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【第三章】ディオラス
【第九話】スパイルの過去 ⑧
しおりを挟むそれからはバタバタと慌ただしい日々が続いた。
No.4はとんでもない権力と金と得る代わりに、"一桁"としての役職に付かされる。
もちろん、本人が全てをやる必要はない。
役職が付くと、その下に部下を付けることもできるため、ほとんどの人間は部下に任せきりだ。
ただただ、物事の決定権だけを有することになる。
とはいえ、
65位から急速に4位に上がってきたスパイルに部下はいなかった。
これまでの順位では部下なんて必要なかったからだ。
そのため、
部下が出来るまでは業務もスパイル自身がやらなければならない。
着任して早々、スパイルは元No.4の部下から引き継ぎを受けることになった。
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー
「…………以上が、業務の基本的な流れになります。ご理解いただけたでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。分かりやすい説明で助かったよ。前任の部下たちは優秀だな」
「…………恐縮です」
引き継ぎ場所は王城でスパイルの仕事部屋として案内された1室だった。
スパイルがこれから担う役割は『財務』だ。
国のありとあらゆる金の流れについて、スパイルは今、1から学んでいる。
自分の知らないことも多くあり、刺激的だった。
「このまま先に進みますか?それとも休憩を?」
「このまま進めてくれ。まだ大丈夫だ」
「……かしこまりました」
前任の部下の男の言葉には多少トゲがあった。
スパイルに対してあからさまに含んだ感情を持っている。
彼の順位は31位。
元々は自分より順位の低いスパイルが自分をひとっ飛びにしていったことへの憤りもあるし、
そして、
自分の主人を"汚い手段"で陥れた憎しみもある。
スパイルはそれを、穏やかな目で見つめていた。
「俺が許せないって……そんな顔してるな?31位殿」
スパイルが唐突に放ってきた言葉に、男はピクリと身を震わせた。
睨み付けるような鋭い視線を、悪びれもなくスパイルに向ける。
「……理由は説明するまでもなくお分かりでしょう。"元65位殿"は、私がランキング戦を挑めば応じてくれますか?」
「ハハッ!!そりゃあ勿論だ!!だが、物事には順序ってものがある。ご存知の通り、俺のランキング戦は絶賛大人気でな、"公平"にやらないと、周りに示しがつかないだろう?」
「ッ!!!!お前が……ッ!!」
そこで、
スパイルに飛びかかろうとした男を押し留めるように、スパイルは長爪を男の首筋に突き付けた。
あとホンの1センチでも動かせば、男の首を突き刺してしまう。
男にはスパイルの動きがまるで見えていなかった。
元は31位と65位だったかもしれないが、そこにはあまりにも明確な戦力差がある。
男は悔しそうに目をギュッと瞑った。
No.4はとんでもない権力と金と得る代わりに、"一桁"としての役職に付かされる。
もちろん、本人が全てをやる必要はない。
役職が付くと、その下に部下を付けることもできるため、ほとんどの人間は部下に任せきりだ。
ただただ、物事の決定権だけを有することになる。
とはいえ、
65位から急速に4位に上がってきたスパイルに部下はいなかった。
これまでの順位では部下なんて必要なかったからだ。
そのため、
部下が出来るまでは業務もスパイル自身がやらなければならない。
着任して早々、スパイルは元No.4の部下から引き継ぎを受けることになった。
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「…………以上が、業務の基本的な流れになります。ご理解いただけたでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。分かりやすい説明で助かったよ。前任の部下たちは優秀だな」
「…………恐縮です」
引き継ぎ場所は王城でスパイルの仕事部屋として案内された1室だった。
スパイルがこれから担う役割は『財務』だ。
国のありとあらゆる金の流れについて、スパイルは今、1から学んでいる。
自分の知らないことも多くあり、刺激的だった。
「このまま先に進みますか?それとも休憩を?」
「このまま進めてくれ。まだ大丈夫だ」
「……かしこまりました」
前任の部下の男の言葉には多少トゲがあった。
スパイルに対してあからさまに含んだ感情を持っている。
彼の順位は31位。
元々は自分より順位の低いスパイルが自分をひとっ飛びにしていったことへの憤りもあるし、
そして、
自分の主人を"汚い手段"で陥れた憎しみもある。
スパイルはそれを、穏やかな目で見つめていた。
「俺が許せないって……そんな顔してるな?31位殿」
スパイルが唐突に放ってきた言葉に、男はピクリと身を震わせた。
睨み付けるような鋭い視線を、悪びれもなくスパイルに向ける。
「……理由は説明するまでもなくお分かりでしょう。"元65位殿"は、私がランキング戦を挑めば応じてくれますか?」
「ハハッ!!そりゃあ勿論だ!!だが、物事には順序ってものがある。ご存知の通り、俺のランキング戦は絶賛大人気でな、"公平"にやらないと、周りに示しがつかないだろう?」
「ッ!!!!お前が……ッ!!」
そこで、
スパイルに飛びかかろうとした男を押し留めるように、スパイルは長爪を男の首筋に突き付けた。
あとホンの1センチでも動かせば、男の首を突き刺してしまう。
男にはスパイルの動きがまるで見えていなかった。
元は31位と65位だったかもしれないが、そこにはあまりにも明確な戦力差がある。
男は悔しそうに目をギュッと瞑った。
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