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【第三章】ディオラス
【第十話】母親 ⑦
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「て、テメェ、何しやがる!!」
残りの人間たちが思わず声を上げた。
だがもう既に分かっている。
自分たちは手を出したらいけないものに手を出した。
触れてはならないものに触れてしまったのだ。
だから、
口ではそう言っても、体は動かない。
ライオンを前にしたウサギのように、体が硬直して動かなかった。
「今日はとても運がいい……。月は雲に覆われて、街灯以外には光の通らない暗黒の街並み……。『今日』を迎えるにはもってこいの夜だ……」
スパイルはティアルの屋敷の方から一転して、男たちの方へ向けて歩き出す。
爪の先からポタポタと血が滴り落ちて、歩いた後には血痕が染みを作った。
口から獰猛な息遣いを漏らし、口角を上げたその表情は、見るも明らかに狩りの様相を醸し出している。
さっき声を上げた男は、ようやく体を後ろにのけぞらせた。
他の人間も似たようなものだ。
スパイルは舌を舐めずって、爪を構える。
「それに、アイツとの戦いの前にこんなウォーミングアップまで用意してくれているなんてな……。本当に、本当に運がいい……。なんて……最高の夜なんだ」
「お、おい……。お前ら……い、今のうちに……」
「さぁ、ショータイムの時間だ」
そこからは悲惨だった。
男が何かを言い終わるより先に、30人いたはずの人間たちが悉く肉塊へと変えられていく。
血が辺りを染め上げ、男たちの断末魔の叫びが木霊し、その場は地獄絵図となった。
そして、
5分も経った頃には全て片付き、スパイルは一人、その惨状を見つめる。
コレは、いい陽動になるだろう。
「それでは、急ぐとするかな」
スパイルはそこから、ティアルの屋敷に向けて走り出した。
街の中を一目散に駆け抜け、やがて、一つの民家の屋根に登る。
ここまで来ると、下道を通るよりは屋根伝いに走る方が早いからだ。
スパイルはいくつもの家の屋根の上を跳び進むと、ようやく、目的の物が見えた。
屋敷というよりは城にしか見えない、このディオラスでも王城に次ぐ最高地。
ティアル・サーライトの居城だ。
「ようやく着いたな。ここからが、今日の本番だ」
後ろではさっきの人間たちの死体が見つかったのか、大きな騒ぎが起こっていた。
これから犯人探しを始めるのだろう。
だが、
どっちにしろディオラスから逃げ出さなければならないスパイルには関係ない。
他人の家の屋根の上からティアルの屋敷を見ていると、ティアルの屋敷からも何人か様子を見に出てきた。
中にはまだまだ沢山いるだろうが、意識が多少でもそっちに向いてくれれば十分だ。
スパイルは早速準備に取り掛かる。
屋敷に忍びこみ、スパイルは屋敷を囲む壁伝いに、大急ぎで爆薬を仕込んでいった。
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残りの人間たちが思わず声を上げた。
だがもう既に分かっている。
自分たちは手を出したらいけないものに手を出した。
触れてはならないものに触れてしまったのだ。
だから、
口ではそう言っても、体は動かない。
ライオンを前にしたウサギのように、体が硬直して動かなかった。
「今日はとても運がいい……。月は雲に覆われて、街灯以外には光の通らない暗黒の街並み……。『今日』を迎えるにはもってこいの夜だ……」
スパイルはティアルの屋敷の方から一転して、男たちの方へ向けて歩き出す。
爪の先からポタポタと血が滴り落ちて、歩いた後には血痕が染みを作った。
口から獰猛な息遣いを漏らし、口角を上げたその表情は、見るも明らかに狩りの様相を醸し出している。
さっき声を上げた男は、ようやく体を後ろにのけぞらせた。
他の人間も似たようなものだ。
スパイルは舌を舐めずって、爪を構える。
「それに、アイツとの戦いの前にこんなウォーミングアップまで用意してくれているなんてな……。本当に、本当に運がいい……。なんて……最高の夜なんだ」
「お、おい……。お前ら……い、今のうちに……」
「さぁ、ショータイムの時間だ」
そこからは悲惨だった。
男が何かを言い終わるより先に、30人いたはずの人間たちが悉く肉塊へと変えられていく。
血が辺りを染め上げ、男たちの断末魔の叫びが木霊し、その場は地獄絵図となった。
そして、
5分も経った頃には全て片付き、スパイルは一人、その惨状を見つめる。
コレは、いい陽動になるだろう。
「それでは、急ぐとするかな」
スパイルはそこから、ティアルの屋敷に向けて走り出した。
街の中を一目散に駆け抜け、やがて、一つの民家の屋根に登る。
ここまで来ると、下道を通るよりは屋根伝いに走る方が早いからだ。
スパイルはいくつもの家の屋根の上を跳び進むと、ようやく、目的の物が見えた。
屋敷というよりは城にしか見えない、このディオラスでも王城に次ぐ最高地。
ティアル・サーライトの居城だ。
「ようやく着いたな。ここからが、今日の本番だ」
後ろではさっきの人間たちの死体が見つかったのか、大きな騒ぎが起こっていた。
これから犯人探しを始めるのだろう。
だが、
どっちにしろディオラスから逃げ出さなければならないスパイルには関係ない。
他人の家の屋根の上からティアルの屋敷を見ていると、ティアルの屋敷からも何人か様子を見に出てきた。
中にはまだまだ沢山いるだろうが、意識が多少でもそっちに向いてくれれば十分だ。
スパイルは早速準備に取り掛かる。
屋敷に忍びこみ、スパイルは屋敷を囲む壁伝いに、大急ぎで爆薬を仕込んでいった。
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