上 下
38 / 140
第3章 春日部由奈に救いの手を

38 エミリーと町巡り

しおりを挟む
 バーサークバッファローの事件から3日後。
 現在俺は、西地区の宿屋の前にいた。
 エミリーさんに、ガイアブルクの王都を案内する為だ。
 昨日、エミリーさんに出会い、王都を案内して欲しいと頼まれたからだ。
 クレアさんが、王城でバーサークバッファローの検証に立ち会う為、エミリーさんは暇になるからだった。
 ひなたやアイリスにも相談し、OKを貰った。
 そんな訳で、俺はエミリーさんが宿屋から出てくるのを待っているのだ。

「アキトくん、お待たせー」

 暫く待っていると、エミリーさんが手を振りながら宿屋から出て、こっちに来た。
 あの【漆黒】戦で見たブレザー風でやや短めのフリルスカートだが、パステルオレンジ基調ではなく、スカイブルー基調だ。
 多分、色で冒険者用と日常のお出かけ用に分けてるんだろうな。

「さて、それじゃ案内しますよ、エミリーさん」

「うん、よろしく。 あとね、ボクの事は呼び捨てでいいよ」

「呼び捨てで?」

「それと、お話する時もタメ口でいいよ。 ボクとアキトくんは1つしか歳が違わないんだし」

 まさか、彼女から呼び捨てで呼ぶこととタメ口で話していいと言われるとは。
 確かに年齢的には、俺は17歳でエミリーさんは18歳なので、一つしか違わない。
 とはいえ、俺は別の世界から召喚されたイレギュラーで前にアイリスに案内してもらったからこそ、この町を案内できるからなぁ。
 エミリーさんは、冒険者としても先輩格なので基本的に敬語で話していた。

「ボクとしてはね、アキトくんともっと身近でいたいんだよ。 敬語で話されるとね、どうも距離が開いてるようでに感じてね」

 一種の告白に近かった。
 俺と身近でいたいから、呼び捨てやタメ口で話して欲しいと言ったのだ。
 敬語で話されると、距離が開いているように感じるから……。

「分かった。これからそうするよ。 じゃ、行こうかエミリー」

「うん♪」

(おおぅ、いきなり腕を組まれると彼女の胸が当たって……!)

 彼女の願いを受け入れ、呼び捨てとタメ口で話すようにした途端、エミリーが嬉しそうに俺の腕を組んできた。
 思いっきり俺の腕に彼女の胸が当たっており、その柔らかい感触が伝わってくる。

 当の彼女は笑顔なのだが。

 少し時間を食ったが、ひとまずエミリーとの街巡りを始めた。
 まずは南地区だ。

◇◇◇◇◇

 定期馬車に乗って南地区にある遊園地前の停留所にたどり着く。
 エミリーは、その遊園地の規模を見て絶句していた。

「ここが遊園地……!」

「ああ、アイリスに案内してもらった時に、俺も驚いたけどかなりの規模らしい」

「へぇ。 それで、中に入るの?」

「折角来たからな。 お金は払うよ」

「ホントにごめんね。 宿屋の分しか換金していなかったから」

「そこはしょうがないさ。 さ、入ろう」

 流石にエミリーにはお金を払わせられないので、入園料やらの全ては俺が払う事に。
 ヘキサ公国と、ここガイアブルク王国ではお金の単位が違うし、換金のレートも違う。
 エミリーはヘキサ公国出身、かつSランクの魔物の報告を受けてやって来た形なので、宿屋に泊る分しか換金できないからな。

「わぁっ♪ 実際に入ってみたらすっごい大きい」

「ははは、じゃあ最初はどこに行く?」

 スカートを翻してはしゃぐエミリーに苦笑しつつ、遊園地内の地図を見せる。
 それを見てエミリーは、ゴーカート、ジェットコースター、観覧車の順に乗った。
 流石にジェットコースターは……かなりキツかった。

「結構楽しかったね。 また機会があれば行きたいな」

「喜んでもらえて何よりだ。 じゃあ、次は東地区だな」

「そこはどんな場所?」

「メインは飲食店とショッピング店が多数ある場所かな。 まず、そこで食事をしよう」

「うん♪ 丁度お腹も空いて来たしね」

 そう話しながら、東地区行きの馬車に乗り込んだ。
 俺がさっきエミリーに言ったように、東地区は飲食店とショッピング店が沢山ある商業地帯だ。
 丁度昼頃だし、そこで食事をすることにしたのだ。

 ちなみにエミリーが食べたいと言った店は、ステーキ屋さんだった。
 冒険者でもあるし、【魔術師】の素質をもつ彼女は魔法を使う毎に魔力だけでなくエネルギーを消費するのだろう。
 なので、沢山肉を食べたいとの事だった。
 俺もこの世界のステーキには興味があったので、食べてみた。
 肉は北部の酪農村で生み出された牛の肉らしく、かなり美味だった。
 そんな美味しいステーキで舌鼓を打った後は、アクセサリーショップや日用品の店で色々と買い物をした。

「お、そろそろ夕方か」

「みたいだね。 いやー、楽しかったよアキトくん」

「楽しんでくれて何よりだよ。 さて、宿屋まで送っていくよ」

「あ、その前におトイレ行ってくるね」

 なんだかんだで、夕方になったようなのでそろそろ帰宅しないといけない。
 付近の公衆トイレに行ったエミリーを待った後、西地区行きの定期馬車乗って宿屋の前の停留所に到着した。

「クレアは……まだ帰ってきてないみたいだね」

「立ち合いが長引いてるのかもな」

「ま、何かあれば連絡してくるだろうし、気長に部屋で待つことにするよ。 またね、アキトくん」

「ああ、またな」

 そう言ってエミリーは、宿屋に入っていった。
 俺もその足で自分の拠点に戻り、ひなたやアイリスと色々な形で楽しんだ。
 とはいえ、そろそろあの子の……、春日部さんの事を聞かないといけないな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

天才高校生は異世界で無双する!〜チートスキルと知識チートで異世界を変革するようです〜

ピョンきち
ファンタジー
季節は夏、主人公森崎健太は夏休み家族とともに豪華クルーズ客船に乗って世界一周旅行をしていたが、何者かにより船に時限爆弾が設置されていて、爆発。船底に穴が空き運悪く沈没。目を覚ますと目の前には女神を名乗る幼女がいて… 「君は死んじゃったから別の世界で生きてもらうね!」 見た目はそのまま、頭脳もそのまま、身体能力超強化!? これは世界に影響を与えるある一人の少年の 物語だ。 【読者様へのお願い】 初作品です。ご意見ありましたらビシバシ感想来てください!率直な意見がこの作品をより良くすることができます。よろしくお願いします! 僕の作品『前世が官僚』もよろしくお願いします! 『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿させていただいております。そちらもお願いします。

【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者

月風レイ
ファンタジー
 神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。  そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。  そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。  聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。  そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。  ストレスフリーファンタジー。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...