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【第五章】魔王
【第三十三話】鋼鉄の悪魔 ⑧
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「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「カァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
2人の声は街中に響き渡り、空気を震撼させ、灼熱の熱気を振り撒いた。
真っ向からのぶつかり合いだ。
シャーキッドは右腕を槍状に変えると、今までにないくらいに"大きくする"。
左腕の体積を、全て右腕に注ぎ込んだのだ。
相変わらずの摩訶不思議な変体能力────。
そして、
両腕分の力を1つにしたシャーキッドは、その途轍もなく巨大な右腕を掲げながら、それをとんでもない速度で回す。
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!
聞くだけで恐怖心が込み上がってくるような、巨大な回転音────。
まるで…………右腕が巨大なドリルにでもなったかのような姿だった。
さっきの背負い投げで学んだのだ。
体力は著しく消費するが、こうすればマトモに触れることすら叶わない。
レオナルドはそれに対し、スキルを発動した。
ユニークスキル『バーサクブロウ』────。
『使用回数』最後の一回だ。
拳は痛くて仕方がないが、今使っても後悔はない。
この技は、『バーサクモード』を除けば、レオナルドの最大の切り札なのだ。
3度目の正直────。
コレで拳がどうなろうと、もうどうでもいい。
レオナルドは何が何でも…………コレでシャーキッドにトドメを刺すつもりだった。
要は勝てば良いのだ。
勝ちさえすれば…………この世界には『ヒールポーション』やネシャスの『パーフェクトヒール』がある。
今はただ…………勝利だけを見て邁進する時────。
「殺殺殺殺殺殺ッ!!」
「死死死死死死ッ!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
両者の切り札は、おそろしく巨大で強大な衝撃を放ちながら、真正面から衝突し合った。
レオナルドが手数なら、シャーキッドは一撃入魂だ。
互いの力が拮抗しているのか、辺りは激しい地鳴りに脅かされ、空気がバリバリと音を立てて歪む。
2人の足下もクレーターのように陥没していき、それは周囲に強烈で熾烈で苛烈で猛烈な被害を及ぼした。
もう半径数キロくらいにいる人間は全員死んだだろう。
世界一傍迷惑な殺し合いだ。
巻き添えを食らった者は、もはや断末魔の叫びすら上げる暇もない。
有無を言わせず命を絶たれ、皆あっという間に死んでいくのだ。
この街が世界有数の広さでなければ、とうの昔に街は廃墟と化しているに違いない。
そして────。
2人の切り札によるせめぎ合いは、シャーキッドの方が優勢になりつつあった。
「ぐ……ッ!!ぐゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………ッ!!」
レオナルドから悔しそうな声が漏れる。
シャーキッドと違い、レオナルドのコレは3回目なのだ。
シャーキッドももう…………慣れてきている。
「カァーッカカカカカカカッ!!いくら強力な技だろうと、3度も喰らえばバカでも対処できるさッ!!恨むんなら、スキルとステータス頼みで何も工夫をしてこなかった、自分自身を恨むんだなァッ!!」
シャーキッドはそう言って、ドリルを押す力を強めた。
今度はレオナルドの方が防戦だ。
シャーキッドの言う通り、レオナルドは切り札と呼べるスキルが少なく、工夫もない。
今までは、それで何一つ問題などなかったのだ。
この世界では、大体この技を一度行うだけで決着がつく。
膨大で強靭なステータスを有するレオナルドは、それだけで十分すぎるほどに圧倒的強さを誇っていたのだ。
今のように何度も使わされることなんて、今までに一度たりとも経験したことがない。
「でも……ッ!!それでも俺はァ……ッ!!負けられないんだァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
天高く吠えるレオナルド────。
プライドが執着が復讐心が…………ここで無様に倒れることを良しとはしなかった。
レオナルドはこの世界で、『一位』なのだ。
世界中の冒険者たちの頂点────。
世界屈指の実力者たちの一角────。
自分を目指す人間も数多くいる中…………力が足りないからといって、素直にやられてやるわけにはいかない。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
レオナルドの拳の威力が上がった。
振り絞るかのような、最後の力────。
もう拳は感覚すら無くなっているだろうが、それでもここで止めるわけにはいかないのだ。
ただ触れているだけでもダメージを負うドリルを相手に、レオナルドはひたすら狂ったように拳を投げつける。
何度も……何度も何度も…………何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も────。
「だから……ッ!!しつけぇんだよッ!!」
シャーキッドは足で地面を踏みしめながら、そのドリルでレオナルドを突き刺さんとさらなる力を加えた。
正直、ここまで粘られるとは予想外だ。
そもそも、こんな巨大なドリルに連打で対抗しようなんて考える時点で、頭がおかしいとしか思えない。
それでも、
レオナルドはいくらドリルに攻撃を弾かれても尚、懲りずにずっとずっと攻撃を仕掛け続けてきていた。
流血の量も凄まじいはずなのに、その勢いは少したりとも衰えることがないのだ。
本当に…………『狂戦士』そのもの────。
しかし…………
「ぐ…………ッ!!」
その無茶にだって、当然限界はあった。
ステータスがいくら膨大でも、物理的に拳はどんどん破壊されていっているのだ。
シャーキッドの顔にも笑顔が浮かぶ。
あと…………もう少し────。
「カカァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!よくもたせちゃあいるが……ッ!!そろそろ限界のようだなァッ!!さっさと死んじまえよ、ほらほらほらほらほらほらァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ぐ、ぐゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………ッ!!」
レオナルドの目から、涙が零れ落ちた。
流石に限界だ。
むしろ、よくやった方だろう。
シャーキッドの人外じみた動きの多様さを前に、レオナルド以外の者なら数分ともたなかったに違いない。
それでも…………
「まだ……ッ!!まだだ…………ッ!!俺……はァ……ッ!!」
「カァーッカッカッカッカッカッカッカッ!!終わりだァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
だが…………
その時だった。
いざ、シャーキッドのドリルがレオナルドの身体に届こうとした…………その時────。
「まだよ、レオナルドッ!!」
「「…………ッ!?」」
突如として上から声が聞こえてきたかと思うと、空から火の玉が飛んできて、シャーキッドを襲った。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「あァ……ッ!?」
火属性"初級"魔法、『ファイアーボール』────。
突然の不意打ちだ。
攻撃に集中していたシャーキッドはファイアーボールをマトモに喰らい、吹き飛ばされる。
聞いた覚えのある声だった。
それはそうだ。
アレから、時間はそれほど経ってはいない────。
シャーキッドは"ソイツ"を視界に入れて…………歯をギシギシと嚙み鳴らす。
「クソが…………ッ!!この大事な局面で……ッ!!一体、何をしてくれてんだ、クソアマァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
そう、
ローリーだった。
ウルスとの戦いに勝利したローリーは、すぐさまこっちへ救援に駆け付けたのだ。
勝負に横槍を入れられて、シャーキッドも尋常じゃないくらいに怒り狂っている。
もう少しだったのだ。
あともう少しで…………このレオナルドを殺れたのに────。
「カァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
2人の声は街中に響き渡り、空気を震撼させ、灼熱の熱気を振り撒いた。
真っ向からのぶつかり合いだ。
シャーキッドは右腕を槍状に変えると、今までにないくらいに"大きくする"。
左腕の体積を、全て右腕に注ぎ込んだのだ。
相変わらずの摩訶不思議な変体能力────。
そして、
両腕分の力を1つにしたシャーキッドは、その途轍もなく巨大な右腕を掲げながら、それをとんでもない速度で回す。
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!
聞くだけで恐怖心が込み上がってくるような、巨大な回転音────。
まるで…………右腕が巨大なドリルにでもなったかのような姿だった。
さっきの背負い投げで学んだのだ。
体力は著しく消費するが、こうすればマトモに触れることすら叶わない。
レオナルドはそれに対し、スキルを発動した。
ユニークスキル『バーサクブロウ』────。
『使用回数』最後の一回だ。
拳は痛くて仕方がないが、今使っても後悔はない。
この技は、『バーサクモード』を除けば、レオナルドの最大の切り札なのだ。
3度目の正直────。
コレで拳がどうなろうと、もうどうでもいい。
レオナルドは何が何でも…………コレでシャーキッドにトドメを刺すつもりだった。
要は勝てば良いのだ。
勝ちさえすれば…………この世界には『ヒールポーション』やネシャスの『パーフェクトヒール』がある。
今はただ…………勝利だけを見て邁進する時────。
「殺殺殺殺殺殺ッ!!」
「死死死死死死ッ!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
両者の切り札は、おそろしく巨大で強大な衝撃を放ちながら、真正面から衝突し合った。
レオナルドが手数なら、シャーキッドは一撃入魂だ。
互いの力が拮抗しているのか、辺りは激しい地鳴りに脅かされ、空気がバリバリと音を立てて歪む。
2人の足下もクレーターのように陥没していき、それは周囲に強烈で熾烈で苛烈で猛烈な被害を及ぼした。
もう半径数キロくらいにいる人間は全員死んだだろう。
世界一傍迷惑な殺し合いだ。
巻き添えを食らった者は、もはや断末魔の叫びすら上げる暇もない。
有無を言わせず命を絶たれ、皆あっという間に死んでいくのだ。
この街が世界有数の広さでなければ、とうの昔に街は廃墟と化しているに違いない。
そして────。
2人の切り札によるせめぎ合いは、シャーキッドの方が優勢になりつつあった。
「ぐ……ッ!!ぐゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………ッ!!」
レオナルドから悔しそうな声が漏れる。
シャーキッドと違い、レオナルドのコレは3回目なのだ。
シャーキッドももう…………慣れてきている。
「カァーッカカカカカカカッ!!いくら強力な技だろうと、3度も喰らえばバカでも対処できるさッ!!恨むんなら、スキルとステータス頼みで何も工夫をしてこなかった、自分自身を恨むんだなァッ!!」
シャーキッドはそう言って、ドリルを押す力を強めた。
今度はレオナルドの方が防戦だ。
シャーキッドの言う通り、レオナルドは切り札と呼べるスキルが少なく、工夫もない。
今までは、それで何一つ問題などなかったのだ。
この世界では、大体この技を一度行うだけで決着がつく。
膨大で強靭なステータスを有するレオナルドは、それだけで十分すぎるほどに圧倒的強さを誇っていたのだ。
今のように何度も使わされることなんて、今までに一度たりとも経験したことがない。
「でも……ッ!!それでも俺はァ……ッ!!負けられないんだァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
天高く吠えるレオナルド────。
プライドが執着が復讐心が…………ここで無様に倒れることを良しとはしなかった。
レオナルドはこの世界で、『一位』なのだ。
世界中の冒険者たちの頂点────。
世界屈指の実力者たちの一角────。
自分を目指す人間も数多くいる中…………力が足りないからといって、素直にやられてやるわけにはいかない。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
レオナルドの拳の威力が上がった。
振り絞るかのような、最後の力────。
もう拳は感覚すら無くなっているだろうが、それでもここで止めるわけにはいかないのだ。
ただ触れているだけでもダメージを負うドリルを相手に、レオナルドはひたすら狂ったように拳を投げつける。
何度も……何度も何度も…………何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も────。
「だから……ッ!!しつけぇんだよッ!!」
シャーキッドは足で地面を踏みしめながら、そのドリルでレオナルドを突き刺さんとさらなる力を加えた。
正直、ここまで粘られるとは予想外だ。
そもそも、こんな巨大なドリルに連打で対抗しようなんて考える時点で、頭がおかしいとしか思えない。
それでも、
レオナルドはいくらドリルに攻撃を弾かれても尚、懲りずにずっとずっと攻撃を仕掛け続けてきていた。
流血の量も凄まじいはずなのに、その勢いは少したりとも衰えることがないのだ。
本当に…………『狂戦士』そのもの────。
しかし…………
「ぐ…………ッ!!」
その無茶にだって、当然限界はあった。
ステータスがいくら膨大でも、物理的に拳はどんどん破壊されていっているのだ。
シャーキッドの顔にも笑顔が浮かぶ。
あと…………もう少し────。
「カカァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!よくもたせちゃあいるが……ッ!!そろそろ限界のようだなァッ!!さっさと死んじまえよ、ほらほらほらほらほらほらァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ぐ、ぐゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………ッ!!」
レオナルドの目から、涙が零れ落ちた。
流石に限界だ。
むしろ、よくやった方だろう。
シャーキッドの人外じみた動きの多様さを前に、レオナルド以外の者なら数分ともたなかったに違いない。
それでも…………
「まだ……ッ!!まだだ…………ッ!!俺……はァ……ッ!!」
「カァーッカッカッカッカッカッカッカッ!!終わりだァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
だが…………
その時だった。
いざ、シャーキッドのドリルがレオナルドの身体に届こうとした…………その時────。
「まだよ、レオナルドッ!!」
「「…………ッ!?」」
突如として上から声が聞こえてきたかと思うと、空から火の玉が飛んできて、シャーキッドを襲った。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「あァ……ッ!?」
火属性"初級"魔法、『ファイアーボール』────。
突然の不意打ちだ。
攻撃に集中していたシャーキッドはファイアーボールをマトモに喰らい、吹き飛ばされる。
聞いた覚えのある声だった。
それはそうだ。
アレから、時間はそれほど経ってはいない────。
シャーキッドは"ソイツ"を視界に入れて…………歯をギシギシと嚙み鳴らす。
「クソが…………ッ!!この大事な局面で……ッ!!一体、何をしてくれてんだ、クソアマァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
そう、
ローリーだった。
ウルスとの戦いに勝利したローリーは、すぐさまこっちへ救援に駆け付けたのだ。
勝負に横槍を入れられて、シャーキッドも尋常じゃないくらいに怒り狂っている。
もう少しだったのだ。
あともう少しで…………このレオナルドを殺れたのに────。
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