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【第二章】基本技の習得

【第十一話】聖騎士 ④

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「来い────ッ!!返り討ちにしてやるぞッ!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッ!!」


立ち込める聖気に、押し寄せる殺意────。

ユーラットから並々ならぬ迫力が発され、威圧感が凄まじかった。

途轍もない圧迫感に、神の使徒が如き存在感だ。

圧倒的プレッシャーが身体を蝕み、並の者ならこれだけでも息を止めてしまいかねないほどに強いオーラを発している。

本気の気配だ。

ユーラットは恭司を視界に入れると、息を吸い込む。

感じる予感に…………嫌な気配────。

知っていた、分かっていた。

恭司もまた、剣を構える。

コレは────技を連続して畳み掛ける流れだ。


「喰らえ────。我が珠玉のスキルの数々を────ッ!!」


ユーラットはそう言って剣を振ると、剣から眩いばかりの光を放つ。

スキルだ。

剣技で圧倒することは諦めたのか、さっきまでとは明らかに雰囲気が違う。

突然始まった、第一個目のスキル────。

ユーラットがスキルを発動した瞬間、その身体は一瞬にして消え去り、気付けば恭司のすぐ目の前へと移動していた。

そこから即座に振り上げる太刀筋────。

流れるような刹那の一撃────。

スキル『閃光斬』だ。

ほとんど姿を消したように見せた所からの、急激なステップインと斬り上げ────。

初見ならこれで終わっていたかもしれない。

本来なら、奇襲や強襲で充分に相手を打ち倒せる技なのだ。

しかし…………


「その程度かァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


ガァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!


恭司はいざ斬撃がやって来ると、ユーラットの閃光斬を難なく剣で弾いた。

コレはギルバート戦の時にも見ているのだ。

一度見ている以上、対応など容易い。

だが…………


「コレで終わりなはずがないだろうッ!!」


ユーラットの攻撃は、やはり次のスキルへと繋がっていた。

続け様に放たれるは、案の定猛火の如く苛烈な追撃だ。

再び剣が光り、妙な風が吹く。

そして…………

その瞬間────。

恭司は後ろに吹き飛ばされていた。


「な…………ッ!?」


凄まじい勢いでいきなり後ろへ引っ張られる感覚────。

勢いも何もなかった所に、いきなりだった。

急にして、突然にして、唐突に────。

事実として、恭司をいきなり後ろへ吹き飛ばしたのだ。

正直、訳が分からない。

打たれたわけでも弾かれたわけでも何でもないのに、あの刹那でユーラットと目があった瞬間…………いつの間にか後ろへ吹き飛ばされていた。


(くそ…………ッ!!今のは……ッ!!)


予想外の状況に、頭が一瞬パニックになる。

コレは、先ほど出会い頭にももらったばかりの一撃だ。

一応、恭司もそこで一度は見ているはずなのだが、これに関しては原理も法則も何もかも一切分からない。

状況としては、ただただ一瞬────。

ユーラットの剣が突然光ったかと思うと、いきなり破壊的な衝撃波が放たれ、恭司は再び後ろの壁に打ち付けられていたのだ。

ユーラットは呟く。


「これぞ…………神の御技────」


聖騎士が故の上位スキル────。

スキル、『ホーリーインパクト』だった。

前振りも何もない、狙いをつけた相手を無慈悲に吹き飛ばすスキルだ。

因果関係を必要とせず、ただただ"当たったら吹き飛ばされる"という事実だけを残す技────。

恭司は壁に打ち付けられた所から即座に体制を整えると、次に備える。


「ふざけやがって…………ッ!!スキルってのは何でもアリかよッ!!」


恭司は体制を整えるが否や、その場から瞬動ですぐさま移動した。

何か嫌な予感がしたのだ。

途端…………


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


再度、さっきの衝撃波が恭司の元いた場所を襲う。

スキルの残滓だけが後に残り、恭司の頬と額に冷や汗が滴り落ちた。

あまりに馬鹿げた展開だ。

いくら上級職とはいえ、ここまでのスキルを持っているなどとは流石に予想していない。

あんなもの、完全に反則だ。

こんなスキルを使える時点で、中級職である『騎士』と差がありすぎる。


「畜生…………ッ!!」

「神の怒りを思い知れッ!!」


ユーラットはそう叫ぶと、ソニックムーブで恭司を追いながら幾度となくスキルを発動していった。

恭司はユーラットを囲むように瞬動で移動し続け、狙いを付けさせないよう撹乱する。

正確な狙いを付けられればそこで終わりなのだ。

目視なのか感覚でいいのかは分からないが、やろうと思った時点で発動可能なんてあまりにもチート技すぎる。


(くそ…………ッ!!何か突破口は……ッ!!)


恭司も流石に焦っていた。

秘術で身体を強化したとは言っても、恭司の身体はまだかつてと比べればまだまだなのだ。

スキル自体の威力はそこまでとはいえ、何度も壁に打ち付けられればダメージだって重なる。

剣技で上回っていたからといって、少し余裕ぶり過ぎたかもしれなかった。

急所にでも当たればそれまでなのだ。

恭司は瞬動で動き回りながら考えをまとめると、覚悟を決めて剣を携える。

活路は接近戦だ。

ユーラットが狙いを付ける前に、スピードと暗殺技で即座に始末をつける。

ユーラットと距離が近ければ近いほど、瞬動によるスピードでユーラットは恭司を目視しにくくなるはずなのだ。

撹乱のための円を縮めていくことさえ出来れば、いずれ相手の死角へと回り込むことができる。

だが…………


「させるかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


ユーラットは恭司が動きを変えた途端────。

即座に剣を地面に突き立ててきた。

見破られたのだ。

その瞬間に剣から眩い光が放たれ、それに応じてユーラットの周りの地面が広く発光していく。

まるで聖域でも作り出したかのような光景だった。

見るも明らかな広範囲攻撃だ。

周囲の地面一帯を、神々しい光が包み込んでいく────。
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