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【第三章】亜人種
【第二十話】スバル ③
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「止め…………てッ!!止め……ッ!!」
スバルの懇願はとても必死だった。
激痛と死の恐怖でいっぱいいっぱいになっているのだ。
でも、止めない────。
むしろそれを加速させるかのように、カザルは突いて突いて突いて…………突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて、突き続ける。
ようやくここまできて、念願のターゲットを前にしながら情なんてかけるはずもないのだ。
実の弟だろうが何だろうが、カザルはホンの少したりとも…………手心を加えたりしない。
それどころか、こんなモノはまだ"序章"に過ぎなかった。
カザルがこの10年で抱えてきた憎しみや恨みは相当なものなのだ。
もちろんにして当然のこと…………"この程度"で済ますつもりなどない。
そして、
そんな中…………
「く、くそぅ…………ッ!!こうなったら……ッ!!」
スバルは何とか勇気を絞り出し、抵抗を試みようとしていた。
スキル『ソニックムーブ』────。
スバルは窓の方を見ると、スキルを発動しようと足に力を入れる。
逃げるつもりだ。
兵士たちの仇を討とうなどとは、スバルはカケラも思わない。
しかし…………
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
いざ発動しようとした、その瞬間────。
足に凄まじい痛みが走り抜けた。
スキルは当然、発動しない。
カザルに足を散々痛ぶられたせいで、発動しようにも力が足りないのだ。
ふと、カザルのケタケタと笑う声が聞こえる。
「おいおい、何をやってんだァ…………?俺が一体何のために、足を刺したと思ってんだよ」
『逃がさないため』────。
そう…………
カザルはここで、スバルを逃がすつもりなど毛頭なかった。
だから、
問答無用で足を突き刺したのだ。
万が一にも、逃亡なんて出来ないようにするために────。
スバルはガタガタと歯を鳴らしながら、自分の足を見る。
その有り様はひどく凄惨で、穴だらけのチーズ状態になっていた。
そこから血がドバドバと流れ出し、床に溜まって、赤い池のようになってしまっているのだ。
下手をすれば、もう立ち上がることすら出来ないかもしれない────。
カザルはスバルに向かっておもむろに歩み寄ると、スバルの髪をガッと引っ張って、その凶悪な顔を近づける。
「ひ…………ッ!!」
「さっきからずいぶんと慌ててばかりで、全然会話にならないじゃないか…………。せっかくの兄弟の対面なんだ。もう少しくらいは嬉しそうにしてくれてもいいと思うんだがなァ…………?こうまでビビられると、流石に悲しくなってくるぞ……」
カザルはそう言って、まとわりつくような…………ネットリとした殺気を放った。
スバルは息を切らしながら、カザルを睨み付ける。
血を流しすぎたからか、逆に冷静さを取り戻してきたのだ。
スバルは涙目になりつつも、カザルに尋ねる。
「"何で"…………"何で"、こんなことを…………?俺たちは、血を分けた兄弟だろう……?」
「は………………?」
『何で』────。
まさか、ここに来てそんなことを尋ねられるとは思わなかった。
分からないのだろうか…………。
カザルが…………恭司がどれだけ…………どれだけ、コイツを憎んでいるのか────。
「正直…………今さらそんなことを説明させられることになるとは夢にも思わなかったよ…………。数え上げるとキリがないさ。そもそも、俺を監禁するようトバルに言ったのは…………"お前"だろう…………?スバル────」
ドキリと、心臓が跳ね上がった。
"図星"だ。
嫌な汗が全身から溢れ出る。
何故…………カザルがそれを知っているのか────。
「監禁中に他の兵士たちが散々言っていたのさ。そもそも、別にそこまで隠してもいなかっただろう…………?兵士たちは皆知っているようだったぞ。牢屋で何度も何度も言われたもんさ。お前は捨てられたんだの、裏切られたんだの…………。ひでぇ言葉を幼い頃から何度だって浴びせかけられて、俺の心は毎日が満身創痍だったよ」
「ち、違うッ!!そ、それは、何かの間違いで…………ッ!!」
「間違いで"10年"も監禁されるかよッ!!」
スパン────ッ!!
カザルはスバルの左足首を斬り落とした。
鮮血が弾け飛び、付け根だけになったソレが、ポトリと床に落ちる。
血の池の中に浮かんだそれは、まるで離小島のようだ。
スバルは再び絶叫を上げる。
「あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
「あの10年は俺にとってひどく辛くて苦しい時間だったッ!!5歳の頃からだぞッ!?本来なら人生の中で最も楽しんだり成長したりしていたはずの時間を…………ッ!!俺はお前に奪われたんだッ!!何が『何で』だッ!!一人だけこんなにもスクスクと育ちやがってッ!!」
「だ、だから、違う…………んだッ!!俺はただ、父上が悩んでいるようだったから、それを後押ししただけで…………ッ!!」
「何も間違ってなんかいねぇじゃねぇかッ!!」
スパン────ッ!!
カザルは次に、残りの右足首ですら斬り落とした。
もう一人で立つこともできないだろう。
もはや血の池は"血の海"と成り果てているほどだ。
床に溜まる血液に厚みが出始め、スバルはさらに叫び散らす。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!い、痛いッ!!痛いイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
「あの男が俺をどうしようか迷っていたのは、単に俺とお前の仲が良かったからだッ!!大事な次男坊の遊び相手を奪うことに悩んでいたんだよッ!!そこにお前が後押しなんかしちゃあ、こうなるのは目に見えた話じゃねぇかッ!!」
「そん…………なッ!!なら、悪いのは父上じゃ……ッ!!」
「お前がそれを言うのかよッ!!」
スパン────ッ!!
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
カザルは今度は、スバルの左手首を斬り落とした。
血がさらに流れ出し、耳をつんざくほどの絶叫が響き渡る。
痛みと恐怖と絶望が部屋に充満し、血の臭いをムンムンと漂わせたこの光景は、正に地獄そのものだ。
カザルは、最後にスバルの右手首に刃を向ける。
両手両足を失えば、戦士としては完全にもう行き場を失うことになるだろう。
剣を握れなくなることはもちろん、『スキル』ですら失うことになるのだ。
そうなればもう…………
この世界では、ただ普通に生きていくことすら出来なくなる。
「や、やめ…………て…………。お願いだから…………やめて……くだ…………さい……」
スバルはもうほとんど虚になりながら、小さい声で懇願した。
出血の量が多すぎて、体中の力が抜けてきているのだ。
頭もおそらくは上手く動いていない。
ただ本能だけで、スバルはそれを阻止しようとしているのだ。
カザルは笑う。
「却下だ────」
スパン────ッ!!
「う、ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
呆気なく…………他愛なく…………すぐに手軽に簡単に躊躇いなく…………事は即座に行われた。
スバルに最後に残された五体ですら床に転がり、スバルは痛みと絶望に満ちた絶叫を上げる。
もう"終わり"だ。
両手両足を失い、自分一人ではもう何も出来なくなったスバルは、滝のように大粒の涙をこぼしながら、血の海にさらなる厚みを持たせる。
コレで残りは、"一つ"だけ────。
カザルは、スバルの"首"に刃を当てる。
「じゃあな、スバル…………。お前にはホント、最後の最後までガッカリだったよ…………。本当なら死ぬまでジックリ痛ぶる予定だったのに、イライラし過ぎて抑えきれなかった…………。来世では会わないことを切に願っているよ」
「ち、ちょっと…………ッ!!ちょっと待…………ッ!!」
「せめて…………ッ!!死ぬ時くらいは潔く死ねッ!!」
スパン────ッ!!
その瞬間…………
今までで最も激しく、血飛沫が部屋中に飛び散った。
赤い噴水のように噴き出した大量の血液は部屋をあっという間に真紅に染め上げ、着られた生首が床にグシャリと落ちて転がる。
誰が見ても分かるほどに、明らかであからさまで間違いなく圧倒的なほどに、完全なる『死亡』だ。
コレでようやくやっと…………"一人目"の復讐が完了したことになる。
残りは3人────。
幼馴染の『シャーロット』に、"母親"────。
そしてもちろん…………"父親"の『トバル・ロアフィールド』だ。
トバルは今は、この屋敷の3階にいるのだろう。
もちろん、これから行くに決まっている。
母親はどこにいるのかは知らないが、兎にも角にもまずはトバルだ。
優先順位はハッキリさせておかなくてはならない。
カザルは笑った。
たった2日にしては上々の滑り出しだ。
トバルの前にこの無様な死体でも持っていってやれば、一体アイツはどんな顔をするのだろう────。
楽しみすぎて、今から興奮が抑えられない。
「クククククク…………。クックックックックックックッ…………」
カザルは狂気に染まった笑顔を浮かべながら、首だけになったスバルの髪を掴んだ。
コンパクトで持ちやすい。
やはり、人を持ち運ぶなら首だけにするのが一番だ。
「じゃあ早速……」
だが…………
その瞬間だった。
いざ、カザルが動き出そうとしたその瞬間────。
パリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!
「…………ッ!?」
突如として…………
部屋の窓の割れる音が響いた。
ーーーーーーーーーーーー
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スバルの懇願はとても必死だった。
激痛と死の恐怖でいっぱいいっぱいになっているのだ。
でも、止めない────。
むしろそれを加速させるかのように、カザルは突いて突いて突いて…………突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて突いて、突き続ける。
ようやくここまできて、念願のターゲットを前にしながら情なんてかけるはずもないのだ。
実の弟だろうが何だろうが、カザルはホンの少したりとも…………手心を加えたりしない。
それどころか、こんなモノはまだ"序章"に過ぎなかった。
カザルがこの10年で抱えてきた憎しみや恨みは相当なものなのだ。
もちろんにして当然のこと…………"この程度"で済ますつもりなどない。
そして、
そんな中…………
「く、くそぅ…………ッ!!こうなったら……ッ!!」
スバルは何とか勇気を絞り出し、抵抗を試みようとしていた。
スキル『ソニックムーブ』────。
スバルは窓の方を見ると、スキルを発動しようと足に力を入れる。
逃げるつもりだ。
兵士たちの仇を討とうなどとは、スバルはカケラも思わない。
しかし…………
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
いざ発動しようとした、その瞬間────。
足に凄まじい痛みが走り抜けた。
スキルは当然、発動しない。
カザルに足を散々痛ぶられたせいで、発動しようにも力が足りないのだ。
ふと、カザルのケタケタと笑う声が聞こえる。
「おいおい、何をやってんだァ…………?俺が一体何のために、足を刺したと思ってんだよ」
『逃がさないため』────。
そう…………
カザルはここで、スバルを逃がすつもりなど毛頭なかった。
だから、
問答無用で足を突き刺したのだ。
万が一にも、逃亡なんて出来ないようにするために────。
スバルはガタガタと歯を鳴らしながら、自分の足を見る。
その有り様はひどく凄惨で、穴だらけのチーズ状態になっていた。
そこから血がドバドバと流れ出し、床に溜まって、赤い池のようになってしまっているのだ。
下手をすれば、もう立ち上がることすら出来ないかもしれない────。
カザルはスバルに向かっておもむろに歩み寄ると、スバルの髪をガッと引っ張って、その凶悪な顔を近づける。
「ひ…………ッ!!」
「さっきからずいぶんと慌ててばかりで、全然会話にならないじゃないか…………。せっかくの兄弟の対面なんだ。もう少しくらいは嬉しそうにしてくれてもいいと思うんだがなァ…………?こうまでビビられると、流石に悲しくなってくるぞ……」
カザルはそう言って、まとわりつくような…………ネットリとした殺気を放った。
スバルは息を切らしながら、カザルを睨み付ける。
血を流しすぎたからか、逆に冷静さを取り戻してきたのだ。
スバルは涙目になりつつも、カザルに尋ねる。
「"何で"…………"何で"、こんなことを…………?俺たちは、血を分けた兄弟だろう……?」
「は………………?」
『何で』────。
まさか、ここに来てそんなことを尋ねられるとは思わなかった。
分からないのだろうか…………。
カザルが…………恭司がどれだけ…………どれだけ、コイツを憎んでいるのか────。
「正直…………今さらそんなことを説明させられることになるとは夢にも思わなかったよ…………。数え上げるとキリがないさ。そもそも、俺を監禁するようトバルに言ったのは…………"お前"だろう…………?スバル────」
ドキリと、心臓が跳ね上がった。
"図星"だ。
嫌な汗が全身から溢れ出る。
何故…………カザルがそれを知っているのか────。
「監禁中に他の兵士たちが散々言っていたのさ。そもそも、別にそこまで隠してもいなかっただろう…………?兵士たちは皆知っているようだったぞ。牢屋で何度も何度も言われたもんさ。お前は捨てられたんだの、裏切られたんだの…………。ひでぇ言葉を幼い頃から何度だって浴びせかけられて、俺の心は毎日が満身創痍だったよ」
「ち、違うッ!!そ、それは、何かの間違いで…………ッ!!」
「間違いで"10年"も監禁されるかよッ!!」
スパン────ッ!!
カザルはスバルの左足首を斬り落とした。
鮮血が弾け飛び、付け根だけになったソレが、ポトリと床に落ちる。
血の池の中に浮かんだそれは、まるで離小島のようだ。
スバルは再び絶叫を上げる。
「あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
「あの10年は俺にとってひどく辛くて苦しい時間だったッ!!5歳の頃からだぞッ!?本来なら人生の中で最も楽しんだり成長したりしていたはずの時間を…………ッ!!俺はお前に奪われたんだッ!!何が『何で』だッ!!一人だけこんなにもスクスクと育ちやがってッ!!」
「だ、だから、違う…………んだッ!!俺はただ、父上が悩んでいるようだったから、それを後押ししただけで…………ッ!!」
「何も間違ってなんかいねぇじゃねぇかッ!!」
スパン────ッ!!
カザルは次に、残りの右足首ですら斬り落とした。
もう一人で立つこともできないだろう。
もはや血の池は"血の海"と成り果てているほどだ。
床に溜まる血液に厚みが出始め、スバルはさらに叫び散らす。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!い、痛いッ!!痛いイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
「あの男が俺をどうしようか迷っていたのは、単に俺とお前の仲が良かったからだッ!!大事な次男坊の遊び相手を奪うことに悩んでいたんだよッ!!そこにお前が後押しなんかしちゃあ、こうなるのは目に見えた話じゃねぇかッ!!」
「そん…………なッ!!なら、悪いのは父上じゃ……ッ!!」
「お前がそれを言うのかよッ!!」
スパン────ッ!!
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
カザルは今度は、スバルの左手首を斬り落とした。
血がさらに流れ出し、耳をつんざくほどの絶叫が響き渡る。
痛みと恐怖と絶望が部屋に充満し、血の臭いをムンムンと漂わせたこの光景は、正に地獄そのものだ。
カザルは、最後にスバルの右手首に刃を向ける。
両手両足を失えば、戦士としては完全にもう行き場を失うことになるだろう。
剣を握れなくなることはもちろん、『スキル』ですら失うことになるのだ。
そうなればもう…………
この世界では、ただ普通に生きていくことすら出来なくなる。
「や、やめ…………て…………。お願いだから…………やめて……くだ…………さい……」
スバルはもうほとんど虚になりながら、小さい声で懇願した。
出血の量が多すぎて、体中の力が抜けてきているのだ。
頭もおそらくは上手く動いていない。
ただ本能だけで、スバルはそれを阻止しようとしているのだ。
カザルは笑う。
「却下だ────」
スパン────ッ!!
「う、ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
呆気なく…………他愛なく…………すぐに手軽に簡単に躊躇いなく…………事は即座に行われた。
スバルに最後に残された五体ですら床に転がり、スバルは痛みと絶望に満ちた絶叫を上げる。
もう"終わり"だ。
両手両足を失い、自分一人ではもう何も出来なくなったスバルは、滝のように大粒の涙をこぼしながら、血の海にさらなる厚みを持たせる。
コレで残りは、"一つ"だけ────。
カザルは、スバルの"首"に刃を当てる。
「じゃあな、スバル…………。お前にはホント、最後の最後までガッカリだったよ…………。本当なら死ぬまでジックリ痛ぶる予定だったのに、イライラし過ぎて抑えきれなかった…………。来世では会わないことを切に願っているよ」
「ち、ちょっと…………ッ!!ちょっと待…………ッ!!」
「せめて…………ッ!!死ぬ時くらいは潔く死ねッ!!」
スパン────ッ!!
その瞬間…………
今までで最も激しく、血飛沫が部屋中に飛び散った。
赤い噴水のように噴き出した大量の血液は部屋をあっという間に真紅に染め上げ、着られた生首が床にグシャリと落ちて転がる。
誰が見ても分かるほどに、明らかであからさまで間違いなく圧倒的なほどに、完全なる『死亡』だ。
コレでようやくやっと…………"一人目"の復讐が完了したことになる。
残りは3人────。
幼馴染の『シャーロット』に、"母親"────。
そしてもちろん…………"父親"の『トバル・ロアフィールド』だ。
トバルは今は、この屋敷の3階にいるのだろう。
もちろん、これから行くに決まっている。
母親はどこにいるのかは知らないが、兎にも角にもまずはトバルだ。
優先順位はハッキリさせておかなくてはならない。
カザルは笑った。
たった2日にしては上々の滑り出しだ。
トバルの前にこの無様な死体でも持っていってやれば、一体アイツはどんな顔をするのだろう────。
楽しみすぎて、今から興奮が抑えられない。
「クククククク…………。クックックックックックックッ…………」
カザルは狂気に染まった笑顔を浮かべながら、首だけになったスバルの髪を掴んだ。
コンパクトで持ちやすい。
やはり、人を持ち運ぶなら首だけにするのが一番だ。
「じゃあ早速……」
だが…………
その瞬間だった。
いざ、カザルが動き出そうとしたその瞬間────。
パリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!
「…………ッ!?」
突如として…………
部屋の窓の割れる音が響いた。
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