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【第八章】魔王城
【第五十六話】代表者 ②
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「ケッケッケッケッ!!相変わらず生意気な小僧だッ!!まぁいい。早くこっちに来て"報告"を聞かせてくれよ。こっちはまだかまだかとずっと首を長くしていたんだからなァ」
痩せ型の男はそう言うと、口元を緩めてニコリと微笑んだ。
やはり拭いきれない小物感はあるが、このシャーキッドを前にしても余裕があるあたり、それなりに修羅場は潜ってきているようだ。
シャーキッドはそう言われて黙って歩を進めると、ドリオーと共に玉座のさらにすぐそばまで近づく。
「…………連れてきたぞ。コイツが例の"切り札"だ」
言葉は少なく、態度はぶっきら棒に────。
およそシャーキッドらしからぬ物言いで、シャーキッドはドリオーをその男に紹介した。
案の定ドリオーはかなり渋い顔を見せたが、その男は逆に興味津々の様子だ。
細長い目を大きく見開き、前のめりになってドリオーをジッと見つめる。
「へぇー、コイツがねぇー…………」
あまり気分の良い視線ではなかった。
かなり露骨に品定めされている。
特に隠す気はないようだ。
所詮は『外周区』の人間だからということなのだろう。
あの馬鹿でかい壁を作った張本人というだけあって、もはや差別的な意識は隠す気すらないらしい。
「…………不細工だなッ!!」
「あぁッ!?」
ガッと────。
思わず殴りかかりそうになったドリオーの手を、シャーキッドは無言で掴んだ。
予想通りの結果だ。
事前に言っていた所で仕方がない。
ドリオーとこの男を鉢合わせればこうなることくらいは、最初から目に見えている話だった。
「怖い怖いッ!!そうイキり立たないでくれよ、不細工くんッ!!」
「誰が不細工だ、誰がッ!!」
取り押さえても尚ギャーギャーと喚く両者に、シャーキッドは大きくため息を吐き出す。
しかし、
もうあまり時間はないのだ。
こんなことをしている場合ではない。
「おい、そろそろ本題に入れ、『ウーリン』。時間が勿体ねぇ」
『ウーリン・ネクトリアース』────。
それが、この痩せ型の男の名前だった。
ドリオーはピクリと身体を揺らす。
『ウーリン・ネクトリアース』は貴族の名だ。
それも、"あの国"の────。
ウーリンはそれを聞いて真顔になると、椅子の背もたれにドカッと背中を押し倒す。
「ったく…………。初対面だから気合いを入れて挨拶したっていうのに…………。まぁ良いか。アレが動き出した以上、確かにその通りだしな」
ウーリンはそう言うと、手元のベルをカランカランと鳴らした。
それを使って人を呼ぶようだ。
鳴らし終わると、シャーキッドたちの入ってきた方とは違うドアが開き、ゾロゾロと大勢の人が入ってくる。
痩せ型の男はそう言うと、口元を緩めてニコリと微笑んだ。
やはり拭いきれない小物感はあるが、このシャーキッドを前にしても余裕があるあたり、それなりに修羅場は潜ってきているようだ。
シャーキッドはそう言われて黙って歩を進めると、ドリオーと共に玉座のさらにすぐそばまで近づく。
「…………連れてきたぞ。コイツが例の"切り札"だ」
言葉は少なく、態度はぶっきら棒に────。
およそシャーキッドらしからぬ物言いで、シャーキッドはドリオーをその男に紹介した。
案の定ドリオーはかなり渋い顔を見せたが、その男は逆に興味津々の様子だ。
細長い目を大きく見開き、前のめりになってドリオーをジッと見つめる。
「へぇー、コイツがねぇー…………」
あまり気分の良い視線ではなかった。
かなり露骨に品定めされている。
特に隠す気はないようだ。
所詮は『外周区』の人間だからということなのだろう。
あの馬鹿でかい壁を作った張本人というだけあって、もはや差別的な意識は隠す気すらないらしい。
「…………不細工だなッ!!」
「あぁッ!?」
ガッと────。
思わず殴りかかりそうになったドリオーの手を、シャーキッドは無言で掴んだ。
予想通りの結果だ。
事前に言っていた所で仕方がない。
ドリオーとこの男を鉢合わせればこうなることくらいは、最初から目に見えている話だった。
「怖い怖いッ!!そうイキり立たないでくれよ、不細工くんッ!!」
「誰が不細工だ、誰がッ!!」
取り押さえても尚ギャーギャーと喚く両者に、シャーキッドは大きくため息を吐き出す。
しかし、
もうあまり時間はないのだ。
こんなことをしている場合ではない。
「おい、そろそろ本題に入れ、『ウーリン』。時間が勿体ねぇ」
『ウーリン・ネクトリアース』────。
それが、この痩せ型の男の名前だった。
ドリオーはピクリと身体を揺らす。
『ウーリン・ネクトリアース』は貴族の名だ。
それも、"あの国"の────。
ウーリンはそれを聞いて真顔になると、椅子の背もたれにドカッと背中を押し倒す。
「ったく…………。初対面だから気合いを入れて挨拶したっていうのに…………。まぁ良いか。アレが動き出した以上、確かにその通りだしな」
ウーリンはそう言うと、手元のベルをカランカランと鳴らした。
それを使って人を呼ぶようだ。
鳴らし終わると、シャーキッドたちの入ってきた方とは違うドアが開き、ゾロゾロと大勢の人が入ってくる。
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