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第三部 ダンジョンマスター 中編
ある商国の働きたくない社畜=1
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「なんか見るのが結構楽しくなってきた。このシーズン、全部放送されたのを一気見するような爽快感」
「わかる、たろーはそういうのためて一気に見る派?」
「好きな作品はちまちま見てた。その後時間があったら一気見だな。録画容量がえげつないことになるからこの方法はお勧めしないが......」
「そう。見るの楽しくなったのなら次いこっか」
「そうだな」
「次は――――、これまた癖が強いよ」
「働きたくないでござる」
高校生の時から言っている言葉。
それを隣の席から聞けるとは思っていなかった。
そしてその声を聞いた俺の回答は。
「もちろん働きたくないでござる」
そんなこと、上司に言えるはずもなく、一人喫煙所でぼそりとつぶやく。
ふぅ......タバコの煙が肺に沁みる。
そんなことを考えていた時だった。
一面が光に包まれたのは。
「ふぉっふぉっふぉっ、よく来てくれたの。ここは神の世界、とでも言うべき場所じゃ。おぬしたちにはこれから異世界へと行ってもらって、あることをしてもらう」
見た目は爺さんの格好をした人が、突然にそう伝えてくる。
しかしその目が語っている。面倒くさいと!
「ここにいる百人には、ダンジョンを作ってもらう。ルールはまぁ......いろいろあるから、ナビゲートつけとくので、そちらにきくよーに。なお、異論反論はうけつけないので、頼んだぞ」
あ、さらに面倒くさがって人に投げる。うちの上司そっくりだ。
とか考えていたら罰が当たったのだろうか。
一面が光に包まれた。
「知らない天井だ」
天井なんぞなく、青空が広がっているのだが。
慌てて起き上がる。周囲には結構な量の人がいた。ゴミのように見るには高さが足りないようだ。
「さて、ダンジョンだったかな」
俺は少し歩いた末に、あるギルドの裏に目を付けた。
「商業ギルドの裏にでも作るか」
暇だし。きっと金の力を使ってくれるだろう。
ゲームを作っていた俺としては、作ったゲームに金を払って参加してくれるなんて結構うれしいものだ。
「とりあえず、どうやったら作れるんだ?」
そう考えていた時だった。
「情報受信中――――――完了。」
「おはようございます、私はダンジョンマスター支援用ピクシー第0号です」
「お、君がピクシーか」
粘液、スライムのようなものが変形したかと思えば、急激にその体積を大きくし、そして収縮していった。
残ったのは小さな幼女。黒髪ロングの似合う、かわいらしい幼女だった。
赤いランドセルと黄色い帽子が似合いそうだ。
「こん......こんにちは!」
「あぁ、こんにちは」
低い声で続けるのかと思ったが、すぐに高い、外見に見合った声で挨拶をしたピクシー。
俺もとりあえず挨拶を返しておいた。
「それで、そうだ。ダンジョンを作りたいんだけど」
「わかりました。ポケットの中に入っている水晶を設置予定地点においてください!」
言われた通りと言っても、ポケットなんて......
そう思っていたが、何か勘違いをしたのだろうか、ポケットがついているズボンから、これまたびっくりこぶし大の水晶が出てきた。
これはポケットが拡張されているのか、はたまた水晶が特殊なのか。
と、思考をめぐらせるのは悪い癖だ。さっさと置いてしまおう。
「そい」
何とも気の抜ける声だと俺でも思った。
しかし気の抜けた俺とは違って彼女、ピクシーはしっかりとその様子を見ていた。
「どうした? 何かあったか?」
「い、いえ、何でもないです! ただ、私はほかの型とはちょっと違うのです......」
いきなり重要な話が舞い込んできた。
「私は処理能力も、戦闘能力も、何一つ突出してなくて、そのうえ実習を受けただけみたいな感じなんです」
「つまり?」
「バリバリ新人です!」
なんと、こんなところに合法ロリOLがいた。
なんてこれからのビジネスパートナーに失礼な評価だったか。事実なので取り消しはしないが。
「まぁ、一緒にやっていこうぜ」
「はいです!」
くぁわいい。
完成したのは塔。
塔のタイプというのは珍しいそうで。
「大体皆さんは見つかりにくい洞窟とかにするらしいです」
「そうなのか。まぁ塔でいいよ」
「これが編集用の端末なのです!」
渡された端末はタブレットで正直俺の慣れているものではない。
「パソコンとか使えたらなぁ」
「あります、パソコン!」
どやぁ、という顔をしてピクシーはパソコンを召喚した。
「ならこれをここに設置。完成だ」
「これからどうされるのですか?」
「そりゃ決まってる、最高のゲーム製作だ」
パソコンを立ち上げる。
既にダンジョン作成のためのソフトは入っているようだ。というよりそれ以外がほとんど使えない。
「とりあえずこれだけ使えたらあとはっと」
ソフトを立ち上げ、画面を表示する。
欲を言えば三画面ほしいが、先ほど見えたポイントをケチるために一画面で我慢だ。
ダンジョンの製作画面になったので、とりあえず。
「一階層は迷路って相場が決まってるんだ」
ポイントを使用して大きめに迷路だけを作成した。
そしてポイントが余っているうちに三階層まで製作。
「二階層は......お、なんだこれ」
そこにあったのは、詳細設定用ボタンだった。
「私は能力が突出していない代わりにその詳細設定が使えるのです!」
どうやら彼女の特権らしい。いずれほかの人にも使えるようになる機能の可能性もあるが、今使えるのであればほかのことは考えなくて良いだろう。
詳細設定を開くと、その壁の角度や分厚さ、強度やギミックまで細かく設定できるようになっていた。
その中でも興味を引いたのは。
「階層内ランダム転移って、これだろ」
目指すは迷いの森。
全域に同じように木を植え付け、見た目で場所がわからないようにする。
「これでよし」
三階にパソコン兼自室を設置。まだパソコンしかないが、これだけでもまだ十分だろう。
「保存、っと」
その瞬間、周囲の風景が切り替わって石づくりの場所になった。
「これは......ゲームの中にいるみたいだ!」
最高だ! 俺がゲームのラスボスとして君臨できるのだから!
「これはゲームではないです。証拠に、このダンジョンが攻略された時点で私もあなたも死ぬのです」
「なんだって!?」
その瞬間、衝撃が走った。
「このポイントの増やし方はどうやるんだ!」
「これですか、DPは主に自然回復、侵入者を撃退、侵入者の滞在の三点で回復です、自然回復は少ないのであんまり期待しないほうがいいかもしれないです」
「そうかそうか」
しかし、俺は気にしない。
何故かって? 夢が叶ったからだ。
ゲームの世界のラスボスになる。
ようやっと、なることが出来た。
「よっしゃかかってこいやぁぁぁぁああああ!」
こうしてまた一人の男のダンジョン製作が始まった。
「わかる、たろーはそういうのためて一気に見る派?」
「好きな作品はちまちま見てた。その後時間があったら一気見だな。録画容量がえげつないことになるからこの方法はお勧めしないが......」
「そう。見るの楽しくなったのなら次いこっか」
「そうだな」
「次は――――、これまた癖が強いよ」
「働きたくないでござる」
高校生の時から言っている言葉。
それを隣の席から聞けるとは思っていなかった。
そしてその声を聞いた俺の回答は。
「もちろん働きたくないでござる」
そんなこと、上司に言えるはずもなく、一人喫煙所でぼそりとつぶやく。
ふぅ......タバコの煙が肺に沁みる。
そんなことを考えていた時だった。
一面が光に包まれたのは。
「ふぉっふぉっふぉっ、よく来てくれたの。ここは神の世界、とでも言うべき場所じゃ。おぬしたちにはこれから異世界へと行ってもらって、あることをしてもらう」
見た目は爺さんの格好をした人が、突然にそう伝えてくる。
しかしその目が語っている。面倒くさいと!
「ここにいる百人には、ダンジョンを作ってもらう。ルールはまぁ......いろいろあるから、ナビゲートつけとくので、そちらにきくよーに。なお、異論反論はうけつけないので、頼んだぞ」
あ、さらに面倒くさがって人に投げる。うちの上司そっくりだ。
とか考えていたら罰が当たったのだろうか。
一面が光に包まれた。
「知らない天井だ」
天井なんぞなく、青空が広がっているのだが。
慌てて起き上がる。周囲には結構な量の人がいた。ゴミのように見るには高さが足りないようだ。
「さて、ダンジョンだったかな」
俺は少し歩いた末に、あるギルドの裏に目を付けた。
「商業ギルドの裏にでも作るか」
暇だし。きっと金の力を使ってくれるだろう。
ゲームを作っていた俺としては、作ったゲームに金を払って参加してくれるなんて結構うれしいものだ。
「とりあえず、どうやったら作れるんだ?」
そう考えていた時だった。
「情報受信中――――――完了。」
「おはようございます、私はダンジョンマスター支援用ピクシー第0号です」
「お、君がピクシーか」
粘液、スライムのようなものが変形したかと思えば、急激にその体積を大きくし、そして収縮していった。
残ったのは小さな幼女。黒髪ロングの似合う、かわいらしい幼女だった。
赤いランドセルと黄色い帽子が似合いそうだ。
「こん......こんにちは!」
「あぁ、こんにちは」
低い声で続けるのかと思ったが、すぐに高い、外見に見合った声で挨拶をしたピクシー。
俺もとりあえず挨拶を返しておいた。
「それで、そうだ。ダンジョンを作りたいんだけど」
「わかりました。ポケットの中に入っている水晶を設置予定地点においてください!」
言われた通りと言っても、ポケットなんて......
そう思っていたが、何か勘違いをしたのだろうか、ポケットがついているズボンから、これまたびっくりこぶし大の水晶が出てきた。
これはポケットが拡張されているのか、はたまた水晶が特殊なのか。
と、思考をめぐらせるのは悪い癖だ。さっさと置いてしまおう。
「そい」
何とも気の抜ける声だと俺でも思った。
しかし気の抜けた俺とは違って彼女、ピクシーはしっかりとその様子を見ていた。
「どうした? 何かあったか?」
「い、いえ、何でもないです! ただ、私はほかの型とはちょっと違うのです......」
いきなり重要な話が舞い込んできた。
「私は処理能力も、戦闘能力も、何一つ突出してなくて、そのうえ実習を受けただけみたいな感じなんです」
「つまり?」
「バリバリ新人です!」
なんと、こんなところに合法ロリOLがいた。
なんてこれからのビジネスパートナーに失礼な評価だったか。事実なので取り消しはしないが。
「まぁ、一緒にやっていこうぜ」
「はいです!」
くぁわいい。
完成したのは塔。
塔のタイプというのは珍しいそうで。
「大体皆さんは見つかりにくい洞窟とかにするらしいです」
「そうなのか。まぁ塔でいいよ」
「これが編集用の端末なのです!」
渡された端末はタブレットで正直俺の慣れているものではない。
「パソコンとか使えたらなぁ」
「あります、パソコン!」
どやぁ、という顔をしてピクシーはパソコンを召喚した。
「ならこれをここに設置。完成だ」
「これからどうされるのですか?」
「そりゃ決まってる、最高のゲーム製作だ」
パソコンを立ち上げる。
既にダンジョン作成のためのソフトは入っているようだ。というよりそれ以外がほとんど使えない。
「とりあえずこれだけ使えたらあとはっと」
ソフトを立ち上げ、画面を表示する。
欲を言えば三画面ほしいが、先ほど見えたポイントをケチるために一画面で我慢だ。
ダンジョンの製作画面になったので、とりあえず。
「一階層は迷路って相場が決まってるんだ」
ポイントを使用して大きめに迷路だけを作成した。
そしてポイントが余っているうちに三階層まで製作。
「二階層は......お、なんだこれ」
そこにあったのは、詳細設定用ボタンだった。
「私は能力が突出していない代わりにその詳細設定が使えるのです!」
どうやら彼女の特権らしい。いずれほかの人にも使えるようになる機能の可能性もあるが、今使えるのであればほかのことは考えなくて良いだろう。
詳細設定を開くと、その壁の角度や分厚さ、強度やギミックまで細かく設定できるようになっていた。
その中でも興味を引いたのは。
「階層内ランダム転移って、これだろ」
目指すは迷いの森。
全域に同じように木を植え付け、見た目で場所がわからないようにする。
「これでよし」
三階にパソコン兼自室を設置。まだパソコンしかないが、これだけでもまだ十分だろう。
「保存、っと」
その瞬間、周囲の風景が切り替わって石づくりの場所になった。
「これは......ゲームの中にいるみたいだ!」
最高だ! 俺がゲームのラスボスとして君臨できるのだから!
「これはゲームではないです。証拠に、このダンジョンが攻略された時点で私もあなたも死ぬのです」
「なんだって!?」
その瞬間、衝撃が走った。
「このポイントの増やし方はどうやるんだ!」
「これですか、DPは主に自然回復、侵入者を撃退、侵入者の滞在の三点で回復です、自然回復は少ないのであんまり期待しないほうがいいかもしれないです」
「そうかそうか」
しかし、俺は気にしない。
何故かって? 夢が叶ったからだ。
ゲームの世界のラスボスになる。
ようやっと、なることが出来た。
「よっしゃかかってこいやぁぁぁぁああああ!」
こうしてまた一人の男のダンジョン製作が始まった。
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