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第1章 異世界召喚編

12 一夫多妻と極悪貴族の断罪依頼

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「えーっと、なんでいきなり二人を嫁にしてくれと? 確かに一夫多妻制を採用してるとさっき聞きましたが……」

 クリストフ国王の唐突な発言に戸惑う。
 ひなたならともかく、アイリスちゃんも嫁にするとか、アイリスちゃんの意思はどうなってるのか……と思ってたら当人からこう言ってきた。

「私もね。 王都に来るまでの道中でお兄ちゃんとお話してる時に心がポカポカしてたんだよ。 それと同時にお兄ちゃんを支えたいなって思っててね。 だからひなたお姉ちゃんにはこっそり先に今の制度の事も言っておいたんだよ」

 それでか……。
 ひなたが寝てる間にいろんな話をしてたし、国王と通信した後も、話を弾ませてたから、彼女にとってそれが楽しかったのかも知れないな。
 それにこの世界の事を知らない俺にとって、アイリスちゃんの支えたいっていう言葉は何よりも嬉しい事だ。
 それよりもひなたにこっそり今の一夫多妻制度を話していたとは……。
 どおりでひなたがほぼノーリアクションだったわけだ。
 まぁ、なんにせよここまで言われたら受け入れないと男が廃るってもんだ。

「分かりました。 その申し出は受けさせていただきます」

「やったぁ♪」

 満面の笑顔で喜ぶアイリスちゃん。
 ひなたも嬉しそうだ。
 それをよそに国王は話を続けてきた。

「娘は君の話題になると目を輝かせたようにテンションが上がってたんだよ。 それを知って、ああよかったと思ってね」

「……と言いますと?」

「我が国が一夫多妻制度を採用しているのはさっき話したが、それを利用して徹底的に女性を無理やり自分の妻にしている貴族が存在しててね。 こっちで断罪はしているんだが、また、別の貴族が同じことをするため、いたちごっこなのが現状だ」

 一夫多妻制度を悪用している輩がいたのか。
 しかも、無理やり自分の妻にするとか、そいつら相手の意思なんぞどうでもいいってか?
 なんか、ガルタイト国を思い出してきた……。

「しかも今回の貴族は、厄介でね。 我が国の法律で禁止されてる寝取りも平気で実行している。 多くの国民からの被害報告も寄せているから、この貴族も断罪対象なんだが……」

「何か厄介な事でも?」

「ああ、その貴族は催眠術をつかって、寝取った事実を隠している。 兵士や憲兵もそれにかかって、あたかも自分の意思で離婚しましたということにされているんだ。 そう言ったこともこっちに報告されてる」

 今まで以上に質が悪い奴か。
 人の妻を催眠術を使ってでも強引に自分のものにするとか……人間の屑か。

「そこにどこから仕入れたのか、娘のアイリスとひなたくんも奴に目を付けられた」

「な……!?」

 ひなたやアイリスちゃんがそんな奴に目を付けられたのか!
 それを知ったひなたやアイリスちゃんは、怒りを隠しきれない。
 好きでもない奴に目を付けられたんじゃたまったものではないからな。
 そして、国王はこう言ってきた。

「それで、ひなたくんとアイリスを暁斗くんの嫁にすることはさっき確約したから、それを利用する。 それによって奴をおびき寄せる。 幸い勇者であるひなたくんやアイリスは当然催眠術に耐性を持つし、さっき測定した暁斗くんも【呪術師】の素質ありの影響で催眠術の耐性があるからね。 奴は断罪対象だから、その場で君たちに断罪してもらって構わないよ」

「なるほど、夫婦となった俺たち三人が餌にということですか」

「そういうことだ。 君たちには申し訳ないが、催眠術に耐性をもつ君たちにしかできないことだ。お礼は弾むよ」

 つまり、耐性の高い俺たちが、餌となり、奴を断罪すること。
 法律を犯して女を無理やり自分のものにするというこの極悪貴族を消すことで、法律もより厳しめに改正していくつもりだろう。

「了解しました」

 俺は今回の依頼を二つ返事で了承した。
 そんな奴が邪魔しに来るなら、こっちで迎え撃って幸せな生活を送りたいからな。

「それじゃ、住居だが同じ西地区にあるアイリスの別荘でいいだろう」

「うん、そこならお兄ちゃんやひなたお姉ちゃんと一緒に住むにも十分な広さだしね」

 アイリスちゃんの別荘、西地区にあるのか。
 婚姻手続きの後に案内してもらえるとのことなので、早いところ済ませてその別荘に行こう。

◇◇◇◇◇◇

 手続きを済ませ、アイリスちゃんの別荘に入る。
 場所的には、さっきの役所の役割を担う別荘とは徒歩10分の距離。
 そんなに遠くはないか。
 彼女用の別荘も、そこそこ大きく大家族向けだと言えよう。
 別荘の玄関から中に入り、荷物を置く。
 そして、俺は一呼吸置いてこう告げた。

「こんな俺だけど、これからよろしく頼むよ」

 こんな感じで俺は簡単にだがあいさつをした。
 前の世界では考えられなかったが、二人を嫁にするのも何かの縁だから。

「こちらこそよろしく頼むよ、暁斗君」

「うん、よろしくね。 あと、折角だし今後私の事を呼び捨てで呼んでもらいたいなー」

「ああ、そうだったな。分かったよ、アイリス」

「うん、えへへ……」

 頭を撫でながらアイリスの要望に応える。
 嬉しそうに目を細めている表情が可愛いなぁ。
 隣のひなたも、心なしか微笑んでいるみたいだ。

「さて、件の依頼を遂行する前にトイレに行こうと思うけど、トイレはどこかな?」

「あ、案内するよ。 お兄ちゃんもついてきて」

「えぇ……」

 ひなたがトイレに行くとのことで、アイリスがトイレの場所を案内するんだけど、何故か俺も腕を引っ張られ強制連行された。
 そして、アイリスも一緒にトイレに入り用を足していたようだ。
 俺はトイレの前で待っていた。
 その間も向こうから話を振ってきたので色々話していた。

「お待たせ。 じゃあ、依頼を遂行しに行こう。 気配察知からすでにここを嗅ぎつけているみたいだし」

「みたいだね。 これ以上、被害を受ける人を増やさないためにもやろう。 国王様からは断罪の許可ももらってるし」

「ああ、力の制御もままならないけどな……。 国王からは殺っても問題はないって言ってたからな」

「数は取り巻きっぽいのが二人いるね。 まずはそこから……」

 気合を入れて、玄関から外に出る。
 そして、門の左右に植えられている木々に向けてアイリスは魔法を放つ。

「【アイスアロー】!!」

 氷の矢が2本ずつ、それぞれの木々に向かって放つ。

「「ぐわっ!?」」

 悲鳴の後、木々から落ちていく男たち。
 サングラスをしていたその男は、件の人物の部下なのだろう。
 アイリスの氷の矢によって胸を刺され、そのまま絶命した。

「くそ、まさかバレてたとはな」

 そうして、木々から別の影が現れた。
 奴の名前は、あらかじめ極秘に国王様から聞いていた。

「あんたが、クーズ・キチレコーだな?」

 容姿はイケメンだが、中身はあからさまに歪んでいたその男は、名前も歪んでいた。
 こんな奴でも貴族であるというのが納得がいかない位の存在だった。
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