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【第七章】シベリザード連合国
【第四十五話】結集 ①
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ウルスによって調べさせた結果、"実験"は一応成功だった。
10体ほどのコボルトにそれぞれの部位を分割して分け与えた所、進化する個体が"2体"現れたのだ。
生きたまま『心臓』と『脳』を食った個体と、『右足』を1本丸ごと食った個体────。
餌が1人だけではまだまだ十分な検証結果とは言えないが、1人の冒険者で"2匹"進化したという事実が大きい。
実験対象を『コボルト』に限定したのも良かった。
最下層にほど近い種族であるが故に、進化へのハードルが他よりも低かったのだ。
テオドールがAランク冒険者だったことも手伝い、養分が大きい分、効果が現れるのも早い。
「これなら安心して切り分けられるな。まだしばらくは検証が必要だろうが、とりあえず兵糧で進化を促す分には問題なさそうだ。検証の暁には、褒美でランクを作ろう」
恭司は地上に戻ると、満足そうな顔でウンウンと頷いた。
殺した相手が『兵糧』であり『進化の材料』にもなるのだから、魔族とは本当に便利な生き物だ。
軍の維持に必要な『兵糧問題』と『兵力強化』、『士気の持続』を、街に攻め込むだけで勝手に賄ってくれる。
「まさかヒューマンにこんな使い方があったとはニャアー…………。こんなことを思い付くなんて、魔王様はすごいのニャッ!!」
ニーニャも既に完全復活しているようだった。
元々深く悩むのは嫌いな性格なのだ。
『ディーグレアの復活』という新たな目標を手に入れた今、恭司に全力で従う姿勢を見せている。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!魔族は『弱肉強食』であるが故に、そもそも他者に"分け与える"という感覚が薄いからのぅ。とはいえ…………自分で殺した相手を一人で食えないとなれば、中には不満を出す魔族も出てくるじゃろうが…………」
ドライダスはそう言って顎を掻いた。
ニーニャと共に外に出てきたのだ。
死んで身体を切り分けられたテオドールを囲みながら、楽しそうに談笑して笑顔を見せている。
「まぁ、それについては黙らせるさ。元々そのつもりだったしな。それより、他の魔族どもの召集はどうなっている?上手くいきそうか?」
「今、ワシの部下を使って走らせております。もう何日かはかかるでしょうが、単にワシらの名を使って呼び寄せるだけですので、そう時間はかからんでしょう」
「そうか…………。それは楽しみだな。ちなみに、どこか集めるのに適した場所は見つけてあるのか?」
「それなら……」
「あの大きな建物のある場所が良いニャッ!!」
すると…………
ドライダスの言葉を遮り、ニーニャが自信満々な顔で口を挟んだ。
既にどこか見つけていたようだ。
ディーグレアのためともあって、誰よりもモチベーションが高い。
「あぁ、あの大きな舞台のあった場所か…………。確かにあそこなら、体の大きい魔族たちを集結させても問題ないかもしれんのぅ」
ドライダスもそう言って頷いた。
大きな舞台があるということは、元々そういう目的で作られた場所なのだろう。
シャーキッドに壊されていなかったのは幸いだ。
恭司は本当に…………運が良い。
「なら、問題はないな。そいつらが来たら、初陣としてここから一番近い村でヒューマンを狩るとしよう。"実験結果"はなるべく多いに越したことはないからな」
「そうですな。まぁ…………とはいえ少しばかり時間はかかるかと思いますので、その間に建物も少し整えておきましょう。ちょうど、部下にそういう類の得意な者たちがいるのです」
ドライダスはそう言って提案した。
『ドワーフ』たちのことだ。
『ドワーフ』は戦力的には弱い種族だが、代わりに身を守るための防壁や武器を作るなど、魔族の中では最もヒューマンに近い性質を持っている。
その甲斐あって、『建築』や『鍛治』に関してはヒューマンの『上位職』に近い腕前を持っていた。
元のドライダスたちの根倉も彼らの手によるものだ。
建物の修繕くらいは問題なくやってのける。
「ほぉ…………。流石、気が利くな。なら、その辺りはお前に任せる。期待しているぞ」
「ハッ!!お任せくださいッ!!」
恭司はそう言って頭を下げるドライダスに背を向けると、自分の寝室へと戻っていった。
とりあえず、状況は良い方向へと進んだようだ。
念願の日が徐々に近づいてきているのを感じて、頬がいつまでも吊り上がって吊り上がって仕方がない。
「クク…………。魔族と出会えたことが、俺にとっての一番の幸運だったかもしれないな…………」
恭司はそう言って部屋に入ると、すぐに新品の酒を一つ取り出した。
この部屋の前の持ち主のものだろう。
普段は特に飲むことはないが、こういう時くらいは良いものだ。
恭司はコップも使わずにラッパ飲みしながら、上機嫌で鼻歌混じりに笑顔を見せる。
「楽しみだ…………。本当に、楽しみだよ…………」
恭司は部屋で一人そう呟きながら、いずれ"来たるべき時"に向け、想いを馳せた。
あと数日の我慢だ。
あと数日で…………恭司の本当の意味での『軍』が完成する。
『魔王』として掻き集めた、まごうことなき"人類の敵"ばかりを集めた軍だ。
ヒューマン時代の、終わりの始まり────。
恭司は酒を手にしながら、一人酔いしれる。
前世から数えれば何十年ぶりに飲んだその酒は、それはとてもとても…………美味しかった。
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10体ほどのコボルトにそれぞれの部位を分割して分け与えた所、進化する個体が"2体"現れたのだ。
生きたまま『心臓』と『脳』を食った個体と、『右足』を1本丸ごと食った個体────。
餌が1人だけではまだまだ十分な検証結果とは言えないが、1人の冒険者で"2匹"進化したという事実が大きい。
実験対象を『コボルト』に限定したのも良かった。
最下層にほど近い種族であるが故に、進化へのハードルが他よりも低かったのだ。
テオドールがAランク冒険者だったことも手伝い、養分が大きい分、効果が現れるのも早い。
「これなら安心して切り分けられるな。まだしばらくは検証が必要だろうが、とりあえず兵糧で進化を促す分には問題なさそうだ。検証の暁には、褒美でランクを作ろう」
恭司は地上に戻ると、満足そうな顔でウンウンと頷いた。
殺した相手が『兵糧』であり『進化の材料』にもなるのだから、魔族とは本当に便利な生き物だ。
軍の維持に必要な『兵糧問題』と『兵力強化』、『士気の持続』を、街に攻め込むだけで勝手に賄ってくれる。
「まさかヒューマンにこんな使い方があったとはニャアー…………。こんなことを思い付くなんて、魔王様はすごいのニャッ!!」
ニーニャも既に完全復活しているようだった。
元々深く悩むのは嫌いな性格なのだ。
『ディーグレアの復活』という新たな目標を手に入れた今、恭司に全力で従う姿勢を見せている。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!魔族は『弱肉強食』であるが故に、そもそも他者に"分け与える"という感覚が薄いからのぅ。とはいえ…………自分で殺した相手を一人で食えないとなれば、中には不満を出す魔族も出てくるじゃろうが…………」
ドライダスはそう言って顎を掻いた。
ニーニャと共に外に出てきたのだ。
死んで身体を切り分けられたテオドールを囲みながら、楽しそうに談笑して笑顔を見せている。
「まぁ、それについては黙らせるさ。元々そのつもりだったしな。それより、他の魔族どもの召集はどうなっている?上手くいきそうか?」
「今、ワシの部下を使って走らせております。もう何日かはかかるでしょうが、単にワシらの名を使って呼び寄せるだけですので、そう時間はかからんでしょう」
「そうか…………。それは楽しみだな。ちなみに、どこか集めるのに適した場所は見つけてあるのか?」
「それなら……」
「あの大きな建物のある場所が良いニャッ!!」
すると…………
ドライダスの言葉を遮り、ニーニャが自信満々な顔で口を挟んだ。
既にどこか見つけていたようだ。
ディーグレアのためともあって、誰よりもモチベーションが高い。
「あぁ、あの大きな舞台のあった場所か…………。確かにあそこなら、体の大きい魔族たちを集結させても問題ないかもしれんのぅ」
ドライダスもそう言って頷いた。
大きな舞台があるということは、元々そういう目的で作られた場所なのだろう。
シャーキッドに壊されていなかったのは幸いだ。
恭司は本当に…………運が良い。
「なら、問題はないな。そいつらが来たら、初陣としてここから一番近い村でヒューマンを狩るとしよう。"実験結果"はなるべく多いに越したことはないからな」
「そうですな。まぁ…………とはいえ少しばかり時間はかかるかと思いますので、その間に建物も少し整えておきましょう。ちょうど、部下にそういう類の得意な者たちがいるのです」
ドライダスはそう言って提案した。
『ドワーフ』たちのことだ。
『ドワーフ』は戦力的には弱い種族だが、代わりに身を守るための防壁や武器を作るなど、魔族の中では最もヒューマンに近い性質を持っている。
その甲斐あって、『建築』や『鍛治』に関してはヒューマンの『上位職』に近い腕前を持っていた。
元のドライダスたちの根倉も彼らの手によるものだ。
建物の修繕くらいは問題なくやってのける。
「ほぉ…………。流石、気が利くな。なら、その辺りはお前に任せる。期待しているぞ」
「ハッ!!お任せくださいッ!!」
恭司はそう言って頭を下げるドライダスに背を向けると、自分の寝室へと戻っていった。
とりあえず、状況は良い方向へと進んだようだ。
念願の日が徐々に近づいてきているのを感じて、頬がいつまでも吊り上がって吊り上がって仕方がない。
「クク…………。魔族と出会えたことが、俺にとっての一番の幸運だったかもしれないな…………」
恭司はそう言って部屋に入ると、すぐに新品の酒を一つ取り出した。
この部屋の前の持ち主のものだろう。
普段は特に飲むことはないが、こういう時くらいは良いものだ。
恭司はコップも使わずにラッパ飲みしながら、上機嫌で鼻歌混じりに笑顔を見せる。
「楽しみだ…………。本当に、楽しみだよ…………」
恭司は部屋で一人そう呟きながら、いずれ"来たるべき時"に向け、想いを馳せた。
あと数日の我慢だ。
あと数日で…………恭司の本当の意味での『軍』が完成する。
『魔王』として掻き集めた、まごうことなき"人類の敵"ばかりを集めた軍だ。
ヒューマン時代の、終わりの始まり────。
恭司は酒を手にしながら、一人酔いしれる。
前世から数えれば何十年ぶりに飲んだその酒は、それはとてもとても…………美味しかった。
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