上 下
113 / 140
第6章 脱走勇者は悪魔になる

113 悪魔退治を終えて

しおりを挟む
「エミリー、アキトくん……!」

「クレア……!」

 俺達が如月と来栖が【融合フュージョン合体コンバイン】して生み出したサタンゴーレムを倒して首都の入り口まで戻った所でクレアが俺とエミリーがいる場所に駆けつけてきた。
 新しい衣装によってかなり可愛くなっていた事で一瞬ドキッとした。
 だが、クレアは構わず俺に突進して抱きついて来た。

「おっとと……」

 少し衝撃でよろけそうになったが、何とかクレアを受け止める。

「ありがとう……アキトくん…! 私を……助けてくれて…」

「クレア……、でも……」

「あの時に……来てくれただけでも……十分。 下手したら……、それ以上の事を……されていたかも知れないから……」

 あそこで俺が来栖をぶん殴ってなければ、アレ以上の事をやっていたという事に如月たちの堕ちっぷりは度をこえていたというのだろう。
 それだけでも腹が立ってきたが、クレアの手前なので抑えることにした。

「とにかく、仲間の所に戻りましょう。 きっとクレアさんの無事を祈ってるはず」

「うん」

「おーい、みんなー、バスに乗って行くよー」

 いつの間にか他のメンツがバスに乗っていたようだ。
 アイリスの呼ばれて、慌ててバスに乗って行く。
 一応、悪魔退治は終わったけど……、ヘキサ公国があの様子じゃ復興は厳しいかもしれない。
 クレアはヘキサ公国出身だし、エミリーも今はガイアブルクの国民だが、生まれはヘキサ公国だから、少なからずショックを受けているはずだしな。
 俺達を乗せた軍用バスは、一路中間拠点を経由してガイアブルク領内の西部の町【エルオー】に向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「クレアはバスは大丈夫か?」

「少し……、辛いかな……? 何せバスに……乗るのは初めてだし……」

「確かにこの軍用バスはそういった方面を考慮してないからな」

「でも、クレアは酔い止めの薬は苦手なんだよね」

「うん……」

 バスに酔いやすいんだけど、酔い止めの薬はクレアは苦手なのか。
 これは困ったな。
 そう思っていたら、クロウ中佐があるものを用意してくれた。

「そう言うと思って、こっちも用意しておいた。 君はこれを食べるといい」

「それは?」

「酔い止めの効果を持つクッキーだ。 酔い止め薬と同じ効力だから、苦手な君でもいけるはずだ」

「あ、ありがとうございます……。 ん、美味しい……」

 酔い止めの効果を持つクッキーをクロウ中佐から渡されたクレアはそれを美味しそうに食べていた。
 その様子を見ていた俺はひとまず安心した。

「問題は他の冒険者達だね」

「ああ、彼らはなんとかガイアブルク領の【エルオー】まで逃げ切れたみたいだが、何人かは重傷ならびに意識不明の重体になっているそうだ」

「悪魔の力を得た奴らに歯が立たなかったそうですね」

「そうだ。 何せ、あの『ヘキサの大熊』と呼ばれたカイゼルでさえ歯が立たなかっただけでなく、どうも呪いを掛けられたという情報も入ってきている」

「カイゼルさんが!?」

「あ、あぁ……」

 ひなたがクロウ中佐に食って掛かってきた。
 それだけ信じられないような内容だったからだ。
 クレアもエミリーも目を見開いたまま固まっているし、俺でも信じられなかった。
 あのカイゼルさんが呪いで……!?

「お兄ちゃん、呪いならお兄ちゃんやシンシアお姉ちゃんの解呪でいけるんじゃない?」

「そうか、胡桃やアイリスはまだ【呪術師】を極めている最中だからまだ解呪できないんだっけ」

「うん。 今の状況ではまだ使えるのはお兄ちゃんとシンシアお姉ちゃんくらいだけどね」

「確かに、解呪ならば私やアキトさんに掛かれば可能ではありますね。 呪いの内容によりますが」

 確かに、アイリスの言う通り今のメンツの中で解呪が出来るのは俺とシンシアさんのみ。
 胡桃やアイリスも【呪術師】の素質は持っているが、まだ極めるに至っていないのだ。
 カイゼルさんが掛けられた呪いの内容次第で、シンシアさんとの二人掛かりでの解呪も視野に入れるべきだろう。

「もうすぐ【エルオー】に到着する。 そこで一息を入れると同時にヘキサ公国出身の冒険者とも会って行こう」

「クレア、エミリー、もうすぐリックさん達に再会できるな」

「うん。 私が……無事なのを伝えないと」

「ボクもカイゼルさんが心配だしね。 当時はよくしてくれた先輩だから」

「よし、みんな降りる準備をしよう。 クロウ中佐、その後は?」

「一息入れた後、ガイアブルク城下町まで行こう。 彼らをどうするかをクリストフ国王殿と相談しないといけないからな」

「そっか、ヘキサ公国はほぼ壊滅状態だもんね……」

 由奈がもの悲しそうにつぶやいた。
 ヘキサ公国は如月と来栖によって壊滅状態になっている。
 復興も難しいのかもしれないので、今後のヘキサ公国出身の冒険者達はどういう道を取るべきかは今後の相談次第だ。

 軍用バスは、【エルオー】の町の門の前に到着し、全員降りてまずは宿屋へ向かうことにした。
 その後にヘキサ公国出身の冒険者達に会いに行く事になる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

天才高校生は異世界で無双する!〜チートスキルと知識チートで異世界を変革するようです〜

ピョンきち
ファンタジー
季節は夏、主人公森崎健太は夏休み家族とともに豪華クルーズ客船に乗って世界一周旅行をしていたが、何者かにより船に時限爆弾が設置されていて、爆発。船底に穴が空き運悪く沈没。目を覚ますと目の前には女神を名乗る幼女がいて… 「君は死んじゃったから別の世界で生きてもらうね!」 見た目はそのまま、頭脳もそのまま、身体能力超強化!? これは世界に影響を与えるある一人の少年の 物語だ。 【読者様へのお願い】 初作品です。ご意見ありましたらビシバシ感想来てください!率直な意見がこの作品をより良くすることができます。よろしくお願いします! 僕の作品『前世が官僚』もよろしくお願いします! 『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿させていただいております。そちらもお願いします。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者

月風レイ
ファンタジー
 神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。  そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。  そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。  聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。  そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。  ストレスフリーファンタジー。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...