サモンブレイブ・クロニクル~無能扱いされた少年の異世界無双物語

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
上 下
114 / 140
第6章 脱走勇者は悪魔になる

114 再会と解呪依頼

しおりを挟む
 ガイアブルク領の西部に位置し、ヘキサ公国東部との境界線付近に位置している町【エルオー】。
 ヘキサ公国の国民との交流も多く宿屋が多いので、今や宿泊の町として有名だ。

 その町に着いた俺達は、専用の宿を取って一息を入れた。
 その後、ヘキサ公国出身の冒険者達が泊まっているという多くの宿屋の中の一つ、【ウサギ亭】に俺達はやってきた。
 カイゼルさんやリックさん達がここにいるという事らしい。

 アイリスがフロントに事情を話すと、スタッフは彼らが利用している三つの部屋を案内してくれた。
 三階の303号室、304号室、305号室……。
 この三つの部屋をリックさん達が使っているという。
 まずはクレアとエミリーをリックさん達に会わせることだ。
 リックさんとリリアさんは現在303号室にいるので、ノックをしてみた。
 そしてドアが開いて、顔を覗かせて来た時に、クレアとエミリーの存在に目を見開いた。

「クレアさん!」

「それにエミリーも……」

「うん、何とか……戻って来た」

「お久しぶりです、リックさんにリリアさん」

「クレアさん! 無事に生きててくれて良かったです!」

 クレアの無事を確認したリリアさんがクレアに抱きついて来た。
 よほど心配だったんだろうな。

「エミリーもあれからどうだ?」

「充実してます。 アキト君達のおかげで」

「そうか、それは何よりだよ」

 一方で、エミリーはリックさんと話をしていた。
 先輩としてエミリーが心配だったのだろうな。

「クレアお姉ちゃんの件については何とかなったね」

「そうだな。 あの喜びようからして相当心配してたんだろうし」

「確かにエミリーさんとクレアさんって、基本リックさん達とパーティを組んでたみたいだしね」

 俺とアイリスとひなたがひそひそ話で二人の事を話していると、クレアさんがこっちに来た。

「アキトさん、皆さん。 クレアさんを助けていただきありがとうございます」

「あ、い、いえ……」

 リリアさんが俺達に頭を下げた。
 なんだかんだで俺は感謝されるのには慣れていないから、上手くは返せない。

「こちらからもお礼を言わせて欲しい。 クレアを助けてもらったからな」

「いえ、私達も父……いや、クリストフ国王から報告を受けてすぐに行ったので……」

 リックさんからも感謝された。
 クレアはエミリーと一緒にみんなに色々話しているが、もう一つの目的も遂行しないといけない。

「お話の所申し訳ないですが、カイゼルさんの件で……」

「ああ、そうだった。 彼は未だに意識がない状態でね」

「回復魔法で体力は回復してはいますが……、意識がずっと戻らないんです。 もしかしたら呪いの類かも知れないので解呪の札も使ったのですが」

 やはり解呪の札は使っていた。
 あれは最低三日はかかる代物だ。
 俺が解呪のスキルを専用の札に注ぎ込んでも最低三日の壁を崩せなかった。

「お兄ちゃん、もしかして睡眠の呪いかもしれないね」

「召喚されて間もない時に俺が受けた奴か?」

「うん、実際にサーチしてみればいいけど多分そうだよ」

 アイリスが睡眠の呪いなのではないかと推測していた。
 それは俺が召喚されて間もない時、『無能』扱いされた時に今は亡きアンから受けた呪いなのだ。
 人によっては昏睡状態のまま死に至る危険な呪いでもあるのだが、俺は無事に目を覚ますことができたのだ。
 そうなると一応、確認をして解呪しないといけないな。

「リックさん、リリアさん。 カイゼルさんが寝ている部屋に入ってもいいですか?」

「アキトさん、解呪できるんですか?」

「ええ、【呪術師】を極めた時に解呪のスキルも使えるようになってるので」

「なんと……!!」

「そうだったのですか!?」

 俺が解呪のスキルを使えることにリックさんやリリアさんは驚いていた。
 そういえば、解呪スキルの事については言っていなかったかも知れない。

「盗賊集団【漆黒】戦の時は魔封じの呪いのスキルを使える事しか言ってなかったよね? ボクは由奈ちゃんを助ける時に解呪の魔法を使ったのは遠目で見たけど」」

「あの時か……」

「え、え?」

「由奈ちゃんはあの時ガルタイトにこもってたからね。 知らないのはしょうがないよ」

 俺の【呪術師】に関する話で、エミリーがかの盗賊集団の件を思い出したようだ。
 ただ、由奈はその当時はガルタイトにいたので、あまりついていけてない。
 そこにひなたがフォローしてくれたのは助かったのだが。

「まぁ、とにかく今の俺は解呪のスキルが使えるんで……。 カイゼルさんの解呪をしてもいいでしょうか?」

「ああ、ぜひお願いするよ!」

「こちらとしても願ってもない事です! ぜひ、カイゼルさんを助けてください!」

 リックさんとリリアさんにせかされる形で俺はカイゼルさんが眠っているという305号室に入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...