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第6章 脱走勇者は悪魔になる
121 帰還後の話し合い
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京終さんと鴫野を王城へ送った俺達は、一度アイリスの自宅へと戻った。
今までの一件で疲れた身体を癒すためだ。
同時にヘキサ公国内で起こった出来事や先程の追手の件について、みんなで話し合うためでもある。
「多分、会談が始まったばかりだから何とも言えないけど、シャルロット女王は壊滅したヘキサ公国を共和国という形での復興を考えてるみたいだよ」
「あれだけ壊滅したら、元に戻すのは不可能だからな……。 思い切って作り直す形を選択する可能性があると」
「それは仕方がないかも知れないね。 ボクは孤児だから割り切れるけど、クレアはね……」
「あ、そっか……。 クレアさんの両親が……」
まず、アイリスからゼイドラムのシャルロット女王がヘキサ公国だった場所を共和国としての復興を考えているとの話を聞く。
悪魔に魂を売った来栖と如月が、完膚なきまでに破壊したために、いっそ思い切って作り直そうというのがシャルロット女王の考えだろう。
向こうは王族も全て死んでしまってるので、公国という形ではもう残せないと言うのもあるだろうな。
エミリーとクレアには申し訳ないとは思ったが、エミリーに至っては仕方ないと割り切っている。
しかし、クレアはそうはいかないだろう。
悪魔退治の後で、ゼイドラムの調査隊からクレアの両親も変わり果てた遺体で発見されたと言う話を聞いた。
如月達にあのような事をされた上で、両親も殺されたのだ。
帰る場所まですべてを失ったのだから、ショックは計り知れないはずだ。
「ボクとしてはクレアも一緒にガイアブルクに移住して欲しいけど、決めるのはクレアだしね。 両親との思い出が詰まった場所だから、復興プロジェクトに行くかも知れないし」
「うん。 あの人がどう決めるかは、私達は干渉できないからね」
「一応、お父さんがクレアお姉ちゃんを始めとしたヘキサ公国出身だった冒険者に確認を取ってる最中だしね」
会談と並行して、クリストフ国王がクレアやリックさん達などのかつてヘキサ公国の冒険者だった者を呼んで、これからどうするのかを聞いているようだ。
エミリーの希望としては、クレアもここガイアブルクへの移住をしてほしいと願っているが、最終的に決めるのはクレアだし、彼女にとってヘキサ公国は両親との思い出も強かったはずなので、復興の方を選ぶこともありえる。
だが、俺達はクレアの考えに干渉するつもりはない。
「しかし、あいつら本当に厄介な事をしてくれたね。 安川もそうだけど」
「そうだね。 まさか、悪魔族を殺して食うとか、思い出しただけでも……」
ひなたが悪魔に魂を売った如月と来栖の事について怒りながら思い出していた。
由奈もそれを思い出したのか、身震いした。
あのサタンゴーレムを倒した立役者の由奈でさえ、あいつらの悪行は、不快だったのだろう。
「クレアを失禁させた位だし、相当狂ってたね、あいつら」
エミリーも友人のクレアを失禁に追い込んだあいつらに対する怒りが抑えきれない。
倒してもなお、奴らの悪行はなかなか消えないのだ。
「厄介と言えば、今後はヤスカワという存在だね。 先ほどの追手は、二体ともホムンクルスだったんでしょ」
「ああ。 俺が奴と戦ってる最中に違和感を感じただけでなく、当時戦ってる奴と同様の気配を茂みから感じたんだ」
「それで、七絵ちゃん達を諭し、シンシアさんをそこへ向かわせたんだね」
「そうだ。 結果的に予感は的中してしまったけどな」
そう。
当時の俺は、目の前の安川と戦っていた最中に目の前の安川と同じ気配を茂みから感じたのだ。
なので、即座に斬り伏せて、後輩を諭してからシンシアさんを察知先の茂みへ向かうように頼んだのだ。
結果的に予感は的中したのだが。
「しかし、委員長の言うように、安川がガルタイトを実効支配している現状は看過できないけど……」
「何だかんだで私達は後手に回ってるからね。 これからもそうなるかもね。 聞いた話じゃあの男、厄介な方向に頭がキレる印象だったし」
「うーん……」
アイリスの言う通り、安川の行動は看過できないのだが、既に後手に回り始めているのが現状だ。
といっても、今の俺達に奴の奸計を防ぐ手立てがないのも響いている。
つまり、俺達は奴が動き出した時にその出鼻を挫く以外に方法はないのだ。
「あ、水晶玉が。 どうしたの、お父さん?」
机に置いてあった水晶玉が光ったので、アイリスが応対していく。
通信相手はクリストフ国王だ。
アイリスと国王が話をしている所で、アイリスが水晶玉を持って俺の所に来た。
『そこにアキト君もいるな? 実はクレア君が君に話があると言ってきた。 王城に来てもらえないだろうか?』
「クレアが……?」
「国王様、ひょっとして?」
『そうだ、エミリー君。 クレア君もここガイアブルクの国民になると言う意思を示してきた。 と同時にアキト君と話したいと』
「なるほど、そういう事だね」
「察した。 そうだったな……クレアも……」
クレアはガイアブルクの国民になるという意思を示したそうだ。
同時に俺に話があるという。
エミリーも既に気付き、俺も察したのだ。
クレハ共和国解放戦の後のエミリーと同様、クレアも俺への想いが強かったんだと。
「分かりました。 王城へ行きます」
『悪いね。 クレア君には伝えておくよ』
「お願いします」
そう言って一旦国王様は通信を切った。
その後で俺は立ち上がり、ドアに手を掛けると同時にみんなにこう言った。
「王城に行ってくる。 多分、クレアをここに迎え入れると思う」
「うん、いってらっしゃい♪」
「クレアの想いも応えてあげてね、アキトくん」
「ああ」
ひとまず俺は、クレアがいるという王城へ向かう事になったのだ。
今までの一件で疲れた身体を癒すためだ。
同時にヘキサ公国内で起こった出来事や先程の追手の件について、みんなで話し合うためでもある。
「多分、会談が始まったばかりだから何とも言えないけど、シャルロット女王は壊滅したヘキサ公国を共和国という形での復興を考えてるみたいだよ」
「あれだけ壊滅したら、元に戻すのは不可能だからな……。 思い切って作り直す形を選択する可能性があると」
「それは仕方がないかも知れないね。 ボクは孤児だから割り切れるけど、クレアはね……」
「あ、そっか……。 クレアさんの両親が……」
まず、アイリスからゼイドラムのシャルロット女王がヘキサ公国だった場所を共和国としての復興を考えているとの話を聞く。
悪魔に魂を売った来栖と如月が、完膚なきまでに破壊したために、いっそ思い切って作り直そうというのがシャルロット女王の考えだろう。
向こうは王族も全て死んでしまってるので、公国という形ではもう残せないと言うのもあるだろうな。
エミリーとクレアには申し訳ないとは思ったが、エミリーに至っては仕方ないと割り切っている。
しかし、クレアはそうはいかないだろう。
悪魔退治の後で、ゼイドラムの調査隊からクレアの両親も変わり果てた遺体で発見されたと言う話を聞いた。
如月達にあのような事をされた上で、両親も殺されたのだ。
帰る場所まですべてを失ったのだから、ショックは計り知れないはずだ。
「ボクとしてはクレアも一緒にガイアブルクに移住して欲しいけど、決めるのはクレアだしね。 両親との思い出が詰まった場所だから、復興プロジェクトに行くかも知れないし」
「うん。 あの人がどう決めるかは、私達は干渉できないからね」
「一応、お父さんがクレアお姉ちゃんを始めとしたヘキサ公国出身だった冒険者に確認を取ってる最中だしね」
会談と並行して、クリストフ国王がクレアやリックさん達などのかつてヘキサ公国の冒険者だった者を呼んで、これからどうするのかを聞いているようだ。
エミリーの希望としては、クレアもここガイアブルクへの移住をしてほしいと願っているが、最終的に決めるのはクレアだし、彼女にとってヘキサ公国は両親との思い出も強かったはずなので、復興の方を選ぶこともありえる。
だが、俺達はクレアの考えに干渉するつもりはない。
「しかし、あいつら本当に厄介な事をしてくれたね。 安川もそうだけど」
「そうだね。 まさか、悪魔族を殺して食うとか、思い出しただけでも……」
ひなたが悪魔に魂を売った如月と来栖の事について怒りながら思い出していた。
由奈もそれを思い出したのか、身震いした。
あのサタンゴーレムを倒した立役者の由奈でさえ、あいつらの悪行は、不快だったのだろう。
「クレアを失禁させた位だし、相当狂ってたね、あいつら」
エミリーも友人のクレアを失禁に追い込んだあいつらに対する怒りが抑えきれない。
倒してもなお、奴らの悪行はなかなか消えないのだ。
「厄介と言えば、今後はヤスカワという存在だね。 先ほどの追手は、二体ともホムンクルスだったんでしょ」
「ああ。 俺が奴と戦ってる最中に違和感を感じただけでなく、当時戦ってる奴と同様の気配を茂みから感じたんだ」
「それで、七絵ちゃん達を諭し、シンシアさんをそこへ向かわせたんだね」
「そうだ。 結果的に予感は的中してしまったけどな」
そう。
当時の俺は、目の前の安川と戦っていた最中に目の前の安川と同じ気配を茂みから感じたのだ。
なので、即座に斬り伏せて、後輩を諭してからシンシアさんを察知先の茂みへ向かうように頼んだのだ。
結果的に予感は的中したのだが。
「しかし、委員長の言うように、安川がガルタイトを実効支配している現状は看過できないけど……」
「何だかんだで私達は後手に回ってるからね。 これからもそうなるかもね。 聞いた話じゃあの男、厄介な方向に頭がキレる印象だったし」
「うーん……」
アイリスの言う通り、安川の行動は看過できないのだが、既に後手に回り始めているのが現状だ。
といっても、今の俺達に奴の奸計を防ぐ手立てがないのも響いている。
つまり、俺達は奴が動き出した時にその出鼻を挫く以外に方法はないのだ。
「あ、水晶玉が。 どうしたの、お父さん?」
机に置いてあった水晶玉が光ったので、アイリスが応対していく。
通信相手はクリストフ国王だ。
アイリスと国王が話をしている所で、アイリスが水晶玉を持って俺の所に来た。
『そこにアキト君もいるな? 実はクレア君が君に話があると言ってきた。 王城に来てもらえないだろうか?』
「クレアが……?」
「国王様、ひょっとして?」
『そうだ、エミリー君。 クレア君もここガイアブルクの国民になると言う意思を示してきた。 と同時にアキト君と話したいと』
「なるほど、そういう事だね」
「察した。 そうだったな……クレアも……」
クレアはガイアブルクの国民になるという意思を示したそうだ。
同時に俺に話があるという。
エミリーも既に気付き、俺も察したのだ。
クレハ共和国解放戦の後のエミリーと同様、クレアも俺への想いが強かったんだと。
「分かりました。 王城へ行きます」
『悪いね。 クレア君には伝えておくよ』
「お願いします」
そう言って一旦国王様は通信を切った。
その後で俺は立ち上がり、ドアに手を掛けると同時にみんなにこう言った。
「王城に行ってくる。 多分、クレアをここに迎え入れると思う」
「うん、いってらっしゃい♪」
「クレアの想いも応えてあげてね、アキトくん」
「ああ」
ひとまず俺は、クレアがいるという王城へ向かう事になったのだ。
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