上 下
111 / 140
第6章 脱走勇者は悪魔になる

111 悪魔退治その3

しおりを挟む
 クロウ中佐の号令によって俺達は一斉にサタンゴーレムに攻撃を仕掛ける。

「【インフェルノバースト】!!」

 アイリスが後方から超級の火属性魔法を放った。
 ダメージはかなり与えることは出来ている。

「クロスブレード!!」

そしてひなたが、アイリスの後ろから跳躍して素早くクロスするような斬撃で奴の左腕……、俺達の視点からは右側にあたる腕を斬り落とす。

「ウオォォォォっ!!」

「危なっ!!」

 直後、片手でサタンゴーレムが反撃に出る。
 剛腕がひなたを襲うが、上手く回避できたようだ。

「え……!?」

「腕が……再生した!?」

 ひなたによって斬り落とされた腕は、瞬く間に再生されて元に戻った。
 それを見たクリスタも驚きの様子を見せている。

「信じられぬ! なんという再生力!!」

「アイリスちゃんに焼かれた部分もいつの間にか回復している……!」

「ひるむな! 何度でも仕掛けるんだ!!」

「は、はいっ…!!」

 とてつもなき再生力に畏怖するが、クロウ中佐の再度の号令でもう一度攻撃を仕掛ける。
 俺達の攻撃は通用する。
 しかし、それを上回る再生力が少しずつ、俺達の体力と精神を削っていく。

「くそっ、このままじゃジリ貧だ……!!」

「うん、みんな疲れ始めている……! なのに相手は無尽蔵な体力持ちだもんね……」

 あまりの再生力に俺とエミリーが少し弱気になる。

「でも、諦めちゃいけないよ! 何か打開策はあるはずだから」

「ええ、それまでは何度でも一斉に仕掛けましょう!」

 ひなたやシンシアさんが気丈に俺達を励ましてくる。
 それによって持ち直した俺達は、再度奴に攻撃を仕掛けた。

「【エレクトリッガー】!!」

「【ルミナスバースト】!!」

「アクセルザッパー!!」

「削岩撃!!」

「連撃【光刃】!!」

「こちらもバズーカで仕掛けるぞ!」

「バハさん…!!」

 疲弊してるにも関わらず、俺達は大技を一斉に繰り出す。
 普通なら致命傷のダメージを与えられてるはずが、やはり奴の再生力に負けてしまう。
 その時だった……。

「グアアァァァァっ!?」

 何かの攻撃が、奴の右の玉……、俺達の視点からは左側にある一番端の玉に当たった瞬間苦しみだす。
 玉は傷がつかなかったものの、当たっただけで苦しむとは……。

「由奈お姉ちゃん……!?」

「え?」

 アイリスが先ほどの攻撃を行った位置を見てみたら後方寄りに由奈が魔法の弓矢を引いていたころが分かった。
 ひなたも俺達もつられて由奈の方を向く。

「さっきの攻撃は由奈がやったのか?」

「うん、もしかしてと思って私達から見て一番左の玉を狙ったの。 ゴーレムと名を持つのならと……」

「え、それで!?」

 ひなたが由奈の行動に驚く。
 由奈が俺達から見て一番左の玉を狙った理由……、彼女はシンシアさんが説明する際に聞いたある単語を思い出したからだろうが……。

「由奈があそこを狙ったのはもしかして……?」

「暁斗くん、【鷹の目ホークアイ】で5つの玉をよく見て」

 俺は由奈に言われるがままに、【鷹の目ホークアイ】を使ってサタンゴーレムの胸にある5つの玉を見る。

(文字がうっすらと見える……。 これは確かに【鷹の目ホークアイ】でないと分からないか……。 それにこれは……?)

 すると、奴の5つの玉には文字がうっすらと刻まれていた。
 確かにそれは【鷹の目ホークアイ】を使わないと分からないな。

「アキト君、由奈ちゃん、何か分かったの?」

「ああ、どうやら俺達の視点から見て一番左から『E』、『M』、『E』、『T』、『H』って刻まれてたな」

「え? それで攻略できるの?」

「そうか、そういうことか!」

「え、え!?」

 アイリスが疑問を呈するが、ひなたはすぐに理解できた。
 だが、クリスタやエミリーはアイリス同様に分からないままのようだ。

「ひなたお姉ちゃんどういう事!? あの文字って意味があったの!?」

 俺と由奈が見たものの意味をひなたが理解したことにアイリスが驚いて聞いてきた。
 戦闘中だが、ひとまず説明する事に。

「俺達の世界での言語の一つなんだ。 『E』、『M』、『E』、『T』、『H』と書いてエメトと呼んでいて、意味は『真理』だ。 そして奴がゴーレムの類なら…」

 俺がアイリスに説明したところで、ひなたもフォローするように説明役に入る。

「つまり最初の『E』の書かれた玉を壊すことで『M』、『E』、『T』、『H』……、つまり『死』を意味する言葉にする事で奴は崩壊するんだよ。 今のアレも悪魔の姿をしたゴーレムみたいだからね」

「そういう事だ! みんな、俺達から見て左側の一番端の玉を狙うんだ!」

「つまり、それを破壊すれば奴に勝てるという事か」

「なら、やりようはあります! 由奈さんやアキトさんが作った手立てを無駄にさせないためにも、全力でいきましょう!!」

 由奈の攻撃がきっかけで攻略の手立てが見えた事でクロウ中佐もシンシアさんも気力を取り戻す。

「胡桃もアルト達もやれるな?」

「ん、由奈ねぇのおかげでがんばれる」

『ああ、からくりが分かったのだ。 奴の攻撃を凌ぎながら仕掛けよう』

『ええ、ここが踏ん張りどころですわ』

「なら、我々から見て左側の一番端の玉を集中して仕掛けるんだ! 疲弊をしている以上、速攻でやるのだ!」

「「「了解!!」」」

 こうして、俺達の反撃が今始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【第2部完結】勇者参上!!~究極奥義を取得した俺は来た技全部跳ね返す!究極術式?十字剣?最強魔王?全部まとめてかかってこいや!!~

Bonzaebon
ファンタジー
『ヤツは泥だらけになっても、傷だらけになろうとも立ち上がる。』  元居た流派の宗家に命を狙われ、激戦の末、究極奥義を完成させ、大武会を制した勇者ロア。彼は強敵達との戦いを経て名実ともに強くなった。  「今度は……みんなに恩返しをしていく番だ!」  仲間がいてくれたから成長できた。だからこそ、仲間のみんなの力になりたい。そう思った彼は旅を続ける。俺だけじゃない、みんなもそれぞれ問題を抱えている。勇者ならそれを手助けしなきゃいけない。 『それはいつか、あなたの勇気に火を灯す……。』

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

処理中です...