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第5章 ゼイドラムへ行こう
90 七絵からの近況報告
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『では、先輩達は明日の夕方にはゼイドラムを出る予定なんですね?』
「ああ、行方をくらませた勇者二人がゼイドラムにいて、しかも余計な事件を起こしてくれたおかげでな」
『何で言うか……、お疲れ様です』
来栖と如月が起こした『ゼイドニウム採掘場』の事件の後、俺達は王宮の寝室で一泊する事になった。
事件の後始末等で色々忙しくなったため、射撃練習は明日になったからだ。
まったく、あいつら余計な事をしやがって……。
愚痴ってもどうにもならないので、ガイアブルクにいる後輩の代表である七絵に連絡を入れていた。
「それで、私たちがゼイドラムにいる間に何か変わった事とかはない?」
横からひなたが通信先の七絵に聞いてくる。
七絵は思い出したかのように次の話をしてきた。
『あ、そうそう、先輩達は最初に話したあのグループについて覚えてますか?』
「ああ、確か安川を始めとしたグループと君達グループと分かれてたんだったな」
『はい、その中で本人たちの望まぬ形で安川のグループに入れられた三人の話なんですが……』
「望まぬ形で? 何でそんな事に?」
『何でも三人が安川にとってのタイプの女性だとして気に入った為に、無理やり安川のグループに組み込まれたんですよ』
ああ、奴にとってその三人はタイプだったという訳か。
そんな理由で無理やり奴のグループに入らされたならたまったもんじゃないよなぁ。
「その子たちは、どうなったの?」
『実は、二週間前の討伐部隊の進撃の時に彼女達もその部隊に組み込まれていたようなんです。 三時間前にこっちに訪れたイリアさんの話によればですが……』
「マジか!?」
「召喚したての人間を即座に討伐部隊に組み込むとか……正気じゃないよね」
同じく横で話を聞いていたアイリスも不快感を露にする。
訓練もせず、いきなり戦場に送られるのだから、恐怖もかなりのものだろう。
「で、その子たち……死んじゃったの?」
ひなたが三人の行く末を聞いてくる。
俺達が聞いた報告では、壊滅したうえでアン王女が戦死、勇者もほぼ死亡しているという事ぐらいだからな。
その死亡した勇者にその三人が入ってるかもしれない……という可能性も捨てきれなかったからだ。
『とりあえず、生きていました。 戦場では捕虜扱いしてましたが、拠点に着いた時点で保護に切り替わったみたいです』
「そっか……、生きてたんだね。 という事はアレの解呪にも成功したのかな?」
『イリアさんの話ではそのようですよ』
ある意味奇跡と言うべきか、それとも……?
とにかく七絵が心配してるであろう三人が生きていると分かった途端、ひなたとアイリスが安堵した。
「でも、あれでよく三人が生きられたな……」
『どうも、第7防衛部隊の中に三人の本心を読める人がいたようで、その人の提言によるものだと言ってましたね。 イリアさん曰く、シンシアって人がそうらしいです』
「シンシアお姉ちゃん、そっちに所属してたの?」
「知ってるのか、アイリス?」
「うん、ガイアブルクによく遊びに来てくれた虎の獣人のお姉ちゃん。 メインは【魔術師】だけど、人の心を読める能力も持ってるって言ってたよ」
なるほどね、シンシアって人の能力で三人の心を読んで、ひとまず配慮をしたってわけか。
戦場でそんな器用な事ができるんだなぁ。
『その三人ですが、さっき言ったシンシアさんには隊長を務める兄が居まして…彼女達はその兄のお嫁さんになったそうです。 近々、式を挙げるとか……』
「ぶはっ!!?」
「あ、アキト君!?」
「わあっ! お兄ちゃん、飲んでたお茶を吹かないでよ!!」
「あーあ、水晶玉がビショビショだよ。 しかし、それってホント唐突だね。 何でそうなったの?」
唐突の三人の嫁入り報告に思わず口に含んでいたお茶を吹いてしまった。
慌てふためいているアイリスやエミリーをよそに、水晶玉を雑巾で拭きながらひなたが理由を聞いてくる。
『三人以外が、やる気満々の状態で攻めて来たために次第に加減が出来なくなった結果、予定外の恐怖を与えてしまったのだとか。 その際彼女達に色んな意味でダメージを負ったらしくその責任を取りたいと隊長であるシンシアさんのお兄さんが言ったところ、嫁にもらってと三人が言ったそうで、隊長さんも了承したとのことです』
「なんと……」
「ある意味すごいね。 私たちも祝福してあげたほうがいいのかな?」
『多分、してあげた方がいいと思いますよ。 三人は魔族領に永住する予定みたいですし』
「じゃあ招待状が届いたら行く事にしようか……。 じゃあひとまず連絡を終えるぞ」
『はい、先輩達も頑張ってくださいね』
七絵からの連絡を終え、水晶玉から光が消えた。
水晶玉を片付けていると、クロウ中佐が入ってきた。
「あ、クロウ中佐、お疲れ様です」
「ああ、君達も済まなかったな。 採掘場の件の後始末とかが思った以上に手こずったからな」
「いえ……。 それで例の二人の指名手配の件は?」
「承認されたよ。 明日以降には他国にも指名手配用のポスターを輸送するそうだ」
「そうですか……」
「後はその二人が何かやらかさなければいいんだけどね」
とりあえず、あいつらが他国に乗り込まないようにしないと、採掘場のように勝手に寝泊まりされるのも困る。
だが、都合の悪い事実を聞かなかった事にする性格のあいつらが何をしでかすかは未だに予想できない。
エミリーもそこは警戒しているようなので、俺も注意しておく必要はあるな。
俺達は、この後夕食を取り、明日に備えて王宮の寝室で眠りについた。
「ああ、行方をくらませた勇者二人がゼイドラムにいて、しかも余計な事件を起こしてくれたおかげでな」
『何で言うか……、お疲れ様です』
来栖と如月が起こした『ゼイドニウム採掘場』の事件の後、俺達は王宮の寝室で一泊する事になった。
事件の後始末等で色々忙しくなったため、射撃練習は明日になったからだ。
まったく、あいつら余計な事をしやがって……。
愚痴ってもどうにもならないので、ガイアブルクにいる後輩の代表である七絵に連絡を入れていた。
「それで、私たちがゼイドラムにいる間に何か変わった事とかはない?」
横からひなたが通信先の七絵に聞いてくる。
七絵は思い出したかのように次の話をしてきた。
『あ、そうそう、先輩達は最初に話したあのグループについて覚えてますか?』
「ああ、確か安川を始めとしたグループと君達グループと分かれてたんだったな」
『はい、その中で本人たちの望まぬ形で安川のグループに入れられた三人の話なんですが……』
「望まぬ形で? 何でそんな事に?」
『何でも三人が安川にとってのタイプの女性だとして気に入った為に、無理やり安川のグループに組み込まれたんですよ』
ああ、奴にとってその三人はタイプだったという訳か。
そんな理由で無理やり奴のグループに入らされたならたまったもんじゃないよなぁ。
「その子たちは、どうなったの?」
『実は、二週間前の討伐部隊の進撃の時に彼女達もその部隊に組み込まれていたようなんです。 三時間前にこっちに訪れたイリアさんの話によればですが……』
「マジか!?」
「召喚したての人間を即座に討伐部隊に組み込むとか……正気じゃないよね」
同じく横で話を聞いていたアイリスも不快感を露にする。
訓練もせず、いきなり戦場に送られるのだから、恐怖もかなりのものだろう。
「で、その子たち……死んじゃったの?」
ひなたが三人の行く末を聞いてくる。
俺達が聞いた報告では、壊滅したうえでアン王女が戦死、勇者もほぼ死亡しているという事ぐらいだからな。
その死亡した勇者にその三人が入ってるかもしれない……という可能性も捨てきれなかったからだ。
『とりあえず、生きていました。 戦場では捕虜扱いしてましたが、拠点に着いた時点で保護に切り替わったみたいです』
「そっか……、生きてたんだね。 という事はアレの解呪にも成功したのかな?」
『イリアさんの話ではそのようですよ』
ある意味奇跡と言うべきか、それとも……?
とにかく七絵が心配してるであろう三人が生きていると分かった途端、ひなたとアイリスが安堵した。
「でも、あれでよく三人が生きられたな……」
『どうも、第7防衛部隊の中に三人の本心を読める人がいたようで、その人の提言によるものだと言ってましたね。 イリアさん曰く、シンシアって人がそうらしいです』
「シンシアお姉ちゃん、そっちに所属してたの?」
「知ってるのか、アイリス?」
「うん、ガイアブルクによく遊びに来てくれた虎の獣人のお姉ちゃん。 メインは【魔術師】だけど、人の心を読める能力も持ってるって言ってたよ」
なるほどね、シンシアって人の能力で三人の心を読んで、ひとまず配慮をしたってわけか。
戦場でそんな器用な事ができるんだなぁ。
『その三人ですが、さっき言ったシンシアさんには隊長を務める兄が居まして…彼女達はその兄のお嫁さんになったそうです。 近々、式を挙げるとか……』
「ぶはっ!!?」
「あ、アキト君!?」
「わあっ! お兄ちゃん、飲んでたお茶を吹かないでよ!!」
「あーあ、水晶玉がビショビショだよ。 しかし、それってホント唐突だね。 何でそうなったの?」
唐突の三人の嫁入り報告に思わず口に含んでいたお茶を吹いてしまった。
慌てふためいているアイリスやエミリーをよそに、水晶玉を雑巾で拭きながらひなたが理由を聞いてくる。
『三人以外が、やる気満々の状態で攻めて来たために次第に加減が出来なくなった結果、予定外の恐怖を与えてしまったのだとか。 その際彼女達に色んな意味でダメージを負ったらしくその責任を取りたいと隊長であるシンシアさんのお兄さんが言ったところ、嫁にもらってと三人が言ったそうで、隊長さんも了承したとのことです』
「なんと……」
「ある意味すごいね。 私たちも祝福してあげたほうがいいのかな?」
『多分、してあげた方がいいと思いますよ。 三人は魔族領に永住する予定みたいですし』
「じゃあ招待状が届いたら行く事にしようか……。 じゃあひとまず連絡を終えるぞ」
『はい、先輩達も頑張ってくださいね』
七絵からの連絡を終え、水晶玉から光が消えた。
水晶玉を片付けていると、クロウ中佐が入ってきた。
「あ、クロウ中佐、お疲れ様です」
「ああ、君達も済まなかったな。 採掘場の件の後始末とかが思った以上に手こずったからな」
「いえ……。 それで例の二人の指名手配の件は?」
「承認されたよ。 明日以降には他国にも指名手配用のポスターを輸送するそうだ」
「そうですか……」
「後はその二人が何かやらかさなければいいんだけどね」
とりあえず、あいつらが他国に乗り込まないようにしないと、採掘場のように勝手に寝泊まりされるのも困る。
だが、都合の悪い事実を聞かなかった事にする性格のあいつらが何をしでかすかは未だに予想できない。
エミリーもそこは警戒しているようなので、俺も注意しておく必要はあるな。
俺達は、この後夕食を取り、明日に備えて王宮の寝室で眠りについた。
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