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【第六章】新生・魔王軍
【第四十一話】最狂の死神 ②
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「あ、アナタは…………」
「ご無事なようでなりよりです、ナターシャ様…………ッ!!先ほど魔王様より遣いに伺わせていただいた、『エルドラ』と申しますッ!!ここは危険ですので、安全な場所に避難していただきたく思い、再び参上致しましたッ!!」
「そ、それは良いのだけれど…………。コレは一体…………」
いきなり現れたハイエルフは、『エルドラ』と名乗った。
ハイエルフたちのリーダー的存在だ。
いつも恭司がハイエルフたちに話しかける時の相手でもある。
「実は…………"ディーグレア様"が、"新しい魔王様"を"排除"しようと、"謀反"を起こされまして……」
「え…………ッ!?ち、ちょっと待ってッ!!突然来て何よ、それッ!?いきなりそんなこと言われても……ッ!!」
「ディーグレアが………………と言ったな……?」
すると…………
『エルドラ』の言葉に狼狽えるナターシャに代わって、ドライダスが尋ねた。
こうして話している今も尚、恭司とディーグレアはぶつかり合っている真っ最中だ。
ディーグレアの『紅蓮火王』が恭司の『風撃閃』を受け止め続け、相も変わらずの轟音が鳴り響き続けている。
「…………察するに、ディーグレアを復活させたのはあの新魔王で、ディーグレアはその新魔王に取って代わろうと、勝負を仕掛けたということか…………?」
「仰る通りです…………。まぁ…………新魔王様も、こうなることはある程度予想されていたようですが…………。どうやら、ディーグレア様は皆様を呼んだ後、皆様と"協力"して、新魔王様を潰すおつもりだったようで……」
「…………ッ!?!?バカな…………ッ!!ディーグレアが、そんな"卑怯"な真似をするはずなど……ッ!!」
「残念ながら事実です…………。ニーニャ様や他の者には"内緒"にされていたようですが、我らハイエルフの『精霊』が、こっそり教えてくれました。新魔王様はそれにいち早く気付き、皆様が到着される前に戦闘を始められたのです」
「そ、そんな…………」
ディーグレアもナターシャも、俄かには信じられない様子だった。
『弱肉強食』を重んじる彼ら魔族にとって、『決闘』とは非常に神聖なものなのだ。
個々の強さの優劣がそのまま魔族間の序列となる彼らからすれば、『決闘』に他の者が手出しするなど、絶対的にあってはならない"タブー"になる。
リンチなど以ての外だ。
ドライダスたちも、実際にそんなことを頼まれたとしたら、一も二もなくすぐさま断っていたことだろう。
考慮にも値しないに違いない。
そんな"タブー"をディーグレアが自ら破ろうとしていたなど…………ディーグレアと付き合いの長い彼らにとっては、とても信じられない話だった。
もし"本当なら"最悪だ。
魔族の王として、あるまじき失態になる。
「我らも『精霊』から聞いた時、思わず耳を疑いました…………。ですが…………コレは事実なのです。ニーニャ様も大変驚いておられました」
「そ、それはそうだろう…………ッ!!とてもじゃないが、信じられない話だッ!!あのディーグレアに限って、そんなわけが……ッ!!」
「落ち着いてください…………。我らも、その件については"後で"ディーグレア様に直接お話を聞かせていただく予定ですので、よろしければその時に皆様もご同席されれば良いかと存じます」
「…………ッ!!!!あぁ…………ッ!!そうだなッ!!そうさせてもらおう…………ッ!!」
ドライダスはそう言って、不承不承に頷いた。
今は全く納得出来ない話であっても、"後で"本人から聞けるならばということで、一旦は矛を収めたのだ。
どちらにしろ、戦闘中である今は話しかけることもできない。
あの熾烈な正面衝突に横槍の一つでも入れようものなら、一瞬と保たずにすぐさま殺されてしまうのは確実なのだ。
今はとりあえず黙って…………受け入れるしかない。
その様子を見て、ハイエルフ…………『エルドラ』は、ホッと息を吐いた。
"順調"であり…………"予定通り"だ。
"恭司"の言っていた通り────。
"今は"、彼らからの納得なんて、必要ない。
そう…………
彼らとディーグレアには…………もう"後で"なんて、二度と訪れることは無いのだから────。
「それでは行きましょうか────。魔王様お二人の戦いは壮絶です。この辺りも、いつ焦土と化すか分かりませんからね」
「「「……………………」」」
ドライダスたちはそうして…………ハイエルフ、『エルドラ』の後ろに付いていった。
彼らの表情には苛立ちと怪訝さがこれでもかというくらいに込められているが、コレも"計画通り"だ。
ナターシャに伝言を頼まれた時に恭司から言われた内容と、寸分違わずに"その通り"のまま進んでいる。
ハイエルフは内心で成功を喜びつつも、少しばかり薄ら寒くも思っていた。
●『精霊』がディーグレアの謀反を教えてくれたということ────。
●ディーグレアが彼ら魔族と協力して恭司を排しようとしていたということ────。
コレらは全て…………恭司にあらかじめ言われて吐かれた、"嘘"なのだ。
唯一、本当と言えるのは、ディーグレア"も"仕掛けようとしていたということくらい────。
その他は何もかも全て…………恭司が勝手に作り出した、"でっち上げ"に過ぎない。
なまじ…………一般的に生体をよく知られておらず、魔族としての誇りや矜持もない"ハイエルフたち"を使う辺りが悪質だった。
本当に『精霊』にそんな力があるのか疑惑を持たれたとしても、とりあえず『後で』と言って先延ばしにさえできれば十分なのだ。
ディーグレアに隙を作り出して『風撃閃』を繰り出すことに成功した時点で、ドライダスたちの役割はもうほとんど完了している。
だから…………
後はそう…………
"締め"をこなすだけだ。
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「ご無事なようでなりよりです、ナターシャ様…………ッ!!先ほど魔王様より遣いに伺わせていただいた、『エルドラ』と申しますッ!!ここは危険ですので、安全な場所に避難していただきたく思い、再び参上致しましたッ!!」
「そ、それは良いのだけれど…………。コレは一体…………」
いきなり現れたハイエルフは、『エルドラ』と名乗った。
ハイエルフたちのリーダー的存在だ。
いつも恭司がハイエルフたちに話しかける時の相手でもある。
「実は…………"ディーグレア様"が、"新しい魔王様"を"排除"しようと、"謀反"を起こされまして……」
「え…………ッ!?ち、ちょっと待ってッ!!突然来て何よ、それッ!?いきなりそんなこと言われても……ッ!!」
「ディーグレアが………………と言ったな……?」
すると…………
『エルドラ』の言葉に狼狽えるナターシャに代わって、ドライダスが尋ねた。
こうして話している今も尚、恭司とディーグレアはぶつかり合っている真っ最中だ。
ディーグレアの『紅蓮火王』が恭司の『風撃閃』を受け止め続け、相も変わらずの轟音が鳴り響き続けている。
「…………察するに、ディーグレアを復活させたのはあの新魔王で、ディーグレアはその新魔王に取って代わろうと、勝負を仕掛けたということか…………?」
「仰る通りです…………。まぁ…………新魔王様も、こうなることはある程度予想されていたようですが…………。どうやら、ディーグレア様は皆様を呼んだ後、皆様と"協力"して、新魔王様を潰すおつもりだったようで……」
「…………ッ!?!?バカな…………ッ!!ディーグレアが、そんな"卑怯"な真似をするはずなど……ッ!!」
「残念ながら事実です…………。ニーニャ様や他の者には"内緒"にされていたようですが、我らハイエルフの『精霊』が、こっそり教えてくれました。新魔王様はそれにいち早く気付き、皆様が到着される前に戦闘を始められたのです」
「そ、そんな…………」
ディーグレアもナターシャも、俄かには信じられない様子だった。
『弱肉強食』を重んじる彼ら魔族にとって、『決闘』とは非常に神聖なものなのだ。
個々の強さの優劣がそのまま魔族間の序列となる彼らからすれば、『決闘』に他の者が手出しするなど、絶対的にあってはならない"タブー"になる。
リンチなど以ての外だ。
ドライダスたちも、実際にそんなことを頼まれたとしたら、一も二もなくすぐさま断っていたことだろう。
考慮にも値しないに違いない。
そんな"タブー"をディーグレアが自ら破ろうとしていたなど…………ディーグレアと付き合いの長い彼らにとっては、とても信じられない話だった。
もし"本当なら"最悪だ。
魔族の王として、あるまじき失態になる。
「我らも『精霊』から聞いた時、思わず耳を疑いました…………。ですが…………コレは事実なのです。ニーニャ様も大変驚いておられました」
「そ、それはそうだろう…………ッ!!とてもじゃないが、信じられない話だッ!!あのディーグレアに限って、そんなわけが……ッ!!」
「落ち着いてください…………。我らも、その件については"後で"ディーグレア様に直接お話を聞かせていただく予定ですので、よろしければその時に皆様もご同席されれば良いかと存じます」
「…………ッ!!!!あぁ…………ッ!!そうだなッ!!そうさせてもらおう…………ッ!!」
ドライダスはそう言って、不承不承に頷いた。
今は全く納得出来ない話であっても、"後で"本人から聞けるならばということで、一旦は矛を収めたのだ。
どちらにしろ、戦闘中である今は話しかけることもできない。
あの熾烈な正面衝突に横槍の一つでも入れようものなら、一瞬と保たずにすぐさま殺されてしまうのは確実なのだ。
今はとりあえず黙って…………受け入れるしかない。
その様子を見て、ハイエルフ…………『エルドラ』は、ホッと息を吐いた。
"順調"であり…………"予定通り"だ。
"恭司"の言っていた通り────。
"今は"、彼らからの納得なんて、必要ない。
そう…………
彼らとディーグレアには…………もう"後で"なんて、二度と訪れることは無いのだから────。
「それでは行きましょうか────。魔王様お二人の戦いは壮絶です。この辺りも、いつ焦土と化すか分かりませんからね」
「「「……………………」」」
ドライダスたちはそうして…………ハイエルフ、『エルドラ』の後ろに付いていった。
彼らの表情には苛立ちと怪訝さがこれでもかというくらいに込められているが、コレも"計画通り"だ。
ナターシャに伝言を頼まれた時に恭司から言われた内容と、寸分違わずに"その通り"のまま進んでいる。
ハイエルフは内心で成功を喜びつつも、少しばかり薄ら寒くも思っていた。
●『精霊』がディーグレアの謀反を教えてくれたということ────。
●ディーグレアが彼ら魔族と協力して恭司を排しようとしていたということ────。
コレらは全て…………恭司にあらかじめ言われて吐かれた、"嘘"なのだ。
唯一、本当と言えるのは、ディーグレア"も"仕掛けようとしていたということくらい────。
その他は何もかも全て…………恭司が勝手に作り出した、"でっち上げ"に過ぎない。
なまじ…………一般的に生体をよく知られておらず、魔族としての誇りや矜持もない"ハイエルフたち"を使う辺りが悪質だった。
本当に『精霊』にそんな力があるのか疑惑を持たれたとしても、とりあえず『後で』と言って先延ばしにさえできれば十分なのだ。
ディーグレアに隙を作り出して『風撃閃』を繰り出すことに成功した時点で、ドライダスたちの役割はもうほとんど完了している。
だから…………
後はそう…………
"締め"をこなすだけだ。
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