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第一部 ダンジョンマスター 前編

番外 大山 たろうの日課

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 たろーこと、俺、大山 たろうは、とりあえず今ある更新中小説を眺めていた。

「英雄教科書が隔日投稿で、そのほかにも二つの不定期更新、挙句の果てには最高傑作と持ち上げすぎた短編小説が八月十三日に投稿されるから編集と改稿作業......なのに時間はそこまでない......」

 そして、管理画面に乗っているPV数を見て、絶望していた。

「まてよ......隔日更新の英雄教科書よりも......不定期更新のほうが投稿した後のPV数が多い......そしてもう完結した魔力極振りが未だPV数がトップだと......」

 心労的には日課にしないといけない英雄教科書が文字数が少ないとはいえ一番大変なんだが......とはいえ、最近は不定期更新を連日投稿してるし、仕方ないといえば仕方ないのか......? こうなったら、英雄教科書も連日投稿......いや待て、時間がないといったばかりなのに、そう簡単にスパンを短くしてもいいのか!?

 ウェブ小説作家が一度は悩んだことのあるであろう問題に、俺は二度目の波を迎えていた。

 投稿ペース。

 これは読者の読みたい、という気持ちに直結し、更新が早いだけで多少の質の悪さには目をつむる。と信じている。
 だが、更新が遅いとどうだろう。文字数がそれなりに多く、設定が面白いものでないと見ようと思わなくなるだろう。それは連日投稿から隔日投稿になったときも同じだ。

 となると......俺、詰み?

 だって、不定期って言ったくせに、もう連日投稿になったし......未だ隔日投稿は節目を見つけられそうにないし......でも睡眠時間は日々減るばかりで......しかもTwitterのアンケートで今読みたいジャンル聞いてしまってるし......いや待て、まだ読めてない作品が!

「ああ、実に実に実に、怠d

「はいるよー」

 俺が首をほぼ九十度に持っていき、あるキャラの真似をしていたところで、ぜっちゃんが部屋の中に入ってくる。

「声、部屋の外にも聞こえてたよ」

「あらヤダ恥ずかしい」

「それで、パソコンで書くか読むかの議論の前に、そこにある積み本、どうするの?」

 忘れてた......けっこう積んでた......ついつい読んで英雄教科書の予約が遅れるだなんてこと、日常茶飯事だったはずなのに......どうして忘れていたんだ!

「しかもそっち読まずに完結済みの青春ラブコメ読んでるし」

「うっ」

「読み終えたと思ったら次は漫画読みだすし」

「うっ」

「アニメとか映画にエスカレーターすることもしばしば」

「ううっ」

「それで、どうするの?」


「とりあえず現状維持を」

「睡眠時間すでに足りてないのに?」

「そうだよコンチキショウ!」

 なんでこいつはここまで俺の習性を詳細まで把握しているんだ!

「神だから」

 もう心まで読まれていたようだ。
 全能の名は伊達ではなかったようだ。

「とはいっても、やったことがないことはやらないとできるかわからない、すべて最初からできるわけじゃない」

 そう、全能神は語った。
 よく考えれば、ダンジョン作成も、これが一番効率が良いとか一度も言ったことなかったし、手さぐりどころか自分たちで痒い所を作っていくスタイルだった。

「最終的には権限で才能を追加するんだろう? ダンジョン経営だって、完全計算みたいなことができるだろう」

「そう。でも、出来ちゃうようになるから。今はそれはできないことを楽しんでる」

「そうか」

「あと脳の容量食うから」

「そこが本題かよ」

「それより、たろー、思い詰めてるなら、これからもう一人ぐらい見ていく?」

「そうだな......そっちの用事終わっているなら、今からでも」

「それじゃ、行こっか」

「次はどんな奴だ?」

「うーん、勤勉?」

 なんじゃそりゃ。
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