上 下
3 / 14

03 大好きな彼がボロボロになってました

しおりを挟む
「というか、ルーくんが何でこんな事に? 身体もボロボロだし……」

「我々にも分かりませんが……、おそらく彼は北側からこっちに来たものだと思います……」

「帰って来た……と言うべきかしら。 こんな状態でだけど」

 横たわっているボロボロの状態のルーくんことルクス・フォートナイト君の傍でボクとカタリナ叔母さんと兵士さんで話をした。
 彼はどうも北側から来た……というより『戻って』きたというべきだろうか。
 
「とにかくうちの娘……アメリアを呼んで頂戴。 確かあの子は教会にいるはずよ」

「はっ、畏まりました」

 叔母さんが兵士さんに教会にいるとされるアメリアという少女を呼ぶように伝えた。
 アメリア・カトワールはカタリナ叔母さんの実の娘で、ボクの従妹いとこであり、さらには回復魔法のスペシャリストとされる『聖女』でもある。
 確かにアメリアならルーくんを治す事も簡単だろうね。
 でも、そんな事を考えていると何故か不意に身体が震えて来た。
 それに気付いたカタリナ叔母さんが声を掛けてくれた。

「ネディ……、ルクス君が追い出された後の事……思い出しちゃったのね?」

「うん……」

「大丈夫よ。 もうあなたを縛るものはいないから。 あの時、気付いてあげられなくてごめんね」

「うん……」

 カタリナ叔母さんはボクを優しく抱きしめながら謝罪していた。
 その時に不意に流れた涙は、なかなか止まらなかった。
 
 4年前に家族ごと彼がここから追放された時はショックを受けたのは未だに忘れられないし、そんなボクに対する毒親の態度も気に食わなかった。
 だが、まだボクは子供であるが故に毒親に逆らう事が出来ず、成すがままにされるしかなかったのだ。
 自分達の思うままに動く人形と化するための『英才教育』と言う名のスパルタ教育が未だにトラウマとなっている位だ。
 幸運にもあの学校の教頭先生が叔母さんの親友で、ボクの様子がおかしい事と、どこかで毒親が見張り続けている事を叔母さんに教えてくれたことで大きく動いたのだ。
 毒親は、自分達の障害である叔母さん達を欺く為に色々仕込みをしていたようで、貴族主義の国家にもパイプがあったようでそれを使って姉夫婦を欺いたのだ。
 それが教頭先生からの報告が入った事を知らずに見張っていたものだから、姉夫婦と国王が来たときは慌てていたと教えてくれたのだ。

「お待たせしました! ルー兄様がボロボロになって帰って来たって聞きましたが!」

「ええ、そこで横たわってるわ。 生きてはいるけど意識が無い状態よ」

「何て酷い……。 すぐにでも魔法で治しましょう!」

 暫くしてアメリアが慌てた様子で部屋に入って来た。
 カタリナ叔母さんはそれを咎めることなく、ルーくんが横たわってるベッドに指差しした。
 彼の様子を見たアメリアが、ショックを受けたようだが、すぐにきを取り直して聖なる杖をルーくんの身体に向けて詠唱を始めたのだった。
 これで治ってくれるといいんだけど……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...