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幕間の章 海水浴と結婚式

98 魔族領での結婚式②

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「え…?」

 自分を呼ぶ女の子の声に、七絵と胡桃が振り向く。
 するとそこには、ウェディングドレスを身に纏った少女が目に涙を浮かべていた。

「春菜っ!? 春菜なのね!?」

「はるちゃん……!」

「そうだよっ、七絵ちゃん、胡桃ちゃん……!!」

「春菜……!!」

 安川によって分断された三人娘の一人だろうか?
 七絵が春菜という子に抱きついていた。

「無事で……無事でよかったよ……!」

「ごめんね、七絵ちゃん……。 安川の監視もあって七絵ちゃん達と話せなくて……。 胡桃ちゃんもごめんね」

「悪いのは安川だよ……! 自分の好みでクラスを分断させたんだから……!」

「んっ!」

 安川っていう奴、クラスを分断させただけでなく、別のグループとの話すら禁止にしていたのかよ。
 よっぽど自分だけの世界を作りたかったのか…?
 あいつらよりはるかにクズっぷりだな。
 よく見ると、他の娘もウェディングドレス姿で他の後輩達と再会を喜んでいる。
 胡桃も七絵と一緒に春菜という子と話している。

 その時……。

「くーるーみーちゃぁぁぁん!!」

「むぎゅっ!?」

 突如、別のウェディングドレス姿をした娘が胡桃に抱きついた。
 あまりに突然だったので、俺達は驚いていた。

「胡桃ちゃんも無事だったんだねー!! よかったよー!!」

「むにゅー!?」

「ちょっ、柚子ゆず!! やりすぎ!! 胡桃が苦しんでる!!」

 柚子と言われた子が胡桃を抱きついてきたようだが、どうもその強さがやばいらしい。
 胡桃がどうも苦しそうで、ジタバタしている。

「にぃ~、たしゅけて……」

「あ、あー、その辺にしてやってくれ。 胡桃が苦しんでいるから」

「あ、ご、ごめんなさい!!」

 余りの苦しさに胡桃が俺に助けを求めて来たので、そろそろ離してあげるように促す。
 自重しないままで周囲が見えていなかったようで、我に返った瞬間に柚子は表情を赤らめながらゆっくり胡桃を話した。

「大丈夫だったか?」

「うみゅー、くるしかった……」

 柚子から解放された胡桃は俺にしがみつく。
 思わず俺は胡桃を抱きしめて頭を撫でる。
 しかし、ここまでする程に胡桃にも会いたがってたのか?

「まぁ、安川のせいで来宮さんとも話をする事すらさせてもらえませんでしたから」

「瑠奈……」

 さらに別のウェディングドレス姿をしたクールな少女がこっちに来た。
 瑠奈と言われた少女もあの三人娘の一人なのだろう。

「七絵も久しぶり。 それで、貴方が暁斗さんですか?」

「ああ、俺が 暁斗あきとだ」

「私は奥井おくい 瑠奈るなと言います。 来宮さんを大事にしていただいてありがとうございます」

「そちらこそ、奴らに駆り出されたと七絵から聞いたよ。 無事でよかった」

「ええ、色々ありましたから」

 瑠奈という少女から色々と話をした。
 やはり、安川によって無理やり討伐部隊に組み込ませられたようだ。
 彼女曰く、ガルタイト城内において柚子と共に安川の考えに逆らったかららしい。
 酷い話だ、全く。

「それで、もうすぐ前夜祭だけどみんなあの会場に行くのか?」

「いいえ、胡桃ちゃんみたいに人混みが苦手な子もいるので、その人達のための大部屋にも魔導モニターとやらを設置してモニター越しに見れるようにしています」

「私達も順番でそこに行きますよ。 まずは私こと宿毛すくも 春菜はるなが一緒にそこへ行きますから」

「胡桃の為にか、悪いな」

「いえいえ、さっき七絵ちゃんから聞きましたが、胡桃ちゃんは暁斗先輩のお嫁さんの一人になったんですよね?  あの子を大事にしてくださってるので」

「あの毒家族のせいで、胡桃ちゃんはこんな事になっちゃったんだし」

「ん?」

 胡桃が人混みが苦手なのは聞いたが、その理由が毒親とかだったりするのか?

「暁斗さんにも理由を話しておいた方がいいでしょうね。 七絵さん、一緒に大部屋の方に行ってくれる? あなたが一番よく知ってると思うから」

「うん」

 その理由は、大部屋に着いた時に話すらしい、七絵が。
 という事は、七絵が胡桃の家族に関わっているのだろうか。

「じゃあ、私とひなたお姉ちゃん、クリスタちゃんで会場の方に行くよ。 大部屋の方にも何人か来ると思うけど」

「分かった」

 そこで俺達の方も分担することになり、アイリスとひなたとクリスタが会場の方に向かい、残りは胡桃と一緒に大部屋に向かった。
 なお、イリアさんに聞いてみたら、アルト達メイジフォックスウルフや他のテイムした魔物も連れていいと言ってくれた。
 メイジフォックスウルフをテイムした事については驚かれてしまったが。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「大部屋もなかなか広いな」

「会場ほどではないですけどね」

「でも、たくさんの食事が並べられる程に大きいよね」

 人混みが苦手な人たちの為に用意された大部屋も、本会場と比べたら小さいがそれでもかなりの広さだった。
 二つの長いテーブルに沢山の食事が並べられてる事からもそれがうかがえる。

『ふむ、どうやら人混みが苦手な者は胡桃嬢だけではないようだな』

「みたいだな。 確か心愛ここあもだったか?」

「心愛ちゃんは安川や取り巻きにスカートを下ろされた所を他の人達に見られたので」

「最低だな。そいつら」

 アルトから言われたが、胡桃以外にも心愛が人混みが苦手だったのは初めて知った。
 海水浴の時は啓をコーチングしていたのでそうは見えなかったが、その理由を聞いたら怒りが湧いて来た。
 安川と取り巻きが、心愛にそんな事をやってたとはな……。

「それにしても、メイジフォックスウルフの子供、可愛いですね」

「人懐っこくなってしまいましたが、それでも強い子たちですよ」

 そして同時に入って来たのは、シンシア・ギランという女性だった。
 耳の形からして、彼女は獣人なのだろう。
 そして、この後すぐに俺が彼女が三人娘の結婚相手である男性の妹だと知るのだった。

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