サモンブレイブ・クロニクル~無能扱いされた少年の異世界無双物語

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
上 下
26 / 140
第2章 異世界邂逅編

26 対【漆黒】その2~リーダー&副リーダー戦~

しおりを挟む
「まさか、たった十数人に手下が皆殺しにされるとはなぁ」

 手下を殲滅した直後に恨み節を嘆きながら登場した男二人。
 スキンヘッドの男が元Bランクの冒険者だった男で、目つきの悪いメッシュの男は、脱出の手引きをした【シーフ】と【錬金術師】の素質を持つ副リーダーだった。
 ようやく本命二人のお出ましってやつか。

「だが、俺たちが出て来たからには好きにはさせんぞ」

「そうさ、俺たちに刃向った報いをうけさせてやるぜぇ」

 二人はこちらの話を待たずに臨戦態勢。

「やれやれ、せっかちさんは嫌われるよ」

 ひなたも改めて剣を構えて臨戦態勢だ。
 俺や他のみんなもそうだ。 
 話し合いなどするつもりはない。

「俺とアイリスとひなたであのメッシュ野郎を先にやります。 他のみなさんは俺たちが合流するまでスキンヘッドの男を足止めしてください」

「わかったぜ、アキト! お前らも気をつけろよ!」

 こうして、俺たちはメッシュの男に、カイゼルさん達はスキンヘッドの男に向かって突撃する。

「ちっ!」

 メッシュの男が突然の事で、体勢の立て直しを迫られる。

「【サンダースピア】!」

「うぐぉっ!?」

 その隙にアイリスが電撃の魔法を放つ。
 メッシュの男は避けられず、電撃を受ける。
 その間にひなたは武器を持ち替え、ガルタイト国の兵士から奪った剣で上から下へと斬り下ろそうとした。

「甘いっ! 【ディスマントル】!」

 メッシュの男が手を剣の方にかざすとすぐに剣が分解される。

「あれは【錬金術師】のスキルの一つで分解魔法だよ! あれで鉄格子を分解させたんだね!」

「なるほどね……でもっ!」

 アイリスが言うにはアレが【錬金術師】のスキルの一つで、大抵の物質を分解させる魔法らしく、多分鉄格子もこうして分解ならびに解体することで脱出を手引きしたのだろう。
 だが、俺たちはこれを狙っていた。

「甘いのはそっちだよ!!」

 分解された剣を即座に手放したひなたが、男の腕を掴み……。

「どっせぇぇぇいっ!!」

「うぐあぁぁっ!?」

 そのまま背負い投げをした。
 受け身を取るのが下手だったのか、メッシュの男は投げられた瞬間のダメージで動けないままだ。

「ガゼル!? てめぇら……!!」

「おおっと、お前の相手はこの俺だ!」

「て、てめぇ……!」

 ひなたに投げられたメッシュの男……、ガゼルと言ったか。
 奴の様子を見て俺たちに襲い掛かろうとしたが、カイゼルさんが止めた。

「そういう事だ……よっ!」

「うぐっ……!?」

 その合間にリックさんが毒入りナイフで脚部を切りつけていた。
 男が毒に侵され、動きが鈍っているのが分かる。

「う、うぐ……」

 よろめきながら立ち上がるガゼル。
 しかし、満身創痍のようだ。 
 ひなたの奴、密かに【グレートブースター】を使ったか?

「殺す……、絶対殺ぉぉぉぉす!!」

 ナイフを構えて、すぐに俺の方に襲い掛かる。
 しかし、ダメージのせいで思った以上にスピードがでないようだ。

「遅ぇよ」

 すれ違いざまに一閃。
 これもひなたの祖父にひなたと共に叩き込まれた一閃の剣術【虚空】。
 ガゼルの身体は上半身がずり落ちるように下半身と分断された。

「が、ガゼルゥゥゥ!!」

 その様子を見たスキンヘッドの男が絶叫。

「よくもガゼルをぉぉぉぉっ!!」

 毒が回っているにも関わらず、気合でカイゼルさんを振り切り、俺に襲い掛かる。
 思い切って振り下ろすその様子は、この男はカイゼルさんと同じく【重戦士】の素質持ちだろう。
 しかし、カイゼルさん程じゃない。
 モーションが単純で、簡単に避けられる。

「【アイシクルランス】!!」

 その時、男の背後にいたクレアさんが氷の魔法を放つ。

「うぐあっ!!」

 俺に集中していたので背後の氷の槍に気付かなかった。
 そのせいで男の背中に氷の槍が突き刺さる。

「【エアカッター】!!」

「あがあぁぁぁっ!?」

 続けてエミリーさんがかまいたちを発生する魔法を放っていた。
 そのかまいたちが、男の身体を切り刻んでいた。
 しかし、ここで男の様子が豹変した。 怒りに身を任せたようだ。

「て、てめぇら……! ここまでコケに…しやがってぇぇぇ!!」

「危ない!! 避けろ!!」

 激昂したスキンヘッドの男が思いっきり地面にハンマーを叩きつけた瞬間、衝撃波が発生した。

「きゃあぁぁぁっ!!」

「うわぁぁぁっ!?」

 突然の衝撃波にエミリーさんとクレアさん、そしてリックさんとリリアさんは吹き飛ばされる。

「す、すごい衝撃波だよ、これ……!」

「とんだ技を隠し持ってたとはな。 流石というべきか?」

「暁斗君に同意するよ。 毒が回ってるのにね」

 アイリスは即座に結界を張ることで、俺とひなたとカイゼルさんはバックステップで距離を取ることで事なきを得た。

「へっ、毒が回ってんのに相当気合入ってるじゃねぇか」

「うるせぇ……よっ!!」

 カイゼルさんの挑発に激怒したのか、男は今度はやみくもにハンマーを振り回すようになった。
 怒りに飲まれたその様子はもはや重戦士の面影はない。
 俺は距離を取りつつ、あの呪術を行使した。

「【ペインカース】」

「うがっ!? い、いてぇぇぇぇぇっ!! ぎゃあぁぁぁぁっ!!」

 そう、痛覚強化の呪術【ペインカース】。
 ただでさえ、リックさんの毒で抵抗力が落ちてるんだ。 
 ここで使えば、痛覚の呪いも存分に効果を発揮する。
 強化された痛みにのたうち回るスキンヘッドの男。
 その無様な姿は、あまりにも滑稽に見えた。

「さて、もう終わらせようか……」

 アイリスがそう言って魔法の詠唱に入る。
 スキンヘッドの男が立ち上がろうとするも、痛覚が強いので立ち上がれない。
 そして、無慈悲にも詠唱が終わり、魔法が発動する。

「【フレイムブラスト】」

 解き放った魔法はおそらく火の上級クラスだろう。
 男の周りに業火が発生し、速攻で包み込んだ。

「お、俺を……認めなかった……世界……を……、にく…」

 言い切る前に、炎によって焼き尽くされた。
世界を憎む……、って言いたかったのか?
 だが、【フレイムブラスト】の炎で男を灰化した今、その答えは返ってこない。

「痛ぅ……、終わったみたいだね……」

「少しの……間、痛みで……気を……失ってた……、ごめん……」

 エミリーさんとクレアさんがあの衝撃波でのダメージを負ったまま、痛みをこらえてこっちに来た。
 リックさんもなんとか立ち上がってるみたいでよかった。
 リリアさんは、別の回復術師の女性がダメージを回復させているが、気を失ったままだ。

「お疲れ様だ。 これで【漆黒】の壊滅に成功した。 報酬はひとまず回復を終わらせてからにしよう」

 クリストフ国王の一言で、殲滅作戦が終了した。
 リリアさんも無事意識を取り戻し、他の人のダメージを回復を終わらせた後、コテージのある地点に戻っていった。
 奴らとの戦いは長いようで短い……、そんな感じだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...