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第2章 異世界邂逅編
19 魔王イリアゲートとの会話(後編)
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「ホムンクルス…?」
「ええ、ホムンクルスです」
あまりにも驚きを通り越した内容だった。
ひなたがおうむ返しするかのように聞き返したくらいだ。
イリアゲートさんも、頷きながら話を続ける。
「ガルタイト現国王は簡単にホムンクルスを作れる禁術を手にして、即座に遂行されていたそうです。 やり方は、術者の血を魔方陣に垂らす事、それだけです。 故に命の理を犯すために禁術として封印されていたのですが……」
ガルタイト国王はそれを解いて入手し、ホムンクルスを作ったというわけか。
確かに手段を選ばなくなってるな。
「あなた方魔族がそれを知ったのはいつ頃だったのですか?」
「あの時の謝罪から3ヶ月後です。 母がガルタイト国王の不穏な動きを察し、諜報部隊を差し向けた事で知りました。 その後も、諜報部隊の1部隊を再編成して差し向けたままにしています」
「我々の方にも、その話が届いた時には驚いたよ。 しかも、どうやって封印を解いたかはわからないままだ」
イリアゲートさんの話の後に、どうやって解いたのかすらわからないとクリストフ国王も続けて話をしてくれた。
あの時の憎しみだけで、禁術の封印を解くとか、ある意味行動力が凄いな。
そこで、ひなたがある事を察した。
「もしや、あの王女達は……?」
「ザナとアンという名前の王女は、ホムンクルスなんです。 これは訪問の途中での諜報部隊からの報告で知った事なのですが、実は多くの兵士やメイドも皆、ホムンクルスだったのです」
「はい!?」
開いた口が塞がらなくなったのは、これで何回目だろうか。
そう思いたくなる位の驚きの連続だった。
いわば、今のガルタイト国の王家は、国王と宰相以外はほぼホムンクルスで占めているわけだ。
「だが、これで納得もいった。 40年前の出来事によるガルタイト王族の生き残りは現国王しかいないのだからな。 特に二人のホムンクルスの王女については、血を残す手段でもあったのかも知れないな」
クリストフ国王も納得がいったかのような様子で言った。
確かに国王一人じゃ王族を維持することは不可能だ。 血を残すために、国を維持するためにやったのだろうな。
しかし、次の話で冷静さを失いかけようとしていた。
「その禁術で、ホムンクルスの兵士等を量産したガルタイト国は、まず最初に自分を批判した周辺国を攻めました。 兵力の乏しい国はあっさり陥落。 次の国も、強めの兵力を持ってましたがホムンクルス兵士には勝てなかったようで、結局ガルタイト国に占領されました。 占領後は、徹底して魔族殲滅主義を叩き込む恐怖政治を遂行しています」
ああ、批判した国を武力で制圧し、そのまま恐怖政治をしていたのか。
呆れる位に酷さが増してるな、あの国は。
また、怒りが沸いてきた。
今回はなかなか治まることが出来ないでいる。
すると、隣から俺の手を添えるような感触があった。
そこにはアイリスが心配そうな表情で俺を見ていた。
「お兄ちゃん、落ち着こう? 怒りが顔に出てるから」
怒りが露になっていたのだろう。
隣のアイリスがなだめてくれた。
「ああ、ごめん。無意識に怒りが沸いてたのか」
俺は額に手を当てながら落ち着こうとする。
ひなたも心配そうな顔で俺を見ている。
その傍らで、クリストフ国王がフォローしつつ話し始める。
「暁斗くんが怒りを露にするのも無理はない。 それくらいの非道を40年かけて実行しているからね。 我が国も怒りを隠し切れない位許せないが、同時にガルタイト国の非道な行為を40年もの間、許してしまったからね」
「と言いますと?」
「魔族の諜報部隊ですら欺ける力があの国王にあったのさ。 催眠術の話はしたね? それに呪いを付加させて偽装した情報を与えさせたのさ。 当時の魔族の諜報部隊も父時代の王政も、『呪術師』の素質がなかったために、見事に引っ掛かった訳だよ」
マジか。
ただでさえ催眠術は呪術の一種なのに、そこからさらに新たな呪いを付加させるとか、とんでもない事をしてくるんだな。
それで40年間やってきた訳か。
「私達、魔族もそれに気付いたのは、ガルタイト国の周辺国が占領された後でした。 急遽、『呪術師』の素質を持った諜報部隊に編成し直して派遣しました」
「幸い、我が国は兵士の中に移住している魔族がいる分、兵力がかなり強いから、ガルタイト国の侵略からはね除けているがね」
そうか、魔族との交友関係が根強いガイアブルク王国は、魔族の住民もいるのか。
そのまま兵士に志願してもおかしくはないか。
「このままでは埒が明かない。 そう判断したガルタイト国は、別の禁術を行使することに踏み切ったのです」
「それが私達を勇者として召喚したやつ……」
「はい、『異界勇者召喚術』です。 ガルタイト国は私達魔族を殲滅させるには異界の者しか持たないとされる勇者の素質を持つ者が必要と判断したようです」
それが、今の勇者至上主義に繋がるのか。
とはいえ、あれも禁術だったのか。 俺は初めて知ったぞ……。
「相手の意思を無視して、異界から召喚するという危険性を持った術なので、禁術指定して封印されたのですが、これもガルタイト国がどうやって解いたのかは知られていません」
確かに、急に景色が変わって王城にいたわけだからな。
半分の人間が混乱していたし、人によっては元の世界に帰せという罵声すら、ガルタイト国王のヘイトに対して浴びせていたからな。
「勇者はあらゆる呪いの耐性を持ち、能力も強めの為、脅威とみなしてました。 しかし、暁斗様とひなた様が、ガルタイト国を出た事で流れが変わろうとしています」
より真剣な眼差しで俺とひなたを見る。
それだけ、イリアゲートさんにとっては俺たちがここにいる事が重要なのだろう。
「今後、あなた達に追手が来るでしょう。 いざというときに私達もあなた達を支えたいと言う事を伝える為に、今回の訪問を決意しました」
イリアゲートさんの真剣さは伝わった。
向こうでは無能扱いされた俺と、勇者の素質を持ちながら、ガルタイトを裏切った形のひなた。
確かな彼女からしたら、流れを変える存在なのだろう。
俺たちは、冒険者としてスタートを切ったばかり。
何が起こるかは分からないので、その想いを受け入れたいが……。
「我々の方でも君たちを全面的にサポートをするさ。 だが、さらなるバックアップとして彼女の支援も受ければ尚心強いはずだ。 特にひなたくんは勇者でありながらガルタイト国を裏切ってる形だからね」
クリストフ国王からもお墨付きをもらい、俺とひなたはお互い顔を合わせて頷きあう。
「分かりました。 よろこんでお受けします」
そして、俺はイリアゲートさんに想いを受け取る旨を伝えた。
「ありがとうございます。 以後は私たちからもあなた達を支援していきますのでよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言って、俺とイリアゲートさんはしっかりと握手をした。
こうして、イリアゲートさんとの長い会談は終わりを告げた。
今後はガイアブルク王国だけでなく、魔族領からも支援が得られた形となる。
その想いを無駄にしないために、俺たちも強くならないといけないと決意を新たにした。
「ええ、ホムンクルスです」
あまりにも驚きを通り越した内容だった。
ひなたがおうむ返しするかのように聞き返したくらいだ。
イリアゲートさんも、頷きながら話を続ける。
「ガルタイト現国王は簡単にホムンクルスを作れる禁術を手にして、即座に遂行されていたそうです。 やり方は、術者の血を魔方陣に垂らす事、それだけです。 故に命の理を犯すために禁術として封印されていたのですが……」
ガルタイト国王はそれを解いて入手し、ホムンクルスを作ったというわけか。
確かに手段を選ばなくなってるな。
「あなた方魔族がそれを知ったのはいつ頃だったのですか?」
「あの時の謝罪から3ヶ月後です。 母がガルタイト国王の不穏な動きを察し、諜報部隊を差し向けた事で知りました。 その後も、諜報部隊の1部隊を再編成して差し向けたままにしています」
「我々の方にも、その話が届いた時には驚いたよ。 しかも、どうやって封印を解いたかはわからないままだ」
イリアゲートさんの話の後に、どうやって解いたのかすらわからないとクリストフ国王も続けて話をしてくれた。
あの時の憎しみだけで、禁術の封印を解くとか、ある意味行動力が凄いな。
そこで、ひなたがある事を察した。
「もしや、あの王女達は……?」
「ザナとアンという名前の王女は、ホムンクルスなんです。 これは訪問の途中での諜報部隊からの報告で知った事なのですが、実は多くの兵士やメイドも皆、ホムンクルスだったのです」
「はい!?」
開いた口が塞がらなくなったのは、これで何回目だろうか。
そう思いたくなる位の驚きの連続だった。
いわば、今のガルタイト国の王家は、国王と宰相以外はほぼホムンクルスで占めているわけだ。
「だが、これで納得もいった。 40年前の出来事によるガルタイト王族の生き残りは現国王しかいないのだからな。 特に二人のホムンクルスの王女については、血を残す手段でもあったのかも知れないな」
クリストフ国王も納得がいったかのような様子で言った。
確かに国王一人じゃ王族を維持することは不可能だ。 血を残すために、国を維持するためにやったのだろうな。
しかし、次の話で冷静さを失いかけようとしていた。
「その禁術で、ホムンクルスの兵士等を量産したガルタイト国は、まず最初に自分を批判した周辺国を攻めました。 兵力の乏しい国はあっさり陥落。 次の国も、強めの兵力を持ってましたがホムンクルス兵士には勝てなかったようで、結局ガルタイト国に占領されました。 占領後は、徹底して魔族殲滅主義を叩き込む恐怖政治を遂行しています」
ああ、批判した国を武力で制圧し、そのまま恐怖政治をしていたのか。
呆れる位に酷さが増してるな、あの国は。
また、怒りが沸いてきた。
今回はなかなか治まることが出来ないでいる。
すると、隣から俺の手を添えるような感触があった。
そこにはアイリスが心配そうな表情で俺を見ていた。
「お兄ちゃん、落ち着こう? 怒りが顔に出てるから」
怒りが露になっていたのだろう。
隣のアイリスがなだめてくれた。
「ああ、ごめん。無意識に怒りが沸いてたのか」
俺は額に手を当てながら落ち着こうとする。
ひなたも心配そうな顔で俺を見ている。
その傍らで、クリストフ国王がフォローしつつ話し始める。
「暁斗くんが怒りを露にするのも無理はない。 それくらいの非道を40年かけて実行しているからね。 我が国も怒りを隠し切れない位許せないが、同時にガルタイト国の非道な行為を40年もの間、許してしまったからね」
「と言いますと?」
「魔族の諜報部隊ですら欺ける力があの国王にあったのさ。 催眠術の話はしたね? それに呪いを付加させて偽装した情報を与えさせたのさ。 当時の魔族の諜報部隊も父時代の王政も、『呪術師』の素質がなかったために、見事に引っ掛かった訳だよ」
マジか。
ただでさえ催眠術は呪術の一種なのに、そこからさらに新たな呪いを付加させるとか、とんでもない事をしてくるんだな。
それで40年間やってきた訳か。
「私達、魔族もそれに気付いたのは、ガルタイト国の周辺国が占領された後でした。 急遽、『呪術師』の素質を持った諜報部隊に編成し直して派遣しました」
「幸い、我が国は兵士の中に移住している魔族がいる分、兵力がかなり強いから、ガルタイト国の侵略からはね除けているがね」
そうか、魔族との交友関係が根強いガイアブルク王国は、魔族の住民もいるのか。
そのまま兵士に志願してもおかしくはないか。
「このままでは埒が明かない。 そう判断したガルタイト国は、別の禁術を行使することに踏み切ったのです」
「それが私達を勇者として召喚したやつ……」
「はい、『異界勇者召喚術』です。 ガルタイト国は私達魔族を殲滅させるには異界の者しか持たないとされる勇者の素質を持つ者が必要と判断したようです」
それが、今の勇者至上主義に繋がるのか。
とはいえ、あれも禁術だったのか。 俺は初めて知ったぞ……。
「相手の意思を無視して、異界から召喚するという危険性を持った術なので、禁術指定して封印されたのですが、これもガルタイト国がどうやって解いたのかは知られていません」
確かに、急に景色が変わって王城にいたわけだからな。
半分の人間が混乱していたし、人によっては元の世界に帰せという罵声すら、ガルタイト国王のヘイトに対して浴びせていたからな。
「勇者はあらゆる呪いの耐性を持ち、能力も強めの為、脅威とみなしてました。 しかし、暁斗様とひなた様が、ガルタイト国を出た事で流れが変わろうとしています」
より真剣な眼差しで俺とひなたを見る。
それだけ、イリアゲートさんにとっては俺たちがここにいる事が重要なのだろう。
「今後、あなた達に追手が来るでしょう。 いざというときに私達もあなた達を支えたいと言う事を伝える為に、今回の訪問を決意しました」
イリアゲートさんの真剣さは伝わった。
向こうでは無能扱いされた俺と、勇者の素質を持ちながら、ガルタイトを裏切った形のひなた。
確かな彼女からしたら、流れを変える存在なのだろう。
俺たちは、冒険者としてスタートを切ったばかり。
何が起こるかは分からないので、その想いを受け入れたいが……。
「我々の方でも君たちを全面的にサポートをするさ。 だが、さらなるバックアップとして彼女の支援も受ければ尚心強いはずだ。 特にひなたくんは勇者でありながらガルタイト国を裏切ってる形だからね」
クリストフ国王からもお墨付きをもらい、俺とひなたはお互い顔を合わせて頷きあう。
「分かりました。 よろこんでお受けします」
そして、俺はイリアゲートさんに想いを受け取る旨を伝えた。
「ありがとうございます。 以後は私たちからもあなた達を支援していきますのでよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言って、俺とイリアゲートさんはしっかりと握手をした。
こうして、イリアゲートさんとの長い会談は終わりを告げた。
今後はガイアブルク王国だけでなく、魔族領からも支援が得られた形となる。
その想いを無駄にしないために、俺たちも強くならないといけないと決意を新たにした。
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