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【第六章】新生・魔王軍
【第四十一話】最狂の死神 ⑤
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「う、ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッ!!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
苛烈に熾烈に猛烈に────。
ディーグレアの力が緩んだ隙を付いて、『風撃閃』は『紅蓮火王』を容赦なく打ち破っていった。
ハイエルフたちから次々と撃ち込まれる横槍に、ディーグレアもとうとう身体が耐えきれなくなったのだ。
前への道を堰き止められていたその暴風は、解放されたその瞬間に、ダムが決壊したかのような勢いであっという間に距離を詰める。
そして…………
「ぎ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
『風撃閃』は、ディーグレアの身体を勢いよく抉り始めていった。
三谷の"最終"奥義である『風撃閃』は、基本的に当たれば"終わり"の必殺技なのだ。
その『殺戮の暴風』はディーグレアの身体を容赦なく刻んで食い破っていくと、血が肉が臓物が大量に宙を舞う。
さらに…………
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
『風撃閃』はその大風によってディーグレアの巨体を地から引き剥がすと、そのまま街中を縦断するように一直線に吹き飛ばしていった。
まるでドリルが岩を無理矢理突き抜けようとするかのような光景だ。
舞い散る肉と血液がその道を赤黒く彩っていき、凄まじい速度でディーグレアの巨体を繰り抜いていく。
「あ、がぁ…………ッ!!」
その勢いが止まったのは、既に街からは大きく飛び出し、森の中にまで突き抜けた後のことだった。
『風撃閃』はディーグレアの身体越しに数多の建物と外壁と木々を散々吹き飛ばした後に、最終的に1本の大木に当たってようやく勢いを止めたのだ。
ディーグレアは既に折れた大木の根元に力なく横たわりながら、小さく細くヒューヒューと息を漏らす。
誰がどう見ても明らかな…………満身創痍そのものだった。
もう死ぬ寸前だ。
その身体には『風撃閃』によって無理矢理繰り抜かれた大きな穴が空いており、そこから血がドバドバと滝のように流れ落ちている。
『風前の灯』とは…………正にこのことだった。
もう何をしても無駄だ。
胃も肺も心臓すらもが潰され、元魔王としての生命力だけが、この"最期"の瞬間を作り出している。
すると…………
「ディーグレア様…………?」
声が聞こえてきた。
『ニーニャ』の声だ。
感覚が麻痺してよく見えないが、隣には『ドライダス』や『ナターシャ』の気配も感じる。
どうやら…………恭司によって吹き飛ばされた場所は、ドライダスたちが避難していた場所のすぐ側のようだった。
コレばかりは完全に偶然だ。
ディーグレアはイマイチよく見えない虚な瞳で、3体の竜種たちを見つめる。
かつて…………共に戦場を駆け抜けてきた戦友たち────。
胴体を丸ごと繰り抜かれているが故に声はもう出すことが出来なかったが、最期に一目見ることが出来て良かった。
もう残された時間はあと僅かだ。
生命力が強いおかげで即死しなかっただけで、時間的にはもう1分すら残ってはいない。
しかし…………
「…………酷い状態じゃな、ディーグレア…………。とはいえ…………『決闘』を汚す『卑怯者』には、お似合いの末路じゃわい」
(え………………ッ!?!?)
その最期にかけられた言葉は、ひどく辛辣な…………"侮蔑"と"嘲り"によるものだった。
今のはドライダスの声だ。
悲しみと"憤り"すらもが混じった声────。
ディーグレアはその瞬間に…………"ついさっき"のことを、今さらのように思い出す。
「ぁ……ッ!!が…………ッ!!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ッ!!」
やはり声は上手く出せなかった。
口の中は溢れ出す血液で一杯で、それを呑み込む力も、呑み込む先の臓器ですら不足しているのだ。
ただただ聞くだけで、反論も説得も弁解も釈明も…………何もできない。
「正直、失望したわい…………。あの世で何があったのかは知らんが、200年もの歳月で、お主はずいぶんと変わってしまったようじゃの……」
「が…………ッ!!ぐぁがああああああああああああああああああああッ!!がああああああああああああああああああああああッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
(ち、違う…………ッ!!我は何も変わってなどいないッ!!さっきのはアイツが……ッ!!カザルが…………ッ!!)
「ディーグレア様…………。ずっと…………ずっと、信じていたのに…………」
今のはナターシャの声だった。
声が涙声だ。
どうやら泣いているらしい。
別れに対する悲しみより、信頼を裏切られたことに対する憤りの方が強いのだろう。
最後の最後まで信じていたというのに、ついさっきの"声"で、残念ながら悪い方に確信を持ってしまったのだ。
ディーグレアは無い力をどうにか振り絞りながら、尚も言葉を紡ごうと口を開く。
「あぐ…………ッ!!が……ッ!!ぁ、ぐぁ、がぅ…………ッ!!がふ…………ッ!!ぁぅ、が、がぁぁぁぁああああああああああああああああああああ…………ッ!!」
(違うッ!!誤解だッ!!さっきのは違う…………ッ!!元々、カザルが先にハイエルフどもを使って我を謀ったのだッ!!カザルがッ!!カザルがあああああああああああああああああああああああ…………ッ!!)
「クク…………ッ!!往生際が悪いぜ、ディーグレア…………?この期に及んで、"恨み言"なんてなァ…………ッ!!」
「…………ッ!!!!」
恭司だった。
『風撃閃』の中にいた恭司は、ずっとさっきのやり取りも見て聞いていたのだ。
恭司は悪魔じみた不気味な笑顔を浮かべつつ、満足気な顔でディーグレアへ躙り寄る。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
苛烈に熾烈に猛烈に────。
ディーグレアの力が緩んだ隙を付いて、『風撃閃』は『紅蓮火王』を容赦なく打ち破っていった。
ハイエルフたちから次々と撃ち込まれる横槍に、ディーグレアもとうとう身体が耐えきれなくなったのだ。
前への道を堰き止められていたその暴風は、解放されたその瞬間に、ダムが決壊したかのような勢いであっという間に距離を詰める。
そして…………
「ぎ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
『風撃閃』は、ディーグレアの身体を勢いよく抉り始めていった。
三谷の"最終"奥義である『風撃閃』は、基本的に当たれば"終わり"の必殺技なのだ。
その『殺戮の暴風』はディーグレアの身体を容赦なく刻んで食い破っていくと、血が肉が臓物が大量に宙を舞う。
さらに…………
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
『風撃閃』はその大風によってディーグレアの巨体を地から引き剥がすと、そのまま街中を縦断するように一直線に吹き飛ばしていった。
まるでドリルが岩を無理矢理突き抜けようとするかのような光景だ。
舞い散る肉と血液がその道を赤黒く彩っていき、凄まじい速度でディーグレアの巨体を繰り抜いていく。
「あ、がぁ…………ッ!!」
その勢いが止まったのは、既に街からは大きく飛び出し、森の中にまで突き抜けた後のことだった。
『風撃閃』はディーグレアの身体越しに数多の建物と外壁と木々を散々吹き飛ばした後に、最終的に1本の大木に当たってようやく勢いを止めたのだ。
ディーグレアは既に折れた大木の根元に力なく横たわりながら、小さく細くヒューヒューと息を漏らす。
誰がどう見ても明らかな…………満身創痍そのものだった。
もう死ぬ寸前だ。
その身体には『風撃閃』によって無理矢理繰り抜かれた大きな穴が空いており、そこから血がドバドバと滝のように流れ落ちている。
『風前の灯』とは…………正にこのことだった。
もう何をしても無駄だ。
胃も肺も心臓すらもが潰され、元魔王としての生命力だけが、この"最期"の瞬間を作り出している。
すると…………
「ディーグレア様…………?」
声が聞こえてきた。
『ニーニャ』の声だ。
感覚が麻痺してよく見えないが、隣には『ドライダス』や『ナターシャ』の気配も感じる。
どうやら…………恭司によって吹き飛ばされた場所は、ドライダスたちが避難していた場所のすぐ側のようだった。
コレばかりは完全に偶然だ。
ディーグレアはイマイチよく見えない虚な瞳で、3体の竜種たちを見つめる。
かつて…………共に戦場を駆け抜けてきた戦友たち────。
胴体を丸ごと繰り抜かれているが故に声はもう出すことが出来なかったが、最期に一目見ることが出来て良かった。
もう残された時間はあと僅かだ。
生命力が強いおかげで即死しなかっただけで、時間的にはもう1分すら残ってはいない。
しかし…………
「…………酷い状態じゃな、ディーグレア…………。とはいえ…………『決闘』を汚す『卑怯者』には、お似合いの末路じゃわい」
(え………………ッ!?!?)
その最期にかけられた言葉は、ひどく辛辣な…………"侮蔑"と"嘲り"によるものだった。
今のはドライダスの声だ。
悲しみと"憤り"すらもが混じった声────。
ディーグレアはその瞬間に…………"ついさっき"のことを、今さらのように思い出す。
「ぁ……ッ!!が…………ッ!!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ッ!!」
やはり声は上手く出せなかった。
口の中は溢れ出す血液で一杯で、それを呑み込む力も、呑み込む先の臓器ですら不足しているのだ。
ただただ聞くだけで、反論も説得も弁解も釈明も…………何もできない。
「正直、失望したわい…………。あの世で何があったのかは知らんが、200年もの歳月で、お主はずいぶんと変わってしまったようじゃの……」
「が…………ッ!!ぐぁがああああああああああああああああああああッ!!がああああああああああああああああああああああッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
(ち、違う…………ッ!!我は何も変わってなどいないッ!!さっきのはアイツが……ッ!!カザルが…………ッ!!)
「ディーグレア様…………。ずっと…………ずっと、信じていたのに…………」
今のはナターシャの声だった。
声が涙声だ。
どうやら泣いているらしい。
別れに対する悲しみより、信頼を裏切られたことに対する憤りの方が強いのだろう。
最後の最後まで信じていたというのに、ついさっきの"声"で、残念ながら悪い方に確信を持ってしまったのだ。
ディーグレアは無い力をどうにか振り絞りながら、尚も言葉を紡ごうと口を開く。
「あぐ…………ッ!!が……ッ!!ぁ、ぐぁ、がぅ…………ッ!!がふ…………ッ!!ぁぅ、が、がぁぁぁぁああああああああああああああああああああ…………ッ!!」
(違うッ!!誤解だッ!!さっきのは違う…………ッ!!元々、カザルが先にハイエルフどもを使って我を謀ったのだッ!!カザルがッ!!カザルがあああああああああああああああああああああああ…………ッ!!)
「クク…………ッ!!往生際が悪いぜ、ディーグレア…………?この期に及んで、"恨み言"なんてなァ…………ッ!!」
「…………ッ!!!!」
恭司だった。
『風撃閃』の中にいた恭司は、ずっとさっきのやり取りも見て聞いていたのだ。
恭司は悪魔じみた不気味な笑顔を浮かべつつ、満足気な顔でディーグレアへ躙り寄る。
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