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六章 文化祭
やっとの出番
しおりを挟む「さて、このコインが落ちたら、殺し合いの始まりだ!」
そういうと、斥候の男がコインを上にはじかせる。
コインに意識が集中する。天ノ川は、コインの落ちるタイミングを目で追っていた。他のやつらも、コインを凝視する。
コインが落ちる。天ノ川は敵を絶対に見逃さないと言わんばかりの視線を向ける。しかし、勝負はこの時点でほぼついていた。
彼らがコインを凝視している間に、斥候が隠密と隠密権能を使用したのだろう。ステータスの低い俺だけではなく、正常なステータスをした徹ですら見つけられなかったのだろう、彼も口が開いていた。
「あぁ、つまんねぇ」
そう言ったころには、後ろから四人、体中に切り傷をつけられて倒される。斥候の恩情なのか、致命傷ではないらしい。が、ほっておくと死ぬだろう。
治癒魔法は使えるやつ少ないが、この学校に使えるやついるのか......?
そう思っていたが、中学生が治癒をしていた。なぜ中学生がステータスを持っているのか。作られた当時に運悪く迷い込んだか、年齢を偽って迷宮にもぐっているか.....どちらかだろう。
しかし、治癒が遅いため、前者だろう。俺は前を向き、彼の戦いで少しでも情報を手に入れたい。
しかし、一歩も動かない。
「おいおい、その程度か、極光の勇者。お前は期待外れだったな」
「期待外れ......?」
そういった瞬間、彼の体から魔力があふれ出す。おお、これが勇者が最強とまで言われる所以。
『限界突破』
文字通り、限界を超える。持っているスキルは一ランク上昇し、その上ステータスも二倍まで跳ね上げる。
これが、第一段階。第二段階、第三段階もあるのだが、彼は一段階までしか使えないようだ。
勇者が本気を出した、と思ったが、斥候の顔はいまだに落胆のままだった。
それが彼を刺激したようで、剣を大きく振りかぶった。
土煙が舞う。
倒れたのは、勇者だった。
いくら全能力を上げようと、斥候最終職の速さにはついていけなかったようだ。
首筋を、ナイフで一撃。
勇気の首から血が流れ落ちる。しかし、一瞬で血が収まり、次の瞬間、遥か後方味方のほうで一緒に倒れていた。
「あー、これが光系統の勇者スキルか。一日一度自動蘇生とか、どうなってんだよ......気を失うらしいから、もうあれでいいや、次!」
確実に負けると言われた勇者の戦いは、未来変わることもなく、斥候一人に全滅させられるという結果で終わった。
「これは考えられたなかで最悪の負け方よ......」
そういう会長。ちなみにどんな負け方を、と聞きたかったのだが、そんな暇はなさそうだ。
「司君、あれを」
「わかりましたぁ」
そう言われた司から渡されたのは、一つの指輪。
「瞬間装着っていう魔法が一回限りでつかえるよぉー、前の装備見て設定してあるから、会長の合図で使っちゃってぇ」
恐らくイメージを伝えたのが会長で、それを形にしたのが司なのだろう。にしても、よく一晩で作り上げたなぁ。
おっと、感心している暇はない。渡された指輪を装着し、会長についていく。
「おっとぉ、今度はだれだぁ?」
「私が預言者よ」
周囲にどよめきが起こる。しかしそれを意に介さず、会長は続ける。
「そして、創造者もいるわ。だから―――――
―――――本気でかかってきなさい」
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