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第二章

2-3 想像はいつも穴だらけ

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 街に着き、一息ついたところで、後方から爆音が聞こえる。
 とてつもない大きな音ではなく、単純な、しかし重なり合った爆発音だった。

「わわっ、何があったのかな」

 折原さんは大きな音にびっくりしているようだ。そして王城の様子を見て唖然としていた。
 そりゃそうだ。ついさっきまで自分がいたところが突如爆発したのだから。

「一回王城に戻ろう!」

 そこで俺は失敗をしたと初めて気づいた。
 そうだ、そりゃそうだ。自分が世話になった人が残っている、単なる好奇心や興味、理由は様々だが、四十人いるクラスで王城にいかない人がいない訳がないじゃないか。

「そうだね、すぐに向かおうか」

 その現場に俺はいかざるを得ない。
 こっちで待っていても、結局誰か死んでまたやり直す羽目になる。
 その前に、王城の中に誰か入る前に、俺が干渉しないと。

 走って向かった。体力が回復してなかった折原さんを置いてでも、俺は王城へと向かった。
 幸い、と言うべきか、まだ街に着いたばかりだったから一番乗りのようだ。

 中の様子を見る。まぁ、見たとおりだ。前とは少し違って助かっているけど。

 王城の門の中、そこには生命体が存在しないからか、着陸してから停止している魔物が数十体ほどいた。中には着陸点を探して空中で待機している個体までいる。

 二番は折原さんだったようだ。これでよし。
 というのも、俺が一人の時に折原親衛隊が来たら、どうあがいても止められない自信がある。
 適当なことをいえば嘘つけと押し通って死ぬだろうし、ほんとのことを言っても嘘つけと押し通って死ぬ。
 約束を取り付けても、命令を受けていると言っても、どうやっても無理だ。
 好感度パラメータが存在したら、きっと彼らの俺に対する好感度はゼロに等しいから。
 それに比べ折原さんなら、クラスメイトとの交流も多く、信頼関係を築けている。俺と違って。
 なら、俺は折原さんを説得するだけだ。

「折原さん、こんな状況になってる。外に出てくる様子はないけど、こっちから攻撃したら反撃してくるかもしれない。王城から少し離れていよう」

「......中の人は」

 やはり、ネックはそこだ。
 彼女は優しい。優しすぎる。
 数日間、共にしただけの人が命の危機かもしれない、となっただけで、自分の命を懸けてしまう。
 それは英雄願望とかの、欲望まみれた理由じゃない。ただ、自分がそうするべきだ、という信念に、正義にしたがって行動する。
 俺も、元の世界で無償の奉仕、ボランティアならする。けど命を懸けろと言われたら即座に逃げる自信がある。
 これが俺と彼女の決定的な違い。わかっていた。策もない。信じてくれと、そう言うしかない。

「それなら、俺が入る。どうなるかわからないから、少し離れていて」

 最初からこの問題に言葉が通じるとは思っていない。
 だから俺が行く。唯一、死んでも戻れるから。

「一人で行くの!? それなら私も行く!」

「俺は死なないんだ、安心して」

 がっ、と両肩をつかまれた。
 一気に焦りの表情を浮かべていたが、俺のスキルだと分かると俺を抑えていた手を離した。

 これで、俺のスキル情報がバレる。少なくともクラスメイト、下手をすれば敵陣営に。

「それでも、なりふり構っている暇はない」

 俺は、すぐに門を抜け、王城敷地内に侵入した。
 すぐさま、敵が反応した。やはりというか、助かったというか。王城内の異世界召喚者、若しくはもっと広げて人類を攻撃するように指示されてたんだろう。

「手前で......ここ!」

 俺は渾身のグーパンを食らわせる。が、ぴくともしない。右足を思いっきり腹に入れたが、一歩も後ろに下がる様子はない。

「まじか......おりゃグペッ」

 一撃。右手を振っただけで俺のHPは全損した。首にクリーンヒットだった。
 まだ、一撃分残っている。今使ったのは即時復活だ。まだ、まだなんとか......

 ぐちゃ。

 そのまま流れるようにして敵のしっぽが俺の腹部に命中、俺の体は頭部が吹き飛び、体は四肢がもげ、臓器をまき散らした。
 頭部が近くの木に当たる。折原さんが衝撃を受けているのが見えている。が、俺は何も言えない。

 おーい女子B、早く来てくれー

 なんて言ってみるが、届いている気はしない。
 というか、ここで死んだら四天王二人、どうしよう。

「何があったの......って、死んでるのね」

「あ、でも、彼は死なないって」

「そうみたね、霊魂が見えるもの」

 都合よく三番目は女子B。助かった。
 というかこの様子ならほかのやつらが来る心配はないんじゃないか?

 とりあえず、魔王軍の四天王が二人、飛んでくるかもしれないから、俺の体を無理やり操ったりとかして、街に撤退できないか?

「やってみる」

 女子Bが俺の体に対して魔法を使った。
 その瞬間、ぐちゃぐちゃと肉がもまれる生々しい音を立てながら、俺の体は何一つ正しくない位置で固定された。
 臓器が腕の部分についてる。え、そんなことできるの。

「できた。撤退する」

 情報のソースなどを聞くことはなく、女子Bと折原さんは王城門の外から離れる。俺の体も、女子Bに引き付けられている。

 そこに折原親衛隊が登場した。

「王城で何が! ってそれは......」

 もはやそれ、と呼ばれるほどに、俺の外観は醜悪か? あぁ、醜悪だった。臓器が丸見え血ドロドロのあたり。
 というか、何人か吐いてる。死んでるのを見るのは初めてか。俺はたくさん見てきた。主に前周回で。

「死んでた十時君。今は私のスキルで動かしてる」

「あぁ......そうですか。折原さんをかばって......」

 ん? どうやら勘違いをしてくれている。が、俺の好感度が上がりそうだから助かる。

「王城には入らないでって、全員に教えてあげてくれないかな。十時君、抵抗できずに死んじゃった」

 死なない、とは言われたものの、この現状を見るとどうにも信じがたいと思うのも必然だろう。折原さんは泣きながらそう言っていた。

 うん、助かる。こうしてくれると折原親衛隊も扱いやすい。

「折原親衛隊って......」

「どうかしましたか」

「なんでもない」

 女子Bが俺の言葉に反応して笑いをこらえていた。俺の声はやはり女子Bにしか聞こえないようだ。

 と、王城を見ると、空中に二人の男がいるのが確認できた。

 ! 姿を隠せ!

「みんな、どこかに姿を隠して」

「あ、あぁ、分かった、それなら俺はほかのクラスメイトに言ってくる」

 そう言って折原親衛隊は散開し、街に広がった。
 そして折原さんと女子B、そして化け物の俺は街の裏路地の入口に隠れた。

「それで、どうしよっか」
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