サモンブレイブ・クロニクル~無能扱いされた少年の異世界無双物語

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
上 下
90 / 140
第5章 ゼイドラムへ行こう

90 七絵からの近況報告

しおりを挟む
『では、先輩達は明日の夕方にはゼイドラムを出る予定なんですね?』

「ああ、行方をくらませた勇者二人がゼイドラムにいて、しかも余計な事件を起こしてくれたおかげでな」

『何で言うか……、お疲れ様です』

 来栖と如月が起こした『ゼイドニウム採掘場』の事件の後、俺達は王宮の寝室で一泊する事になった。
 事件の後始末等で色々忙しくなったため、射撃練習は明日になったからだ。
 まったく、あいつら余計な事をしやがって……。
 愚痴ってもどうにもならないので、ガイアブルクにいる後輩の代表である七絵に連絡を入れていた。

「それで、私たちがゼイドラムにいる間に何か変わった事とかはない?」

 横からひなたが通信先の七絵に聞いてくる。
 七絵は思い出したかのように次の話をしてきた。

『あ、そうそう、先輩達は最初に話したあのグループについて覚えてますか?』

「ああ、確か安川を始めとしたグループと君達グループと分かれてたんだったな」

『はい、その中で本人たちの望まぬ形で安川のグループに入れられた三人の話なんですが……』

「望まぬ形で? 何でそんな事に?」

『何でも三人が安川にとってのタイプの女性だとして気に入った為に、無理やり安川のグループに組み込まれたんですよ』

 ああ、奴にとってその三人はタイプだったという訳か。
 そんな理由で無理やり奴のグループに入らされたならたまったもんじゃないよなぁ。

「その子たちは、どうなったの?」

『実は、二週間前の討伐部隊の進撃の時に彼女達もその部隊に組み込まれていたようなんです。 三時間前にこっちに訪れたイリアさんの話によればですが……』

「マジか!?」

「召喚したての人間を即座に討伐部隊に組み込むとか……正気じゃないよね」

 同じく横で話を聞いていたアイリスも不快感を露にする。
 訓練もせず、いきなり戦場に送られるのだから、恐怖もかなりのものだろう。

「で、その子たち……死んじゃったの?」

 ひなたが三人の行く末を聞いてくる。
 俺達が聞いた報告では、壊滅したうえでアン王女が戦死、勇者もほぼ死亡しているという事ぐらいだからな。
 その死亡した勇者にその三人が入ってるかもしれない……という可能性も捨てきれなかったからだ。

『とりあえず、生きていました。 戦場では捕虜扱いしてましたが、拠点に着いた時点で保護に切り替わったみたいです』

「そっか……、生きてたんだね。 という事はアレの解呪にも成功したのかな?」

『イリアさんの話ではそのようですよ』

 ある意味奇跡と言うべきか、それとも……?
 とにかく七絵が心配してるであろう三人が生きていると分かった途端、ひなたとアイリスが安堵した。

「でも、あれでよく三人が生きられたな……」

『どうも、第7防衛部隊の中に三人の本心を読める人がいたようで、その人の提言によるものだと言ってましたね。 イリアさん曰く、シンシアって人がそうらしいです』

「シンシアお姉ちゃん、そっちに所属してたの?」

「知ってるのか、アイリス?」

「うん、ガイアブルクによく遊びに来てくれた虎の獣人のお姉ちゃん。 メインは【魔術師】だけど、人の心を読める能力も持ってるって言ってたよ」

 なるほどね、シンシアって人の能力で三人の心を読んで、ひとまず配慮をしたってわけか。
 戦場でそんな器用な事ができるんだなぁ。

『その三人ですが、さっき言ったシンシアさんには隊長を務める兄が居まして…彼女達はその兄のお嫁さんになったそうです。 近々、式を挙げるとか……』

「ぶはっ!!?」

「あ、アキト君!?」

「わあっ! お兄ちゃん、飲んでたお茶を吹かないでよ!!」

「あーあ、水晶玉がビショビショだよ。 しかし、それってホント唐突だね。 何でそうなったの?」

 唐突の三人の嫁入り報告に思わず口に含んでいたお茶を吹いてしまった。
 慌てふためいているアイリスやエミリーをよそに、水晶玉を雑巾で拭きながらひなたが理由を聞いてくる。

『三人以外が、やる気満々の状態で攻めて来たために次第に加減が出来なくなった結果、予定外の恐怖を与えてしまったのだとか。 その際彼女達に色んな意味でダメージを負ったらしくその責任を取りたいと隊長であるシンシアさんのお兄さんが言ったところ、嫁にもらってと三人が言ったそうで、隊長さんも了承したとのことです』

「なんと……」

「ある意味すごいね。 私たちも祝福してあげたほうがいいのかな?」

『多分、してあげた方がいいと思いますよ。 三人は魔族領に永住する予定みたいですし』

「じゃあ招待状が届いたら行く事にしようか……。 じゃあひとまず連絡を終えるぞ」

『はい、先輩達も頑張ってくださいね』

 七絵からの連絡を終え、水晶玉から光が消えた。
 水晶玉を片付けていると、クロウ中佐が入ってきた。

「あ、クロウ中佐、お疲れ様です」

「ああ、君達も済まなかったな。 採掘場の件の後始末とかが思った以上に手こずったからな」

「いえ……。 それで例の二人の指名手配の件は?」

「承認されたよ。 明日以降には他国にも指名手配用のポスターを輸送するそうだ」

「そうですか……」

「後はその二人が何かやらかさなければいいんだけどね」

 とりあえず、あいつらが他国に乗り込まないようにしないと、採掘場のように勝手に寝泊まりされるのも困る。
 だが、都合の悪い事実を聞かなかった事にする性格のあいつらが何をしでかすかは未だに予想できない。
 エミリーもそこは警戒しているようなので、俺も注意しておく必要はあるな。

 俺達は、この後夕食を取り、明日に備えて王宮の寝室で眠りについた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

処理中です...