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第3章 春日部由奈に救いの手を
43 メイジフォックスウルフへの治療
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「しかし、驚いた。 距離が離れてた筈なのに会話を聞き取れるなんて」
『すまない。 我が種族は魔力行使で遠くの距離から声を拾う事が出来るのだ』
メイジフォックスウルフに案内される形で、俺達は彼らの縄張りに向かっていた。
彼の頼み、つまり彼の末娘とされる小さいメイジフォックスウルフの治療を了承したからだ。
『しかし、末娘が怪我をした所をよく見えたものだ』
「スキルのおかげかな? 【鷹の目】が使えるんで……」
『鷹の目……、確か、人間が持つ素質の一つ、シーフのスキルか。 回復魔法だけでなくシーフのスキルも使えるとは……』
「まあ、訳ありなので……」
そんなやり取りをしてるうちに、現場にたどり着いた。
『ようこそ、私は彼の妻……あの子たちの母親ですわ』
もう一匹の大きなメイジフォックスウルフが出迎えて挨拶してくる。
こっちは母親のようだ。
ふと視線を見ると、3匹の子供のメイジフォックスウルフに見守られている怪我したとされる末っ子がいた。
実際に見てみると痛々しそうにしているのが分かる。
「きゅーん……、きゅーん……」
傷が痛むのか、弱弱しく泣いており、見ていられない感じだった。
『私たちも一応、回復魔法は使えます。 しかし、私たちが使えるのは初級の回復魔法なので、傷がなかなか塞がらないのです』
母親のメイジフォックスウルフが俺の隣に来てこう言った。
回復魔法は初級しか使えない……か。
傷からして深いのは分かるが……、何だろう、どうも違和感を感じた。
『そのため、回復魔法を極めている君に頼みたいと思った。 君たち三人には殺気が感じられなかったし、会話内容で信頼できるとみて、頼んだのだ。 子供たちも了承してるよ』
「ここまで来ましたからね。 やってみますよ」
『すまない……、頼む』
そう言って、傷ついた末っ子の元へ行こうとした時、アイリスが声を掛けて来た。
「お兄ちゃん、多分あの子、別の何かがあるよ」
「別の何か?」
「うん、メイジフォックスウルフの魔力は高いから、初級回復魔法でも効力は中級クラスになるの。 だけど、それでも効果がないってことはその何かに要因があるかもしれないよ」
「だとすると、呪いか?」
「だと思う。 回復の前に呪術師のスキルで呪い測定した方がいいかもしれない。 お兄ちゃんなら呪いが検出されてもスキルで即解呪できるしね」
「わかった」
アイリスとの話を終えた俺は、ひなたとアイリスと一緒に末っ子の傍までやってきた。
そして、末っ子の身体に手を触れ、呪い測定のスキルを発動させる。
(【カースリサーチ】……)
このスキルは相手が呪いに掛かってるか否かと呪いの種類を測定できるスキルだ。
呪いが掛かってる場合は赤く光るようになっている。
すると、即座に末っ子の身体が赤く光る。
同時に呪いの内容が頭の中に入ってくる。
「ちっ!」
その呪いの内容に舌打ちする。
魔力の高いメイジフォックスウルフの回復魔法ですら受け付けなかったのも頷ける。
「お兄ちゃん、やっぱり……」
「あぁ、アイリスの考えてた通りだ。 誰がやったかは知らないがやってくれる」
『ど、どういう事ですか!?』
「端的に言ってしまえば、この子には【回復不能】の呪いが掛かってました」
『な、なんだと!?』
メイジフォックスウルフの末っ子に呪いが掛かっていた事を伝えると父親の方は驚きを隠せないでいた。
「なるほど、だからメイジフォックスウルフの両親の回復魔法も受け付けなかったんだね。 呪いの力で回復の光を遮断するってやつだろうね」
「その通りだ、ひなた」
「メイジフォックスウルフがSランクの魔物でも、幼いうちは呪いの耐性がなく、弱いからね。 そこを狙われたんだね」
『そんな……』
呪いで回復魔法を遮断することで回復をさせないようにしていた。
それを知り、母親も絶望するが……。
「ですが俺ならこの呪いを解呪できますよ」
『ほ、本当ですか!?』
「本当です。 彼は【呪術師】の素質も極めてるので」
「ひなたの言う通りです。 訳ありの人間ですからこうなってるわけでして。 では、解呪を始めましょう」
そう言って俺は、再び末っ子の身体に手を当てて、今度は解呪のスキルを使った。
「【カースディスペル】」
すると、末っ子の身体からどす黒いものが噴き出し、そのまま四散していく。
あのどす黒いものが呪いのやつだろう。
解呪が確認されたら、間髪入れずに上級の回復魔法を使う。 減少した体力も戻すためだ。
「【メガケアレス】」
直後、優しい光が末っ子の身体を包み、受けた傷を次々と消え去っていく。
少し時間がかかったが、なんとか全開できた。
よほど深い傷だったのだろう。 さらに幼いためかなりの体力が疲弊していたことも要因だ。
『お、おおぉ……』
傷も体力も回復し、顔色がよくなった末っ子に両親は感激のあまり声がでない。
子供たちも感激のあまり、わんわんと泣き続けていた。
「わふ、きゅーん?」
元気になった末っ子は首をかしげる。
どうなってるのかわからないようだ。
『あ、ありがとうございます、あなたのおかげで末娘が元気になりました!』
『呪いまで解呪してくれて……本当にありがとう!』
俺はメイジフォックスウルフの家族に一杯感謝された。
『すまない。 我が種族は魔力行使で遠くの距離から声を拾う事が出来るのだ』
メイジフォックスウルフに案内される形で、俺達は彼らの縄張りに向かっていた。
彼の頼み、つまり彼の末娘とされる小さいメイジフォックスウルフの治療を了承したからだ。
『しかし、末娘が怪我をした所をよく見えたものだ』
「スキルのおかげかな? 【鷹の目】が使えるんで……」
『鷹の目……、確か、人間が持つ素質の一つ、シーフのスキルか。 回復魔法だけでなくシーフのスキルも使えるとは……』
「まあ、訳ありなので……」
そんなやり取りをしてるうちに、現場にたどり着いた。
『ようこそ、私は彼の妻……あの子たちの母親ですわ』
もう一匹の大きなメイジフォックスウルフが出迎えて挨拶してくる。
こっちは母親のようだ。
ふと視線を見ると、3匹の子供のメイジフォックスウルフに見守られている怪我したとされる末っ子がいた。
実際に見てみると痛々しそうにしているのが分かる。
「きゅーん……、きゅーん……」
傷が痛むのか、弱弱しく泣いており、見ていられない感じだった。
『私たちも一応、回復魔法は使えます。 しかし、私たちが使えるのは初級の回復魔法なので、傷がなかなか塞がらないのです』
母親のメイジフォックスウルフが俺の隣に来てこう言った。
回復魔法は初級しか使えない……か。
傷からして深いのは分かるが……、何だろう、どうも違和感を感じた。
『そのため、回復魔法を極めている君に頼みたいと思った。 君たち三人には殺気が感じられなかったし、会話内容で信頼できるとみて、頼んだのだ。 子供たちも了承してるよ』
「ここまで来ましたからね。 やってみますよ」
『すまない……、頼む』
そう言って、傷ついた末っ子の元へ行こうとした時、アイリスが声を掛けて来た。
「お兄ちゃん、多分あの子、別の何かがあるよ」
「別の何か?」
「うん、メイジフォックスウルフの魔力は高いから、初級回復魔法でも効力は中級クラスになるの。 だけど、それでも効果がないってことはその何かに要因があるかもしれないよ」
「だとすると、呪いか?」
「だと思う。 回復の前に呪術師のスキルで呪い測定した方がいいかもしれない。 お兄ちゃんなら呪いが検出されてもスキルで即解呪できるしね」
「わかった」
アイリスとの話を終えた俺は、ひなたとアイリスと一緒に末っ子の傍までやってきた。
そして、末っ子の身体に手を触れ、呪い測定のスキルを発動させる。
(【カースリサーチ】……)
このスキルは相手が呪いに掛かってるか否かと呪いの種類を測定できるスキルだ。
呪いが掛かってる場合は赤く光るようになっている。
すると、即座に末っ子の身体が赤く光る。
同時に呪いの内容が頭の中に入ってくる。
「ちっ!」
その呪いの内容に舌打ちする。
魔力の高いメイジフォックスウルフの回復魔法ですら受け付けなかったのも頷ける。
「お兄ちゃん、やっぱり……」
「あぁ、アイリスの考えてた通りだ。 誰がやったかは知らないがやってくれる」
『ど、どういう事ですか!?』
「端的に言ってしまえば、この子には【回復不能】の呪いが掛かってました」
『な、なんだと!?』
メイジフォックスウルフの末っ子に呪いが掛かっていた事を伝えると父親の方は驚きを隠せないでいた。
「なるほど、だからメイジフォックスウルフの両親の回復魔法も受け付けなかったんだね。 呪いの力で回復の光を遮断するってやつだろうね」
「その通りだ、ひなた」
「メイジフォックスウルフがSランクの魔物でも、幼いうちは呪いの耐性がなく、弱いからね。 そこを狙われたんだね」
『そんな……』
呪いで回復魔法を遮断することで回復をさせないようにしていた。
それを知り、母親も絶望するが……。
「ですが俺ならこの呪いを解呪できますよ」
『ほ、本当ですか!?』
「本当です。 彼は【呪術師】の素質も極めてるので」
「ひなたの言う通りです。 訳ありの人間ですからこうなってるわけでして。 では、解呪を始めましょう」
そう言って俺は、再び末っ子の身体に手を当てて、今度は解呪のスキルを使った。
「【カースディスペル】」
すると、末っ子の身体からどす黒いものが噴き出し、そのまま四散していく。
あのどす黒いものが呪いのやつだろう。
解呪が確認されたら、間髪入れずに上級の回復魔法を使う。 減少した体力も戻すためだ。
「【メガケアレス】」
直後、優しい光が末っ子の身体を包み、受けた傷を次々と消え去っていく。
少し時間がかかったが、なんとか全開できた。
よほど深い傷だったのだろう。 さらに幼いためかなりの体力が疲弊していたことも要因だ。
『お、おおぉ……』
傷も体力も回復し、顔色がよくなった末っ子に両親は感激のあまり声がでない。
子供たちも感激のあまり、わんわんと泣き続けていた。
「わふ、きゅーん?」
元気になった末っ子は首をかしげる。
どうなってるのかわからないようだ。
『あ、ありがとうございます、あなたのおかげで末娘が元気になりました!』
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