魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

文字の大きさ
上 下
60 / 68
七章 試練

またも星王

しおりを挟む
「ねぇ、今日は行かないって約束したからと言って日付変わってから行く馬鹿がいる?」

「申し訳ありません」

現在俺は正座させられている。理由はお察しの通りだ。

「しかも今何時だと思ってるのよ! 一日フリーでお話しし放題だと思ったのに......」

最後のほうまで聞こえてしまって照れくさくなるが、それを顔に出すと紗耶香の怒りというかツンデレのツンというか、その表情が飛び出してくるので口には出さない。

「わかった? もう危険なことはしないこと! 迷宮潜ったらだめよ。わかったわね?」

「わか.....りません!」

あぶねぇ、危うく誘導されて約束を取り付けられるところだった。

「そんなに元気なら明日学校に行けるわね。退院の準備しなさい」

「そ、そんなぁ」

まぁ、どーせもう残すは金曜日だけだ。一日だけなら問題も起きないだろう。


これがフラグだったかのように、翌日、見慣れたメールが届くのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

藍染 拓海 様

新たな十二星が誕生しました。

よって星王会議を行います。

もし参加される場合は、金曜8:00に顔を隠すものなどをご着用の上、下記の場所に止まっている車へとコードネーム 双子座ジェミニ と名乗ってください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

うっわ、フラグしかもドンピシャで被って来やがった。これは......双子座ジェミニに任せるか。もちろん学校のほうを。

記憶の共有は一応できないことはないが、起きているときに行うと情報過多で脳がいかれる。なので寝ている間に一緒にしてしまうのだ。が、本体側が寝ないと分体側の情報をもらえないので、至急の案件などを共有することができないのだ。

なので、あっちにできなくて俺にはできる呼び出し機能を用いて、最悪の場合は対応する。

別に分体が学校行ったってばれやしないだろう。

俺は心の中で紗耶香に謝りつつも、明日の星王会議に向けて装備を整えると、いつもより早めに床についた。



翌日。少し早めに起きた俺は、双子座ジェミニを呼ぶとそれぞれの行動を開始した。

俺はさっさと飯を食って、装備をつけていつも......とはいっても、二回目なのだが、以前車に乗った場所へと向かう。

その間、双子座ジェミニは制服に着替えて、学校へ向かう支度をしていた。

何もないことを祈り、以前と同じように車に乗った。



何もすることがなく、これ以上にないくらいに暇だったが、無事到着した。

前と同じ会議場だが、前回と違うのは、俺が到着した順番が最後ではなかったところだろう。

爺さんに案内されるがまま、俺は双子の天使が描かれた扉をくぐった。

中にほとんど何もない空間。あるのは小さな机とソファだけである。

仕方がないので俺はそこに腰かけ、最近溜まり気味だった小説の消化を始めた。一昔前までは異世界ファンタジーとかが主流だったのだが、最近は現代の学園ラブコメが注目を集めている。というのも、肝心の現代がこのファンタジーっぷりなので異世界ファンタジーの人気が薄れてしまった、というだけだ。昔から根強いファンを獲得していた作品が生き残り、最近出てきたような新タイトルは消えてしまったのが少し悲しく感じる。そういえば、VRゲームとかも人気だっけか......

携帯を開き、ブックマーク欄からお気に入りの作品の最新話までを読み終えて、新しい作品発掘へと向かう。

何個かブックマークをしたところで、メールが送られてきた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

拓海くん、おめでとう。

やっとあなたも到達者へと至ったのね。一応あなたに確認してきたわ。
本体の貴方はどこにいるのかしら?

それは置いときまして、到達者たちの集まりが月一度あるから、ぜひ来て頂戴。明日の九時、駅前の喫茶店集合よ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「マジかよ......」

会長からだった。やはり会長も到達者だったらしい。俺は鑑定を持たないためにそれに気が付けなかったが、一度見せてもらったステータスはその印象を確立するためだったのだろうか。それだったらなかなかの策士だ。

しっかし、到達者まで会議とは。星王会議を見ていると何を話すのか結構疑問ばかりなのだが......
まぁ、いいだろう。

と、そのときノックの音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します、会議を始めますので、準備をお願いします」

「わかりました」

『のうのう、今日は戦うのかの?』

「今日はないだろう」

推測を口にする。確か前回魚座ピスケスに勝って、序列があいつよりも上になったはずだ。それで新入社員は序列が一番低いやつと戦うから、俺は戦闘なし。

『そうか.....』

どこか残念そうだ。

『実は今日、神殺しの弾丸バレット・オブ・ゴッドキラーの詠唱を教えようと思っていたのじゃが......時間もなさそうだし、肝心の弾丸もないし、できそうにないの!』

ちょっと待て。
神殺しの弾丸バレット・オブ・ゴッドキラーに詠唱がいるってことが初耳な気がするんだが。

『言っておらんかったかの。まぁまぁ長いから覚悟するのじゃ。撃つ機会がないに越したことはないのじゃが、撃てないのと撃たないのではわけがちがうでの。また時間があるときにでもするのじゃ』

「そうだな」

俺は魔銃を直し、装備を整えると、会議場へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...