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第4章 異世界動乱編
51 エリス王女
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アイリスの自宅の空き部屋のベッドの上であのメイド服の少女が眠っている。
ギルドに依頼完了の報告の後、即座にアイリスの自宅へ運び、空き部屋のベッドに寝かせた。
その際、【カースリサーチ】と【鑑定】を使ったが呪いの類も状態異常も見当たらない。
だが、代わりに変わったステータスと備考欄を見た。
『LP:9/10』
『LPの範囲内でなら死亡時、リレイズ発動。 但し復活には1ヶ月要する』
LPって……。
これはライフポイントの事なのか?
あの時にアイリスが言ってた生命力のストックがあるみたいと言ってたのは多分この事なのだろう。
この少女の生命力は10個のストックを持っており、1回死亡したことで生命力が一つ失ったという事を意味している。
その生命力を使う事で、1ヶ月を要するが自己蘇生ができる……と。
そしてこれが0になったら本当の意味で死亡するのだろう。
彼女がホムンクルスであるなら、何らかの不具合でこうなったのかも知れない。
今のところ、眠り姫状態なので一向に目覚めないが、LPが減るような事はないのが救いか。
「流石にすぐには目覚めないよね……」
「そだね。 何よりLPが減ってる状態なのはどこかで一度死んでるってことだよね? 多分、復活後すぐに行動したから体にダメージがいったんだと思う」
由奈とアイリスが少女について話し合っている。
なんだかんだでみんな少女の事が心配なのだろう。
「とはいえ、命に別状がない以上、彼女の目覚めを信じて待つしかないだろうな。 幾ら【回復術師】でもこういうのは無理だしな」
「そうだね。 私たちは医者じゃないしね」
俺の発言にひなたも同意する。
アイリスや由奈も同意したのか頷いている。
「とりあえず、夜の時間帯の看病はどうする?」
「そうだねぇ……」
俺が夜の時間帯の看病について聞き、ひなたが腕を組んで唸ってた時……。
「ほうほう、この子が父上の言ってた例のホムンクルスっすかー? ふむ、ちゃんとパンツも履いてるっすねぇ」
みんなが一斉に振り向くと、そこには眼鏡を掛けた銀髪セミロングの少女がホムンクルスの少女のスカートを捲りながらうんうんと頷いていた。
俺達はその光景に開いた口が塞がらなかったが、アイリスだけは違った。
怒りの表情を携えて、その眼鏡少女に向けて殺気を放っていた。
「お・ね・え・ちゃん? 何勝手に人の家に忍び込んでるのかなぁ?」
「あ、あ、アイリスちゃん……、いや、これは……」
「そもそも、お姉ちゃんは対ガルタイト国の対策会議の為にヘキサ公国に行ったんじゃなかったの?」
「あ、あのー」
殺気を放つアイリス、たじたじになる眼鏡少女。
そんな状況に、由奈が声を掛けてきた。
「えっと、由奈お姉ちゃんどうしたの?」
「今の人……、アイリスちゃんの知り合い?」
確かにそれは気になった。
一応お姉ちゃんと言ってたし、アイリスの姉妹なのだろうが……。
そんな彼女の疑問に、眼鏡少女が答えた。
「これはこれは失礼したっす! 私はエリス・ガイアブルクと名乗る者っす! よろしくお願いします!」
「え、エリスって第一王女の!?」
「そうっス。 ですが、継承権は兄のルーク王子に譲りましたからね。 他の方面で好きにやらせて貰ってる形っスよ」
つーか、エリス王女ってこんなキャラなのか?
噂では、というかサラトガさんから聞いた話じゃ至極真面目な人だって言ってたのに。
「エリスお姉ちゃんはこっちが素の性格なんだよ……。 会議とかの重要な場所では猫を被ってるけど」
「えぇ……」
あ、ひなたがドン引きしてる。
一方の由奈も相変わらず固まってる。
そりゃそうか、今までのイメージと120%くらいかけ離れてるからなぁ。
「大体、さっきも言ったけどお姉ちゃんは会議の為にヘキサ公国に行ったんじゃないの?」
「聞いて欲しいっス! その会議にクレハ共和国が無断欠席したことで会場は荒れて中止になったんスよ!!!」
「荒れたぁ!?」
会議が荒れて中止になった事に驚くアイリス。
エリス王女はさらに話を続けた。
「そうっス! 今のクレハ共和国は魔族と友好関係を結んでますが、魔族友好同盟国間の関係が、今の大統領になってから徐々に冷え込んでいるんスよー!」
「マジか……」
いつの間にかクレハ共和国と他の魔族友好同盟の国家との関係が冷え込んでた事に驚きを隠せない。
しかも今回の事がガルタイトに知られたら、ここぞとばかりに攻め込んでくるかも知れない。
一応、戦力は削ったけども、油断はならないんだ。
「事あるごとにガルタイトと話し合えとか言ってわめいてましたから、本格的に相いれない他の国家が白い目で見てたこともありましたから……」
「今の大統領って言ったけど、前の大統領は真逆の考えだったのですか?」
「その通りっス。 前の大統領は父上と仲が良かったのですが……、極左の政党にクーデターで乗っ取られて3年経ちます」
ひなたの疑問にも口調が気になるが、しっかり答えてくれるエリス王女。
しかし、極左思考がクーデターで乗っ取ったとか、信じられないな。
「それで、今回の無断欠席の理由は分かったの?」
「うちの諜報部隊の何人かをクレハ共和国に絶賛派遣中だから、すぐに分かるはず……」
「お父さんには?」
「すでに伝えてるっス。 父上も対策を取るって」
アイリスとやり取りをした後は、エリス王女の愚痴を聞く羽目になった。
クレハ共和国の欠席に激怒した国が暴れだし、他の国がなんとか諫めようとする場外乱闘みたいな流れになった事とか。
その時間は30分だったが、その30分が以外と長く感じた日だった……。
愚痴を吐けて満足したエリス王女は、今後もよろしくと言って去っていった。
なんて言うか、嵐のような王女様だったかも知れない……。
ギルドに依頼完了の報告の後、即座にアイリスの自宅へ運び、空き部屋のベッドに寝かせた。
その際、【カースリサーチ】と【鑑定】を使ったが呪いの類も状態異常も見当たらない。
だが、代わりに変わったステータスと備考欄を見た。
『LP:9/10』
『LPの範囲内でなら死亡時、リレイズ発動。 但し復活には1ヶ月要する』
LPって……。
これはライフポイントの事なのか?
あの時にアイリスが言ってた生命力のストックがあるみたいと言ってたのは多分この事なのだろう。
この少女の生命力は10個のストックを持っており、1回死亡したことで生命力が一つ失ったという事を意味している。
その生命力を使う事で、1ヶ月を要するが自己蘇生ができる……と。
そしてこれが0になったら本当の意味で死亡するのだろう。
彼女がホムンクルスであるなら、何らかの不具合でこうなったのかも知れない。
今のところ、眠り姫状態なので一向に目覚めないが、LPが減るような事はないのが救いか。
「流石にすぐには目覚めないよね……」
「そだね。 何よりLPが減ってる状態なのはどこかで一度死んでるってことだよね? 多分、復活後すぐに行動したから体にダメージがいったんだと思う」
由奈とアイリスが少女について話し合っている。
なんだかんだでみんな少女の事が心配なのだろう。
「とはいえ、命に別状がない以上、彼女の目覚めを信じて待つしかないだろうな。 幾ら【回復術師】でもこういうのは無理だしな」
「そうだね。 私たちは医者じゃないしね」
俺の発言にひなたも同意する。
アイリスや由奈も同意したのか頷いている。
「とりあえず、夜の時間帯の看病はどうする?」
「そうだねぇ……」
俺が夜の時間帯の看病について聞き、ひなたが腕を組んで唸ってた時……。
「ほうほう、この子が父上の言ってた例のホムンクルスっすかー? ふむ、ちゃんとパンツも履いてるっすねぇ」
みんなが一斉に振り向くと、そこには眼鏡を掛けた銀髪セミロングの少女がホムンクルスの少女のスカートを捲りながらうんうんと頷いていた。
俺達はその光景に開いた口が塞がらなかったが、アイリスだけは違った。
怒りの表情を携えて、その眼鏡少女に向けて殺気を放っていた。
「お・ね・え・ちゃん? 何勝手に人の家に忍び込んでるのかなぁ?」
「あ、あ、アイリスちゃん……、いや、これは……」
「そもそも、お姉ちゃんは対ガルタイト国の対策会議の為にヘキサ公国に行ったんじゃなかったの?」
「あ、あのー」
殺気を放つアイリス、たじたじになる眼鏡少女。
そんな状況に、由奈が声を掛けてきた。
「えっと、由奈お姉ちゃんどうしたの?」
「今の人……、アイリスちゃんの知り合い?」
確かにそれは気になった。
一応お姉ちゃんと言ってたし、アイリスの姉妹なのだろうが……。
そんな彼女の疑問に、眼鏡少女が答えた。
「これはこれは失礼したっす! 私はエリス・ガイアブルクと名乗る者っす! よろしくお願いします!」
「え、エリスって第一王女の!?」
「そうっス。 ですが、継承権は兄のルーク王子に譲りましたからね。 他の方面で好きにやらせて貰ってる形っスよ」
つーか、エリス王女ってこんなキャラなのか?
噂では、というかサラトガさんから聞いた話じゃ至極真面目な人だって言ってたのに。
「エリスお姉ちゃんはこっちが素の性格なんだよ……。 会議とかの重要な場所では猫を被ってるけど」
「えぇ……」
あ、ひなたがドン引きしてる。
一方の由奈も相変わらず固まってる。
そりゃそうか、今までのイメージと120%くらいかけ離れてるからなぁ。
「大体、さっきも言ったけどお姉ちゃんは会議の為にヘキサ公国に行ったんじゃないの?」
「聞いて欲しいっス! その会議にクレハ共和国が無断欠席したことで会場は荒れて中止になったんスよ!!!」
「荒れたぁ!?」
会議が荒れて中止になった事に驚くアイリス。
エリス王女はさらに話を続けた。
「そうっス! 今のクレハ共和国は魔族と友好関係を結んでますが、魔族友好同盟国間の関係が、今の大統領になってから徐々に冷え込んでいるんスよー!」
「マジか……」
いつの間にかクレハ共和国と他の魔族友好同盟の国家との関係が冷え込んでた事に驚きを隠せない。
しかも今回の事がガルタイトに知られたら、ここぞとばかりに攻め込んでくるかも知れない。
一応、戦力は削ったけども、油断はならないんだ。
「事あるごとにガルタイトと話し合えとか言ってわめいてましたから、本格的に相いれない他の国家が白い目で見てたこともありましたから……」
「今の大統領って言ったけど、前の大統領は真逆の考えだったのですか?」
「その通りっス。 前の大統領は父上と仲が良かったのですが……、極左の政党にクーデターで乗っ取られて3年経ちます」
ひなたの疑問にも口調が気になるが、しっかり答えてくれるエリス王女。
しかし、極左思考がクーデターで乗っ取ったとか、信じられないな。
「それで、今回の無断欠席の理由は分かったの?」
「うちの諜報部隊の何人かをクレハ共和国に絶賛派遣中だから、すぐに分かるはず……」
「お父さんには?」
「すでに伝えてるっス。 父上も対策を取るって」
アイリスとやり取りをした後は、エリス王女の愚痴を聞く羽目になった。
クレハ共和国の欠席に激怒した国が暴れだし、他の国がなんとか諫めようとする場外乱闘みたいな流れになった事とか。
その時間は30分だったが、その30分が以外と長く感じた日だった……。
愚痴を吐けて満足したエリス王女は、今後もよろしくと言って去っていった。
なんて言うか、嵐のような王女様だったかも知れない……。
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