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第3章 春日部由奈に救いの手を
41 春日部 由奈に関する報告
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エミリーと町巡りをした翌日。
バーサークバッファローの検証は、未だに進展がないようで、今日は彼女も検証に立ち会っているらしい。
後、クレアにも呼び捨てで呼んであげて欲しいとエミリーからの伝言があった。
クレアも俺と親しくなりたいようなので、ひとまず分かったと伝えた。
ひなたやアイリスはモテるねとからかわれたが。
そんな中で、昼過ぎにある報告が俺達の元に届いた。
「ガルタイト国の魔王討伐部隊が敗走した?」
「うん、お父さんからの報告じゃ最南端を中心に防衛する第9防衛部隊と交戦したけど、全く歯が立たず敗走したみたいだよ」
自宅にて、アイリスから聞かされた情報はあまりにもすごい内容だった。
あの追手の件からイリアさんがしっかり強化してくれたのだろう。
「それにしても、一方的に負けるとか……。 まともに訓練や冒険者活動してないんじゃない?」
「多分そうだろうね。 アン王女の呪いと勇者補正の能力、そしてホムンクルスの兵士を多数投入することで勝てると思ってたかもね」
「で、結果は歯が立たず惨敗…と」
「うん。 兵士は全滅、勇者も二人死亡したそうだよ」
まぁ、なんとも言えない内容だが、聞けば聞くほど呆れの方が強くなる。
少しの訓練だけで強くなれるはずがないのだから。
俺やひなたのように冒険者活動をこなし続けていれば話は別だが、城内の訓練しかやってないのであればそうなるのも当然だろう。
「ある意味ガルタイトの操り人形と化した者たちの末路なのかもしれないけどね」
「だが、また攻めてくるだろうな。 あいつらは諦めが悪そうだし」
「イリアお姉ちゃんからの話じゃ第9防衛部隊は鬼人のシュメルさんと竜人の副隊長もいるからね。 他の防衛部隊も相当強いから大丈夫でしょ」
アイリスが心配無用とばかりに防衛部隊の話をした。
そういえば、魔族って亜人の集まりだったか。
様々な強さを持つ種族ならではの存在が、イリアさんによって実践的に強化されれば確かに歯が立たないだろうな。
「後ね、イリアお姉ちゃん経由でお父さんから気になる事を聞いたんだけど……」
「ん? 気になる事?」
ひなたが首をかしげながらアイリスに尋ねる。
神妙な顔つきのアイリスから、俺はもしかしてと察した。
多分、彼女の事だと……。
「ひなたお姉ちゃんは、春日部由奈っていう人、知ってる?」
「!?」
(やはりか……)
アイリスが口にした名前を聞いてひなたが驚いた。
だが、俺は気にはなっていたので、アイリス経由でこっそりとクリストフ国王やイリアさんに調べて欲しいと頼んだからだ。
しかし、ひなたの驚きようからやはり春日部さんの事はすっかり忘れていたみたいだな。
「その人を組み込んだ追手部隊が近々来るみたいだよ」
「そんな……!」
「早いな、おい!」
ひなたもショックを隠し切れなかった。
新たな追手の部隊に彼女が組み込まれたのだ。
俺でさえ、驚きを隠せない。
「だけど、何故、その事を?」
「由奈さんのお付きのメイドさんが実は魔族側から派遣したスパイなの。 話す機会があったから色々聞いて発覚したみたい」
「そういえば、イリアさんは諜報部隊をガルタイトに派遣し続けているって言ってたな……」
「後ね、お兄ちゃんが無能判定された時にほとんどのガルタイト関係者から『威圧』スキルの使用が確認されたみたい」
「ま、マジか……!」
「うん、多分意思の統一を無理やりにでもさせることが目的だったかもね」
おいおい、次から次へととんでもない事実が出てくるな。
いくら何でもそこまでするか……?
「確かにあの時、プレッシャーみたいなのは感じてた。 でも、私は暁斗君を助けたい一心で振り切ったけど……。 って、そうか、しまった!!」
「ひなたお姉ちゃん!?」
「あの時、私の真後ろに由奈さんがいたんだ…。 彼女の性格から手を引っ張りながら暁斗君を助けるべきだったかも……! 彼女は小学校からのいじめが原因で上手く自分の意思を持てない性格だから……!」
後悔の念を抱え始めたひなた。
春日部さんの性格からして、動きたくても動けなかったんだろうな。
「それで、彼女は今はどんな考えを持ってるんだ?」
「何かね……、どのみち避けられない戦いらしく死ぬ前に一言だけ謝りたいって……」
「う、うそ……」
「時間がそうさせたのか……、やり切れないな……、くそっ!」
アイリスによる今の春日部さんの意思を聞いて、ひなたは開いた口が塞がらなかった。
俺もこれを聞いた以上、やり切れない思いで一杯になる。
それを察したアイリスは、こう言ってきた。
「だから、その人だけは何としても救ってあげないといけないと思うよ。 他者から見たらそれがエゴだとしてもね」
「アイリス……」
「アイリスちゃん……」
アイリスは春日部さんを救うと言ってきた。
それが他者から見たらエゴかも知れないと分かりつつも。
確かに彼女だけは、チャンスを与えたいとは俺も思っていたからな。
「幸い、お兄ちゃんは解呪も使えるようになってるから、あの【時限爆弾】も解呪できると思うから」
あの呪いか。
確かに今の俺ならそいつも解呪が可能だが、【時限爆弾】の発動タイミングがなぁ。
「まだ、追手が来るまで時間はあるし、私達で方法を考えていこうよ。 ね?」
「うん。 ありがとう、アイリスちゃん」
「そうだよな」
確かにまだ時間はある。
それまでは発動される前に解呪できる方法を考えておこう。
そう意気込んでいたら……。
「おーい、アキトくーん」
「あれ、エミリー?」
外からエミリーが俺を呼ぶ声がしたので、アイリスやひなたと共に玄関に行く。
「エミリー、どうしたんだ? 立ち会いは終わったのか?」
「うん、その帰りにサラトガさんから伝言を頼まれてね」
「伝言?」
「なんでも、ここ王都から東に馬車で2時間程の距離にある大きな森に、Sランクの魔物が発見されたみたいでね……」
「へ!?」
エミリーから伝えられた新たなSランクの魔物の発見に俺達は絶句した。
バーサークバッファローの検証は、未だに進展がないようで、今日は彼女も検証に立ち会っているらしい。
後、クレアにも呼び捨てで呼んであげて欲しいとエミリーからの伝言があった。
クレアも俺と親しくなりたいようなので、ひとまず分かったと伝えた。
ひなたやアイリスはモテるねとからかわれたが。
そんな中で、昼過ぎにある報告が俺達の元に届いた。
「ガルタイト国の魔王討伐部隊が敗走した?」
「うん、お父さんからの報告じゃ最南端を中心に防衛する第9防衛部隊と交戦したけど、全く歯が立たず敗走したみたいだよ」
自宅にて、アイリスから聞かされた情報はあまりにもすごい内容だった。
あの追手の件からイリアさんがしっかり強化してくれたのだろう。
「それにしても、一方的に負けるとか……。 まともに訓練や冒険者活動してないんじゃない?」
「多分そうだろうね。 アン王女の呪いと勇者補正の能力、そしてホムンクルスの兵士を多数投入することで勝てると思ってたかもね」
「で、結果は歯が立たず惨敗…と」
「うん。 兵士は全滅、勇者も二人死亡したそうだよ」
まぁ、なんとも言えない内容だが、聞けば聞くほど呆れの方が強くなる。
少しの訓練だけで強くなれるはずがないのだから。
俺やひなたのように冒険者活動をこなし続けていれば話は別だが、城内の訓練しかやってないのであればそうなるのも当然だろう。
「ある意味ガルタイトの操り人形と化した者たちの末路なのかもしれないけどね」
「だが、また攻めてくるだろうな。 あいつらは諦めが悪そうだし」
「イリアお姉ちゃんからの話じゃ第9防衛部隊は鬼人のシュメルさんと竜人の副隊長もいるからね。 他の防衛部隊も相当強いから大丈夫でしょ」
アイリスが心配無用とばかりに防衛部隊の話をした。
そういえば、魔族って亜人の集まりだったか。
様々な強さを持つ種族ならではの存在が、イリアさんによって実践的に強化されれば確かに歯が立たないだろうな。
「後ね、イリアお姉ちゃん経由でお父さんから気になる事を聞いたんだけど……」
「ん? 気になる事?」
ひなたが首をかしげながらアイリスに尋ねる。
神妙な顔つきのアイリスから、俺はもしかしてと察した。
多分、彼女の事だと……。
「ひなたお姉ちゃんは、春日部由奈っていう人、知ってる?」
「!?」
(やはりか……)
アイリスが口にした名前を聞いてひなたが驚いた。
だが、俺は気にはなっていたので、アイリス経由でこっそりとクリストフ国王やイリアさんに調べて欲しいと頼んだからだ。
しかし、ひなたの驚きようからやはり春日部さんの事はすっかり忘れていたみたいだな。
「その人を組み込んだ追手部隊が近々来るみたいだよ」
「そんな……!」
「早いな、おい!」
ひなたもショックを隠し切れなかった。
新たな追手の部隊に彼女が組み込まれたのだ。
俺でさえ、驚きを隠せない。
「だけど、何故、その事を?」
「由奈さんのお付きのメイドさんが実は魔族側から派遣したスパイなの。 話す機会があったから色々聞いて発覚したみたい」
「そういえば、イリアさんは諜報部隊をガルタイトに派遣し続けているって言ってたな……」
「後ね、お兄ちゃんが無能判定された時にほとんどのガルタイト関係者から『威圧』スキルの使用が確認されたみたい」
「ま、マジか……!」
「うん、多分意思の統一を無理やりにでもさせることが目的だったかもね」
おいおい、次から次へととんでもない事実が出てくるな。
いくら何でもそこまでするか……?
「確かにあの時、プレッシャーみたいなのは感じてた。 でも、私は暁斗君を助けたい一心で振り切ったけど……。 って、そうか、しまった!!」
「ひなたお姉ちゃん!?」
「あの時、私の真後ろに由奈さんがいたんだ…。 彼女の性格から手を引っ張りながら暁斗君を助けるべきだったかも……! 彼女は小学校からのいじめが原因で上手く自分の意思を持てない性格だから……!」
後悔の念を抱え始めたひなた。
春日部さんの性格からして、動きたくても動けなかったんだろうな。
「それで、彼女は今はどんな考えを持ってるんだ?」
「何かね……、どのみち避けられない戦いらしく死ぬ前に一言だけ謝りたいって……」
「う、うそ……」
「時間がそうさせたのか……、やり切れないな……、くそっ!」
アイリスによる今の春日部さんの意思を聞いて、ひなたは開いた口が塞がらなかった。
俺もこれを聞いた以上、やり切れない思いで一杯になる。
それを察したアイリスは、こう言ってきた。
「だから、その人だけは何としても救ってあげないといけないと思うよ。 他者から見たらそれがエゴだとしてもね」
「アイリス……」
「アイリスちゃん……」
アイリスは春日部さんを救うと言ってきた。
それが他者から見たらエゴかも知れないと分かりつつも。
確かに彼女だけは、チャンスを与えたいとは俺も思っていたからな。
「幸い、お兄ちゃんは解呪も使えるようになってるから、あの【時限爆弾】も解呪できると思うから」
あの呪いか。
確かに今の俺ならそいつも解呪が可能だが、【時限爆弾】の発動タイミングがなぁ。
「まだ、追手が来るまで時間はあるし、私達で方法を考えていこうよ。 ね?」
「うん。 ありがとう、アイリスちゃん」
「そうだよな」
確かにまだ時間はある。
それまでは発動される前に解呪できる方法を考えておこう。
そう意気込んでいたら……。
「おーい、アキトくーん」
「あれ、エミリー?」
外からエミリーが俺を呼ぶ声がしたので、アイリスやひなたと共に玄関に行く。
「エミリー、どうしたんだ? 立ち会いは終わったのか?」
「うん、その帰りにサラトガさんから伝言を頼まれてね」
「伝言?」
「なんでも、ここ王都から東に馬車で2時間程の距離にある大きな森に、Sランクの魔物が発見されたみたいでね……」
「へ!?」
エミリーから伝えられた新たなSランクの魔物の発見に俺達は絶句した。
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