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【第六章】新生・魔王軍
【第三十七話】進化 ④
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「いや、ついさっきのことなんだがな…………。この戦いが終わると同時に、何故だか『スキル』が使えなくなっちまったんだ…………。身体もいつもに比べて少し重く感じるし、もしかしたら『職業』ごと取り上げられちまったのかもしれねぇなァ……」
「………………」
『鑑定士』であるマーリックは既に殺してしまったため、その真偽は今さら確かめようがないものの、シャーキッドの言葉に嘘は無さそうだった。
仮にそうだとすれば大問題だ。
神からヒューマンに与えられる『職業』や『スキル』が、ロスベリータの手でいくらでも"後で"変えられるという事実の、動かぬ証拠となってしまう。
『職業』や『スキル』が絶対のこの世界からすれば、正に致命的な事実だろう。
長年積み重ねてきた"レベル"や"熟練度"といった数値が、神の気まぐれ1つで一気に台無しにされる可能性もあるということだ。
仮にそれが世界中に広がれば…………今後ヒューマンは誰も、ヒューマンを裏切れなくなる。
「あー、ヒューマン絶対主義のロスベリータがやりそうなことだニャー…………。アイツ、昔からそういうとこあるからニャー…………。自分の管理できる範囲ではやりたい放題だニャ」
「………………」
恭司は閉口した。
今回、シャーキッドがロスベリータの不興を買った理由は明確だ。
ヒューマンと完全に敵対し、恭司に自ら協力しているシャーキッドのことが気に食わなくなったのだろう。
今までと違い…………シャーキッドは今、誰が見ても明らかにヒューマンと敵対する側に立っている。
これまでもシャーキッドはヒューマンを散々殺してきてはいたものの、それはあくまで"ヒューマン同士"でのやり取りであり、ロスベリータからすれば、ただの"身内争い"に過ぎなかったのだ。
それが今や…………事はそんなイザコザのような範疇には収まらず、ヒューマン vs"他種族"という、正に世界的な『戦争』の域にまで発展している。
ヒューマン同士の殺し合い程度なら見過ごしていたロスベリータも、お気に入りのヒューマンが"殲滅"される危機とあっては、流石に見過ごすわけにもいかなかったのだろう。
最初から『無能者』である恭司には何もしようがないから、代わりにシャーキッドへ罰を…………というわけだ。
ある意味、シャーキッドが今回の戦争の一番の被害者なのかもしれない。
「ということは…………シャーキッドも俺と同じ、『無能者』になったということか?」
「あー、多分な…………。コレばかりは流石に予想外だったぜ……。少しロスベリータを甘く見てたかもなァ……」
「……………………」
恭司はまたしても閉口した。
元々、恭司が現世で『無能者』にされたのも、恭司が前世でヒューマンを"殲滅"しようとした『罰』なのだ。
恭司は前世でヒューマンを殺しすぎた"代償"を、今世で無理矢理償わさせられている。
『無能者』の定義はこうだ。
『スキル』も得られず、『職業補正』も受けられず、レベルすらも上がらないまま、何一つとして能力を得られない者────。
恭司もカザルへと転生した際の夢の中で、ロスベリータから直接言い渡されている。
【貴様はこれから、『無能者』として生きるのだ。その世界で誰しもが持っている力を、貴様だけは永遠に持つことはできない。そこで、無力な人間の辛さを味わってくるがいい】────と…………。
ロスベリータからすれば、ヒューマンでありながらヒューマンを滅ぼそうとする人間こそ邪悪であり、イレギュラーな存在なのだろう。
神としてヒューマン同士のイザコザは看過できても、ヒューマンそのものが消えてしまうのは何としてでも避けたいということだ。
おそらくは、このトラントスの街の乗っ取り自体が、全ての引き金になったに違いない。
それくらい、この街の乗っ取りは世界的な大事件なのだ。
この『トラントスの街』は、元々ヒューマンにとってかなり重要な意味を持つ"最前線"都市────。
死の森から魔族を抑えるための防波堤としての役割を果たしつつ、戦力も相応に揃えていた。
まだ他の都市にもヒューマンは多く残ってはいるだろうが、今回の壊滅によってヒューマンの戦力が大幅に削られたことは間違いないのだ。
ロスベリータが『罰』をくだしたがるのもまぁ、分からなくはない。
「ちなみに…………『職業』と『スキル』が無くなっても、お前は今まで通り戦えるのか?」
恭司はここで、自分たちにとって最も重要な部分について、踏み込むことにした。
先ほどはレオナルド相手でも互角に渡り合っていたシャーキッドだが、それから戦力外になったのであればもう不要なのだ。
最初から仲が良いわけでもないし、性格や人間性においては反吐が出るほどに嫌いでもある。
使えないのであれば、いつまでも置いておく意味などないだろう。
エルフに言ってヒューマンに突き出させた後、それによって得た懸賞金で防具や武器でも揃えた方がよっぽどマシなのだ。
武器も防具も自分たちで作ることも他人から奪うこともできるが、そもそも買った方が効率的に決まっている。
「まぁ、その辺は大丈夫じゃねぇか?俺様、元々戦いでは"自前"の技ばっかり使ってたからな。多少、不便ではあるが、戦えないほどじゃねぇよ」
しかし、
シャーキッドは意外にもあっけらかんとそう答えた。
確かに、シャーキッドのメインの攻撃はほとんどが特殊体質の『鋼鉄の身体』ばかりなのだ。
『分身』や『ソニックムーブ』なんかが使えなくなるのは痛手だろうが、それで戦力外となるほどのものじゃない。
恭司はそれを聞いて少しだけ…………"残念"に思った。
「………………」
『鑑定士』であるマーリックは既に殺してしまったため、その真偽は今さら確かめようがないものの、シャーキッドの言葉に嘘は無さそうだった。
仮にそうだとすれば大問題だ。
神からヒューマンに与えられる『職業』や『スキル』が、ロスベリータの手でいくらでも"後で"変えられるという事実の、動かぬ証拠となってしまう。
『職業』や『スキル』が絶対のこの世界からすれば、正に致命的な事実だろう。
長年積み重ねてきた"レベル"や"熟練度"といった数値が、神の気まぐれ1つで一気に台無しにされる可能性もあるということだ。
仮にそれが世界中に広がれば…………今後ヒューマンは誰も、ヒューマンを裏切れなくなる。
「あー、ヒューマン絶対主義のロスベリータがやりそうなことだニャー…………。アイツ、昔からそういうとこあるからニャー…………。自分の管理できる範囲ではやりたい放題だニャ」
「………………」
恭司は閉口した。
今回、シャーキッドがロスベリータの不興を買った理由は明確だ。
ヒューマンと完全に敵対し、恭司に自ら協力しているシャーキッドのことが気に食わなくなったのだろう。
今までと違い…………シャーキッドは今、誰が見ても明らかにヒューマンと敵対する側に立っている。
これまでもシャーキッドはヒューマンを散々殺してきてはいたものの、それはあくまで"ヒューマン同士"でのやり取りであり、ロスベリータからすれば、ただの"身内争い"に過ぎなかったのだ。
それが今や…………事はそんなイザコザのような範疇には収まらず、ヒューマン vs"他種族"という、正に世界的な『戦争』の域にまで発展している。
ヒューマン同士の殺し合い程度なら見過ごしていたロスベリータも、お気に入りのヒューマンが"殲滅"される危機とあっては、流石に見過ごすわけにもいかなかったのだろう。
最初から『無能者』である恭司には何もしようがないから、代わりにシャーキッドへ罰を…………というわけだ。
ある意味、シャーキッドが今回の戦争の一番の被害者なのかもしれない。
「ということは…………シャーキッドも俺と同じ、『無能者』になったということか?」
「あー、多分な…………。コレばかりは流石に予想外だったぜ……。少しロスベリータを甘く見てたかもなァ……」
「……………………」
恭司はまたしても閉口した。
元々、恭司が現世で『無能者』にされたのも、恭司が前世でヒューマンを"殲滅"しようとした『罰』なのだ。
恭司は前世でヒューマンを殺しすぎた"代償"を、今世で無理矢理償わさせられている。
『無能者』の定義はこうだ。
『スキル』も得られず、『職業補正』も受けられず、レベルすらも上がらないまま、何一つとして能力を得られない者────。
恭司もカザルへと転生した際の夢の中で、ロスベリータから直接言い渡されている。
【貴様はこれから、『無能者』として生きるのだ。その世界で誰しもが持っている力を、貴様だけは永遠に持つことはできない。そこで、無力な人間の辛さを味わってくるがいい】────と…………。
ロスベリータからすれば、ヒューマンでありながらヒューマンを滅ぼそうとする人間こそ邪悪であり、イレギュラーな存在なのだろう。
神としてヒューマン同士のイザコザは看過できても、ヒューマンそのものが消えてしまうのは何としてでも避けたいということだ。
おそらくは、このトラントスの街の乗っ取り自体が、全ての引き金になったに違いない。
それくらい、この街の乗っ取りは世界的な大事件なのだ。
この『トラントスの街』は、元々ヒューマンにとってかなり重要な意味を持つ"最前線"都市────。
死の森から魔族を抑えるための防波堤としての役割を果たしつつ、戦力も相応に揃えていた。
まだ他の都市にもヒューマンは多く残ってはいるだろうが、今回の壊滅によってヒューマンの戦力が大幅に削られたことは間違いないのだ。
ロスベリータが『罰』をくだしたがるのもまぁ、分からなくはない。
「ちなみに…………『職業』と『スキル』が無くなっても、お前は今まで通り戦えるのか?」
恭司はここで、自分たちにとって最も重要な部分について、踏み込むことにした。
先ほどはレオナルド相手でも互角に渡り合っていたシャーキッドだが、それから戦力外になったのであればもう不要なのだ。
最初から仲が良いわけでもないし、性格や人間性においては反吐が出るほどに嫌いでもある。
使えないのであれば、いつまでも置いておく意味などないだろう。
エルフに言ってヒューマンに突き出させた後、それによって得た懸賞金で防具や武器でも揃えた方がよっぽどマシなのだ。
武器も防具も自分たちで作ることも他人から奪うこともできるが、そもそも買った方が効率的に決まっている。
「まぁ、その辺は大丈夫じゃねぇか?俺様、元々戦いでは"自前"の技ばっかり使ってたからな。多少、不便ではあるが、戦えないほどじゃねぇよ」
しかし、
シャーキッドは意外にもあっけらかんとそう答えた。
確かに、シャーキッドのメインの攻撃はほとんどが特殊体質の『鋼鉄の身体』ばかりなのだ。
『分身』や『ソニックムーブ』なんかが使えなくなるのは痛手だろうが、それで戦力外となるほどのものじゃない。
恭司はそれを聞いて少しだけ…………"残念"に思った。
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