サモンブレイブ・クロニクル~無能扱いされた少年の異世界無双物語

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
上 下
36 / 140
第3章 春日部由奈に救いの手を

36 Sランクの魔物との戦い

しおりを挟む
 バーサークバッファロー。
 アイリス曰く、【襲撃型】のSランクの魔物。
 本来のSランクの魔物は、ガイアブルク城下町周辺には出現しない。
 だが、何があったのか俺達は今、そのSランクの魔物に出くわした。
 狩る気満々の目を宿して。

 そして、こっちが臨戦態勢に入る前にバーサーク バッファローがいきなり突進してきた。

「速い!?」

「がはっ!?」

 余りにも速い突進に、ひなたが避けきれずに体当たりを受けてしまった。
 その身体は、後ろの方に吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。

「ひなた!?  くっ……!」

 叩きつけられた影響で、意識がないひなたに、俺は鑑定を使う。
 これは、指名依頼の後の飲み会の時にエミリーさんから教えられた事だが、人間に集中して使えば、その人の状態が分かるそうだ。
 それを元に、ひなたに使ったら、彼女の状態が頭に入ってきた。
 気を失っているだけで生きてはいる。
 だが、驚くべき事は、彼女は【グレードブースター】を掛けた状態であった事だった。
 多分、気配がしたと同時に掛けたのだろう。
だが……。

(グレードブースターを掛けた状態でこれかよ!?  なんて威力だよ!!)

 もし、彼女がグレードブースターで身体強化してなかったら、あの体当たりだけで粉々にされてたかも知れない。
 それを考えてたらゾッとした。
 すると、バーサークバッファローは方向転換した。

(まさか……!?)

「ひぃ……っ!」

「アイリス!!」

 奴の視線はアイリスに向けていた。
 アイリスは、その殺気にあてられ恐怖で動けない。
 咄嗟に【パワーブースター】と【フィジカルブースター】、さらに【クイック】を掛けてアイリスを守りに動いた。
 いずれも【魔術師】の素質で手にした強化魔法。
奴相手に心許ないが、今はこれしかない。
 突進のスピードが速いが、距離的に俺が先にアイリスの元に早く着く。
 そして、『格闘家』の素質を解放し、アイリスの前に立ち、バーサークバッファローの突進を真正面から受け止めた。

「うぐ……!」

 流石に衝撃が重い。
 だが、何とか受け止める事ができた。

「お、お兄ちゃん……!」

 アイリスを見ると、彼女はまだ恐怖で震えたままだった。
 突然、狙われたのだから無理もない。
 そんな彼女に、奴を抑えながらだがなんとか声を掛けた。

「アイリス、早くひなたの元へ行ってポーションを飲ませてくれ!!  ひなたはダメージによって気を失ってるだけで生きてる!  俺が奴を抑えているうちに、早く!!」

「う、うん、分かった!」

 なんとか持ち直したアイリスは、ひなたの元へ走り出す。
 幸い、バーサークバッファローは俺に釘付けなので気付いていない。
 それよりも受け止められたことに腹を立てた奴は、より強い力で押しきろうとしてきた。

(暫くは根比べか)

 俺もそれに合わせて、【格闘家】の素質をさらに解放する。

「ブモモモモモ!?」

 少し押されてる様子に、バーサークバッファローは焦りが見え始める。
 人間に力負けしてるのが、信じられないといった様子だ。
そこに俺は【格闘家】の素質を全開にした。

「ぶ、ブモーーーっ!?」

 今度は俺が有利になった。
 各種強化のバフに加えて、【格闘家】の素質による攻撃力の全開。
 元々の能力が高かったのが、今までの経験でさらに高い能力を得ていた。
 押されていくバーサークバッファロー。
 少しずつ、ズルズルと奴が後ろに押されていくのが分かる。
 そうしているうちに、バーサークバッファローの様子に変化が訪れた。

「ブモモっ!?」

 突然、何かに刺されたような感じのリアクションを取った。
 その直後……。

「でええぇぇぇい!!」

 ポーションの力のおかげか、いつの間にか回復したひなたが奴の真後ろで、折れた剣を押し込んできた。

「プギイィィィィ!!!」

 バッファローとは思えない……、いやむしろ豚のような悲鳴を上げて、仰け反った。
 前足が上がり、お腹の部分が無防備になっている。

「暁斗君、今だよ!!」

 ひなたに言われて俺は拳を構えた。
 狙うは無防備になっている腹部。
 おそらくチャンスは一瞬、失敗は許されない。

「せいっ!!」

 狙いすましたように奴の腹部に、正拳突きを叩き込む。
 奴の皮膚はかなり固い。 
 しかし、保険として拳には『気』というものを込めていた。
 気の力は【格闘家】の素質を極めた時に会得したものだ。
 皮膚に外傷はなくても、気によって内部破壊はできるはずだ。

「ブボァっっ!!?」

 思った通り、気の力で内臓部分に絶大なダメージを負ったバーサークバッファロー。
 吐血して、そのまま後ろに倒れていく。
その後、痙攣した後、息を引き取った。

「た、倒せた……か、うぐ……!!」

「あ、暁斗君!!」

 流石に強化魔法を掛け、素質を開放しても受け止めた衝撃だけは防ぐことが出来ず、アバラをやられたみたいだ。
 そんな俺の元にひなたが駆け寄る。

「ひなた、無事に回復したんだな」

「うん、アイリスちゃんが飲ませてくれたからね。 それまで意識が飛んでたよ。 はい、ポーション」

「ああ、悪いな」

 ひなたから渡されたポーションを飲んで回復した。
 痛めたアバラも何事も無かったかのように消えていった。
 ポーションすごいな。

「アイリス……」

「お兄ちゃん……、倒したんだね?」

 回復した俺は、アイリスの元に向かう。
 アイリスの方は安堵した感じだが、内心で未だ恐怖に燻られているように感じた。

「ああ、大丈夫だったか?」

「うん、お兄ちゃんがかばってくれたおかげでね。 でも、ひなたお姉ちゃんの回復に安心したら、今までの緊張の糸が切れたせいかおしっこ漏らしちゃってたから別の意味では無事じゃないね」

 アイリスがそう言って苦笑いをしていた。
 よく見ると、座り込んでいるアイリスの太腿とスカートの一部が濡れていた。
 無理はない。 
 あの恐怖に今まで耐えただけでも褒めてやりたいくらいだ。
 そう思いながら俺はアイリスを抱きしめていた。

「お兄ちゃん……」

「一旦、家に転移で戻ろう。 流石に今日は依頼どころじゃないしな」

「うん、ごめんねお兄ちゃん。 えへへ、とても暖かいや」

 俺は、アイリスが笑顔を取り戻すまで抱きしめた。
 その後、ひとまず転移アイテムでアイリスの家に戻って彼女を留守番させてから、ひなたと一緒に再度転移で現場に行き、バーサークバッファローの角の1本を斬り落とした。
 その角はアイリス曰く固いらしいが、【格闘家】の素質を全開にしたまま剣を振ったので、意外にあっさり斬り落とせた。
 手に取ってみると、材質もいい感じのようだ。
 俺とひなたは魔法のカバンで角を収納し、死体は一時的に保存の魔法を掛けてこの場に置いた。
 報告後、改めて調べてもらうためだ。
 そして、俺達はギルド前に転移し、サラトガさんに今回の件を報告するためにギルドの扉を開いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

浪人生が元クラスメイトと異世界転移したら悪魔になりました

みっくす俺!!
ファンタジー
容姿端麗、頭脳明晰そんな3年1組の元委員長佐渡翔は受験で大挫折 信頼は失い性格は荒れておまけにセンター試験で大失敗からの浪人生に 真面目に勉強すれども成績は上がらない そんな頑張る少年に女神様が手を差し伸べるー って俺悪魔かよっ! 天使に勇者に精霊使いに…クラスメイトみんなチート職 異世界に散らばったクラスメイトを皆集めて協力して去年の課題置いてきたものを見つけるそんなストーリー さあ、異世界へ行きましょう 今は異世界転移が起きやすくなってますから

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...