったんだったか」
「そうそう。アイツらは本当に憎たらしいよ……。俺たちが動くのを見計らって、こっちに攻め入ろうとしやがったんだ。思えば、それもシェルによる仕業だったのかもしれねぇな……」
「多分そうだろうな。アイツは敵の居場所をリアルタイムで正確に把握してくる。もしシェルに近付かれたら、ディオラスには雷の雨が降ることになっていただろう」
「おー、怖い怖い……。この世の皇太子にマトモな奴はいないのか……」
「『メルセデス』に期待するしかないな」
そんな会話をしていると、いよいよ辺りが暗くなってきた。
相変わらず剛風と雨が天気を荒らす中、2人は足を止める。
夜目のきく恭司はともかく、スパイルはこの暗さだと進むのに神経を使うからだ。
どうせドラルスには急いで歩いてもあと1日かかる。
今日はここで野宿することにした。
2人のいた地点は元々国境沿いに近い所だったため、道のりとしてはほぼまっすぐ進むだけでいい。
道に迷う心配はないし、2人とも元々そこへ向かうつもりだったのだから、当然問題などない。
だが、
スパイルが言う『アテ』については、問題が大有りだった。
「えっと……『魔法医師』……だったか?…………何だそれ?」
恭司の声には不信感が満ち満ちていた。
恭司自身、情報収集は色々としてきたが、そんな話は聞いたこともない。
それに、
何より『魔法』だ。
おそらくは魔法のような速度で治すとかそういう意味なのだろうと推測できるが、普通に信じられない。
「いや、それがマジなんだって。俺も人から聞いた話だから詳しく知ってるわけじゃないんだが、どうにもソイツは本当に魔法が使えるらしいんだ」
「…………」
推測はハズれて、本当に魔法を使うという意味らしい。
恭司の疑惑の視線がより強くなった。
「仮に、その話が本当だとして、ソイツがどこにいるかは分かってるのか?こんな体で街中探し回るなんてゴメンだぞ……」
「あー……、どこにいるかって情報までは……流石に無いな。ただ、ソイツは女らしいぜ」
「女ってだけならそこら辺にいるだろう……。それだけの情報で探し回ってたら日が暮れるぞ」
「まぁ、確かにな。俺も流石に現実的じゃねぇとは思ってるよ。ただ、普通の医者は俺たちのことなんて診てくれないと思うが、その辺りはどうするつもりなんだ?」
「……??脅せばいいじゃないか」
「人の心はどこかに置いてきちまったのか?」
「真夜中に住民ごと家を焼いた奴に言われたくねぇよ」
「まぁ、確かにな」
そんな会話をしながら、2人はドラルスまでの道のりを着々と消化していった。
心なしか、2人とも進むペースが速くなってきている。
度重なる連闘で、体の限界を感じつつあるのだ。
なるべく早く治療に移った方が良い。
「この感じだとあと1日くらいかね?ドラルスに行くのは久しぶりだな……」
ふと、スパイルが話し出す。
本当に脅すかどうかは別にして、話題は切り替わったようだ。
恭司も特にやることはないため、普通に返事を返す。
「俺は今回が初めてだな。前にきたのはどんな時だったんだ?」
「ドラルスを攻めて領土拡大しようとした時だな」
「あぁ……。そういえばそんな話あったな……。結局、ミッドカオスに察知されて不発に終わったんだったか」
「そうそう。アイツらは本当に憎たらしいよ……。俺たちが動くのを見計らって、こっちに攻め入ろうとしやがったんだ。思えば、それもシェルによる仕業だったのかもしれねぇな……」
「多分そうだろうな。アイツは敵の居場所をリアルタイムで正確に把握してくる。もしシェルに近付かれたら、ディオラスには雷の雨が降ることになっていただろう」
「おー、怖い怖い……。この世の皇太子にマトモな奴はいないのか……」
「『メルセデス』に期待するしかないな」
そんな会話をしていると、いよいよ辺りが暗くなってきた。
相変わらず剛風と雨が天気を荒らす中、2人は足を止める。
夜目のきく恭司はともかく、スパイルはこの暗さだと進むのに神経を使うからだ。
どうせドラルスには急いで歩いてもあと1日かかる。
今日はここで野宿することにした。
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