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第4章 異世界動乱編
53 新たな情報
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「しかし、生贄か……。 ガルタイト国もとんでもない事をするな。 魔族を殲滅する為に手段を選ばないわけか」
リタというガルタイト第三王女だった少女が【異界勇者召喚術】の生贄として関わっていた事に驚きつつ、同時にガルタイト国のやり方に怒りを覚えた。
その横でひなたがリタに質問をしていた。
「考え方の違いって、やはり……?」
「はい。 私はあの時の事件を引きずり続けるのは良くないと思ってます。 実際に被害に遭ったのはガルタイト国だけではありませんでしたから」
「確か、他国に先代魔王が謝罪しに回っていたってイリアお姉ちゃんが言ってたね」
「ええ、ですがガルタイト国はその謝罪を受け入れる事はなく、むしろ門前払いする程に復讐心に満ちていました。 それを隠し書庫でその事実を知った私は、愚父の目的の理由が魔族への復讐だと気付いたのです」
そこからリタと他の姉妹やガルタイト国王との思想が分かれたのか。
「ですが、幾ら反対してもあしらわれ、愚父の暴走は止まりませんでした。 愚父が【異界勇者召喚術】を行使する時も反対しましたが、そこで他の姉妹に欠陥品と罵られた上に、【異界勇者召喚術】の生贄にする目的限定での【死の言霊】を掛けられ、そこで意識が切れました」
あの国王と姉妹はそこまでしたのか。
自分たちの考えに反発する者を様々な形で死を与えるとか、弾圧じゃないか……。
「その結果、【異界勇者召喚術】が発動し、私達が召喚された……と」
「あなた達がこの世界にいる以上、間違いないです。 死体になっても魔力が残るので、その魔力を使って実行したとみていいでしょう。 今回は私が一時死体になりましたが」
リタは、由奈の問いにも肯定する形で淡々と答えていく。
しかし、あの召喚の裏でそんな事があったとはなぁ。
「暫くして生き返った私は、このメイド服を盗んだ上で、国を出ようとしました」
「そのメイド服、盗んだの!?」
おいおい……。
一般常識じゃ盗みは犯罪なんだが……。
ただ、ガルタイト国じゃ気付かずスルーなんだろうなぁ。
「国を出る前に応接室で宰相と愚父が会話をしていまして……、その話の内容を知った私は他国に知らせるために急いで出ました」
「どんな内容だったの?」
「ホムンクルスの兵士を量産する事と、新たに【異界勇者召喚術】を行使して勇者召喚を行うために占領したエリアから生贄をという内容でした」
「なんだって!?」
リタからもたらされた新たな内容…。
それはガルタイトが再度、【異界勇者召喚術】を行使しようとしていた事だ。
しかも、占領したエリアの中から生贄を選ぶという事は、俺達と同じように大量の人間を勇者として召喚するという事だ。
あの国王の事だから確実に実行はされる。
戦力を減らした所で、本丸を叩かないと結局同じことの繰り返しになるかも知れない。
「どうするの、お兄ちゃん?」
「とりあえず、クリストフ国王を呼んでくれないか? リタからの報告を改めて国王に伝えたい」
「うん、分かったよ」
流石に今回は重要な内容なので、クリストフ国王にしっかり報告しないといけない。
俺の頼みを受けて、アイリスが国王に来てもらうように連絡した。
◇◇◇◇◇◇
「なるほど……、確かにそれは憂うべき事態だな」
アイリスが連絡してから1時間後にクリストフ国王が訪れた。
クリストフ国王に、リタの事を紹介したうえで今のガルタイト国が行おうとしている内容を話した。
「しかし、再び【異界勇者召喚術】を行使しようとするとは……。 堕ちるところまで堕ちたみたいだな、ガルタイトは」
「すみません……、あの愚父と愚姉妹が……」
「リタくんだったね、君は悪くはない。 むしろ現実的な考え方をしている君を一度生贄にした彼らが悪いのさ。 今でも過去を引きずり続けているのだから」
クリストフ国王に謝罪するリタに国王はフォローする。
「クレハ共和国の件もあるから、これ以上情勢を悪化させるわけにはいかなくなったな」
「そういえば、クレハ共和国の会議欠席の理由は?」
「まだ調査中との事だ。 我が国の諜報部隊はエリスに一任しているし、必ずやってくれるさ。 ルークに王位継承権を譲ってからは口調がアレになったが」
やっぱり国王もエリス王女に対して思うところはあるのか。
アイリスの言った事からして、場所に応じて切り替えてるあたり強かな感じを受けている。
彼女の母親は別に構わないらしいが、放任主義なのか?
「とにかくリタくんからもたらされた情報は、各国に共有させてもらおう。 もちろん魔族領のイリアゲートくんにもだ。 それを踏まえて我が国の兵力も強化しておこう」
国王は、情報を各国に共有する事と、兵力の増強、強化を行うことを約束した。
下手して今の居場所であるこの国を失いたくはないからな。
「万が一の事も考えて、暁斗くん達にも指名依頼があるかもしれないからそこは了承してほしい」
「了解しました。 まだ、あいつらがいますしね」
「頼むよ。 そして、リタくんについては偽名を名乗って我が国の国民として登録しようと思うがどうだろうか?」
「ええ、ぜひお願いします。 今の名前は窮屈な感じなので……」
リタの件も、偽名を使ってガイアブルクの国民として登録する事を彼女自身も同意した。
すぐに【クリスタ・ラミアス】という偽名で国民登録をし、表向きは俺達の従者としてだが、実際には俺の嫁の一人として愛してもいいとの事。
そういう形で手続きを終え、クリストフ国王も軍備拡張のために王城へ戻っていった。
流れが混沌と化している中で、俺達も居場所を守るために戦うことをアイリス達と確認し、結束を固めた。
リタというガルタイト第三王女だった少女が【異界勇者召喚術】の生贄として関わっていた事に驚きつつ、同時にガルタイト国のやり方に怒りを覚えた。
その横でひなたがリタに質問をしていた。
「考え方の違いって、やはり……?」
「はい。 私はあの時の事件を引きずり続けるのは良くないと思ってます。 実際に被害に遭ったのはガルタイト国だけではありませんでしたから」
「確か、他国に先代魔王が謝罪しに回っていたってイリアお姉ちゃんが言ってたね」
「ええ、ですがガルタイト国はその謝罪を受け入れる事はなく、むしろ門前払いする程に復讐心に満ちていました。 それを隠し書庫でその事実を知った私は、愚父の目的の理由が魔族への復讐だと気付いたのです」
そこからリタと他の姉妹やガルタイト国王との思想が分かれたのか。
「ですが、幾ら反対してもあしらわれ、愚父の暴走は止まりませんでした。 愚父が【異界勇者召喚術】を行使する時も反対しましたが、そこで他の姉妹に欠陥品と罵られた上に、【異界勇者召喚術】の生贄にする目的限定での【死の言霊】を掛けられ、そこで意識が切れました」
あの国王と姉妹はそこまでしたのか。
自分たちの考えに反発する者を様々な形で死を与えるとか、弾圧じゃないか……。
「その結果、【異界勇者召喚術】が発動し、私達が召喚された……と」
「あなた達がこの世界にいる以上、間違いないです。 死体になっても魔力が残るので、その魔力を使って実行したとみていいでしょう。 今回は私が一時死体になりましたが」
リタは、由奈の問いにも肯定する形で淡々と答えていく。
しかし、あの召喚の裏でそんな事があったとはなぁ。
「暫くして生き返った私は、このメイド服を盗んだ上で、国を出ようとしました」
「そのメイド服、盗んだの!?」
おいおい……。
一般常識じゃ盗みは犯罪なんだが……。
ただ、ガルタイト国じゃ気付かずスルーなんだろうなぁ。
「国を出る前に応接室で宰相と愚父が会話をしていまして……、その話の内容を知った私は他国に知らせるために急いで出ました」
「どんな内容だったの?」
「ホムンクルスの兵士を量産する事と、新たに【異界勇者召喚術】を行使して勇者召喚を行うために占領したエリアから生贄をという内容でした」
「なんだって!?」
リタからもたらされた新たな内容…。
それはガルタイトが再度、【異界勇者召喚術】を行使しようとしていた事だ。
しかも、占領したエリアの中から生贄を選ぶという事は、俺達と同じように大量の人間を勇者として召喚するという事だ。
あの国王の事だから確実に実行はされる。
戦力を減らした所で、本丸を叩かないと結局同じことの繰り返しになるかも知れない。
「どうするの、お兄ちゃん?」
「とりあえず、クリストフ国王を呼んでくれないか? リタからの報告を改めて国王に伝えたい」
「うん、分かったよ」
流石に今回は重要な内容なので、クリストフ国王にしっかり報告しないといけない。
俺の頼みを受けて、アイリスが国王に来てもらうように連絡した。
◇◇◇◇◇◇
「なるほど……、確かにそれは憂うべき事態だな」
アイリスが連絡してから1時間後にクリストフ国王が訪れた。
クリストフ国王に、リタの事を紹介したうえで今のガルタイト国が行おうとしている内容を話した。
「しかし、再び【異界勇者召喚術】を行使しようとするとは……。 堕ちるところまで堕ちたみたいだな、ガルタイトは」
「すみません……、あの愚父と愚姉妹が……」
「リタくんだったね、君は悪くはない。 むしろ現実的な考え方をしている君を一度生贄にした彼らが悪いのさ。 今でも過去を引きずり続けているのだから」
クリストフ国王に謝罪するリタに国王はフォローする。
「クレハ共和国の件もあるから、これ以上情勢を悪化させるわけにはいかなくなったな」
「そういえば、クレハ共和国の会議欠席の理由は?」
「まだ調査中との事だ。 我が国の諜報部隊はエリスに一任しているし、必ずやってくれるさ。 ルークに王位継承権を譲ってからは口調がアレになったが」
やっぱり国王もエリス王女に対して思うところはあるのか。
アイリスの言った事からして、場所に応じて切り替えてるあたり強かな感じを受けている。
彼女の母親は別に構わないらしいが、放任主義なのか?
「とにかくリタくんからもたらされた情報は、各国に共有させてもらおう。 もちろん魔族領のイリアゲートくんにもだ。 それを踏まえて我が国の兵力も強化しておこう」
国王は、情報を各国に共有する事と、兵力の増強、強化を行うことを約束した。
下手して今の居場所であるこの国を失いたくはないからな。
「万が一の事も考えて、暁斗くん達にも指名依頼があるかもしれないからそこは了承してほしい」
「了解しました。 まだ、あいつらがいますしね」
「頼むよ。 そして、リタくんについては偽名を名乗って我が国の国民として登録しようと思うがどうだろうか?」
「ええ、ぜひお願いします。 今の名前は窮屈な感じなので……」
リタの件も、偽名を使ってガイアブルクの国民として登録する事を彼女自身も同意した。
すぐに【クリスタ・ラミアス】という偽名で国民登録をし、表向きは俺達の従者としてだが、実際には俺の嫁の一人として愛してもいいとの事。
そういう形で手続きを終え、クリストフ国王も軍備拡張のために王城へ戻っていった。
流れが混沌と化している中で、俺達も居場所を守るために戦うことをアイリス達と確認し、結束を固めた。
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