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五章 星王会議
大迷宮の悪辣な罠
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日曜日。今日は何も予定がないので傲慢の大迷宮へと向かう。これくらい強くなったのなら早い移動手段が欲しいものだな。あの空中打ち上げだけはごめんだが。
それはさておき、まず傲慢の大迷宮を探索していた#分体__ドッペルゲンガー__から戦利品を受け取って、一 度戻って休んでもらおう。休むという概念があるのかは不明だが。
と、戻ったときに頭の中に声が響いた。
・分体がレベル10になりました
・スキルポイント100でスキル進化が可能です
・進化しますか?
スキルレベルが10になるとスキルが進化するとは聞いていたが、こいつは単体でスキルポイント100も食うのか......魅力的なのは間違いないが、この消費量は簡単に決められない。
とりあえず保留して迷宮の門をくぐった。
分体のおかげでレベルも上がり迷宮装備もいくつか手に入れたので、深くまで潜っても大丈夫そうだ。
そう判断した俺はさらに深くへと潜っていった。
この領域は上級探索者がパーティーを組んで攻略しているレベルで、三次職が、しかもソロで潜る場所ではない。
とはいっても、俺のステータスではここが効率がいいし、装備だって手に入る。
一発受けると漏れなくお釈迦なのはもはやどこでも同じなので、気にせず潜る。
と、ここでゴーレムと遭遇した。
浅い層と同じ石のゴーレムだが、つくりが違うせいなのか、浅いとこるよりも素早く固い。
とりあえず新装備の試運転もかねて戦闘するか。
そう思いながら取り出したのは鎖。
先端部には矢じりのようなものが付いているだけだと思ったが、効果がちゃんと付与されているみたいだ。
魔力を通すと活性化するものもあるので、とりあえず通してみた。
すると、どんどんと鎖が増えていく。どうやら射程延長みたいな感じのスキルがあるみたいだ。大当たり。 次に取り出したのは指輪。これに関してはもうつけっぱなしでいい気がしてきた。指まだ空きあるし。
効果のほどを知るために魔力を通してみたが、貯蓄されていく一方で何も効果を発揮しない。ついには魔力の貯蓄をやめてしまった。
もう何の効果かわからないので、あきらめて先へ進むことにした。
前でずっと空振りを続けていた石のゴーレムに、鎖を操作で先端部を押し付け、貫通しようとした。
が、やはり操作はゆっくりと動く上に、物体を動かすのには少し不向きだ。
仕方がないので操作を解除して射出した。
射出の勢いで鎖のほうが負けないかと心配になったものだが、結構丈夫らしい。これもずっと持っていてよさそうだ。
俺は片手に拳銃、片手に鎖、指には二つの指輪、防具は胸当てだけという深さを考えたら十分奇怪な装備をして、どんどん奥を目指す。
進むにつれてちらほらとパーティーを見つける。向こうは俺のことを見るなり、戦闘態勢をとるが、俺が攻撃してこないことを見ると、すぐ武器を収めた。おそらく#狂化_バーサーク__#の噂が広がっているのだろう。
俺も手を挙げると、安心したのかこっちへと歩いてきた。
「お前、ソロか?ここはいくら#狂化_バーサーク__#を持っていても死ぬぞ」
リーダーと思われる片手剣使いが気を使ってくれたようだ。
「お構いなく。これでもある程度は行けますから」
そういうと、向こうも余裕がないのだろう。俺たちを無視して別方向へと探索をしていった。
さて、俺も行くか。
そう思って、彼らとは別方向へと足を進める。
一歩、また一歩と警戒しながら進んでいたのだが、警戒が足りなかったらしい。
足元が光る。これは転移トラップだ!
よけようにもよけきれず、俺は光に飲み込まれていった。
転移が終了する。そこは大部屋だった。
中央に鎮座するのは......マジかよ。
双頭の犬。蛇のしっぽ。ファンタジー小説で一度は読んだことのある存在、ギリシア神話の怪物と呼ばれるもの。
それは、オルトロスだった。
オルトロスかどうかは正確には鑑定がないため確認のしようがないが、この特徴を見るにそう呼ぶに値する怪物であることは間違いない。
俺はすぐさま拳銃を取り出し、膨大な総魔力の一割ほどを込めて右側の頭に魔弾を撃つ。
これで耐えられるようであればもはや俺には勝機はない。
しかし不安を拭うようにして、右側の頭は肉片となった。
なに、これだけ警戒しそうな外見をして、実はそこまで強くないのか?
「もう片方をつぶせば終わりか、案外あっけなかったな。」
そういってもう片方に拳銃の銃口を向けた、その時。
左側の頭が、魔力をまとい始める。
俺はファイアブレスとかの遠距離高火力の攻撃を警戒して一度下がる。
しかし、その魔力は俺に向けられたものではなく、もう片方の頭に向けられたものだった。
「アォォォォォオオオオオン!」
その叫びとともに、片方の頭が再生......いや、復活しているといったほうが正しそうだ。
振り出しに戻った盤面。俺の魔力はすでに四割弱。
魔力を魔眼で見るも、オルトロスの魔力は減った気配がない。これがスキルならば、俺が一方的に窮地に立たされてしまう。
何か手は、ないものだろうか......
――――――――――いや、あるじゃないか、可能性!
俺はステータスを呼び出すと、分体の進化を実行した。
・スキル進化完了まで、残り一分です
まさか、時間かかるやつなのかよ!
俺は迷宮にもぐる前の俺を恨みつつも、近接戦を避けるため距離をとった。
しかし待っていたとばかりに、オルトロスは口に魔力をためていく。
俺が魔弾を放つも、かき消えてしまった。
俺がもう一射しようとしたところで、構えた。
「「アオオオオオオオオオォォォォォォオオオオオオオオン!!!」」」
二つの頭から放たれるのは赤黒い、地獄の業火のような火。
幻術もあれだけ広範囲に吐かれると意味をなさない。
これには俺もどうしようもない。死んだな。
赤黒い火が俺を溶かしていく。不思議と熱くない。
最後に走馬灯とかないものか......
そこで、指輪が輝いた。
先ほどつけた指輪が、その充填された魔力を代償に、俺を回復......いや、一度死んだだろうから蘇生か。
ともあれ、俺は復活した。
オルトロスが混乱しているうちに、幻術をかける。
極光の勇者にも効いたこの魔法はしっかりとオルトロスにも効いてくれたようで、見当違いのところを肉球パンチしていた。
こうなれば有効打はないものの一分など余裕で稼げるわけで、俺はステータスを確認していく。
そして一分が経過し、ステータスから一気にスキルポイントが減って、スキルの進化が完了したことを告げられる。
・分体は双子座へと進化しました
・条件達成を確認。魔力値共有、思考伝達を獲得。
・条件達成を確認。自我を獲得。仮面ロックを解除します。
その声と同時に現れたのは、仮面を外した分体......いや、俺が立っていた。
能力の考察はあとにしよう。
とりあえず、こいつを倒そう。
突如敵が増えたオルトロスは混乱しているらしい。
俺と俺が銃を構える。
二人が同時に引き金を引く。
二人で一割ずつ込めた魔弾が、同時にオルトロスの頭を一つずつはじけ飛ばす。
そこに残ったのは、霧になりかけている頭を失った犬の体と、先に霧となった頭部だけだった。
「勝ったか?」
「おう、フラグなしに勝ったぞ」
そう俺に話しかけたのは俺だった。
そういえば、スキル双子座って言ってたよな......双子、だから今まで最大召喚数が増えることがなく、ずっと一人が召喚されてたわけか。
そして魔力値共有。これは俺の譲渡なしにリンクみたいなもので双子座が魔力を使用できるってことかな。
そして最後の自我。これが一番すごくて厄介だろう。
なにせ、俺はこれからスキルとして扱うのではなく、一人の人間を生成するってことだからな。
そう考えていることが思考伝達で分かったのか、俺に向けて俺が言った。
「まぁ、俺はスキルによってできた生物だっていう自覚がどこかあるんだよ、だからそこまで気にすんな、まぁ死なないように魔力は使わせてもらうがな」
「まぁ、そりゃそうだよな」
俺からそういわれて俺が落ち着くという謎状況となっている間に、オルトロスは一つの魔石へと変わっていた。
それから、俺たちは二手に分かれて脱出の道を探し、日付が変わったころに脱出できたのだった。
それはさておき、まず傲慢の大迷宮を探索していた#分体__ドッペルゲンガー__から戦利品を受け取って、一 度戻って休んでもらおう。休むという概念があるのかは不明だが。
と、戻ったときに頭の中に声が響いた。
・分体がレベル10になりました
・スキルポイント100でスキル進化が可能です
・進化しますか?
スキルレベルが10になるとスキルが進化するとは聞いていたが、こいつは単体でスキルポイント100も食うのか......魅力的なのは間違いないが、この消費量は簡単に決められない。
とりあえず保留して迷宮の門をくぐった。
分体のおかげでレベルも上がり迷宮装備もいくつか手に入れたので、深くまで潜っても大丈夫そうだ。
そう判断した俺はさらに深くへと潜っていった。
この領域は上級探索者がパーティーを組んで攻略しているレベルで、三次職が、しかもソロで潜る場所ではない。
とはいっても、俺のステータスではここが効率がいいし、装備だって手に入る。
一発受けると漏れなくお釈迦なのはもはやどこでも同じなので、気にせず潜る。
と、ここでゴーレムと遭遇した。
浅い層と同じ石のゴーレムだが、つくりが違うせいなのか、浅いとこるよりも素早く固い。
とりあえず新装備の試運転もかねて戦闘するか。
そう思いながら取り出したのは鎖。
先端部には矢じりのようなものが付いているだけだと思ったが、効果がちゃんと付与されているみたいだ。
魔力を通すと活性化するものもあるので、とりあえず通してみた。
すると、どんどんと鎖が増えていく。どうやら射程延長みたいな感じのスキルがあるみたいだ。大当たり。 次に取り出したのは指輪。これに関してはもうつけっぱなしでいい気がしてきた。指まだ空きあるし。
効果のほどを知るために魔力を通してみたが、貯蓄されていく一方で何も効果を発揮しない。ついには魔力の貯蓄をやめてしまった。
もう何の効果かわからないので、あきらめて先へ進むことにした。
前でずっと空振りを続けていた石のゴーレムに、鎖を操作で先端部を押し付け、貫通しようとした。
が、やはり操作はゆっくりと動く上に、物体を動かすのには少し不向きだ。
仕方がないので操作を解除して射出した。
射出の勢いで鎖のほうが負けないかと心配になったものだが、結構丈夫らしい。これもずっと持っていてよさそうだ。
俺は片手に拳銃、片手に鎖、指には二つの指輪、防具は胸当てだけという深さを考えたら十分奇怪な装備をして、どんどん奥を目指す。
進むにつれてちらほらとパーティーを見つける。向こうは俺のことを見るなり、戦闘態勢をとるが、俺が攻撃してこないことを見ると、すぐ武器を収めた。おそらく#狂化_バーサーク__#の噂が広がっているのだろう。
俺も手を挙げると、安心したのかこっちへと歩いてきた。
「お前、ソロか?ここはいくら#狂化_バーサーク__#を持っていても死ぬぞ」
リーダーと思われる片手剣使いが気を使ってくれたようだ。
「お構いなく。これでもある程度は行けますから」
そういうと、向こうも余裕がないのだろう。俺たちを無視して別方向へと探索をしていった。
さて、俺も行くか。
そう思って、彼らとは別方向へと足を進める。
一歩、また一歩と警戒しながら進んでいたのだが、警戒が足りなかったらしい。
足元が光る。これは転移トラップだ!
よけようにもよけきれず、俺は光に飲み込まれていった。
転移が終了する。そこは大部屋だった。
中央に鎮座するのは......マジかよ。
双頭の犬。蛇のしっぽ。ファンタジー小説で一度は読んだことのある存在、ギリシア神話の怪物と呼ばれるもの。
それは、オルトロスだった。
オルトロスかどうかは正確には鑑定がないため確認のしようがないが、この特徴を見るにそう呼ぶに値する怪物であることは間違いない。
俺はすぐさま拳銃を取り出し、膨大な総魔力の一割ほどを込めて右側の頭に魔弾を撃つ。
これで耐えられるようであればもはや俺には勝機はない。
しかし不安を拭うようにして、右側の頭は肉片となった。
なに、これだけ警戒しそうな外見をして、実はそこまで強くないのか?
「もう片方をつぶせば終わりか、案外あっけなかったな。」
そういってもう片方に拳銃の銃口を向けた、その時。
左側の頭が、魔力をまとい始める。
俺はファイアブレスとかの遠距離高火力の攻撃を警戒して一度下がる。
しかし、その魔力は俺に向けられたものではなく、もう片方の頭に向けられたものだった。
「アォォォォォオオオオオン!」
その叫びとともに、片方の頭が再生......いや、復活しているといったほうが正しそうだ。
振り出しに戻った盤面。俺の魔力はすでに四割弱。
魔力を魔眼で見るも、オルトロスの魔力は減った気配がない。これがスキルならば、俺が一方的に窮地に立たされてしまう。
何か手は、ないものだろうか......
――――――――――いや、あるじゃないか、可能性!
俺はステータスを呼び出すと、分体の進化を実行した。
・スキル進化完了まで、残り一分です
まさか、時間かかるやつなのかよ!
俺は迷宮にもぐる前の俺を恨みつつも、近接戦を避けるため距離をとった。
しかし待っていたとばかりに、オルトロスは口に魔力をためていく。
俺が魔弾を放つも、かき消えてしまった。
俺がもう一射しようとしたところで、構えた。
「「アオオオオオオオオオォォォォォォオオオオオオオオン!!!」」」
二つの頭から放たれるのは赤黒い、地獄の業火のような火。
幻術もあれだけ広範囲に吐かれると意味をなさない。
これには俺もどうしようもない。死んだな。
赤黒い火が俺を溶かしていく。不思議と熱くない。
最後に走馬灯とかないものか......
そこで、指輪が輝いた。
先ほどつけた指輪が、その充填された魔力を代償に、俺を回復......いや、一度死んだだろうから蘇生か。
ともあれ、俺は復活した。
オルトロスが混乱しているうちに、幻術をかける。
極光の勇者にも効いたこの魔法はしっかりとオルトロスにも効いてくれたようで、見当違いのところを肉球パンチしていた。
こうなれば有効打はないものの一分など余裕で稼げるわけで、俺はステータスを確認していく。
そして一分が経過し、ステータスから一気にスキルポイントが減って、スキルの進化が完了したことを告げられる。
・分体は双子座へと進化しました
・条件達成を確認。魔力値共有、思考伝達を獲得。
・条件達成を確認。自我を獲得。仮面ロックを解除します。
その声と同時に現れたのは、仮面を外した分体......いや、俺が立っていた。
能力の考察はあとにしよう。
とりあえず、こいつを倒そう。
突如敵が増えたオルトロスは混乱しているらしい。
俺と俺が銃を構える。
二人が同時に引き金を引く。
二人で一割ずつ込めた魔弾が、同時にオルトロスの頭を一つずつはじけ飛ばす。
そこに残ったのは、霧になりかけている頭を失った犬の体と、先に霧となった頭部だけだった。
「勝ったか?」
「おう、フラグなしに勝ったぞ」
そう俺に話しかけたのは俺だった。
そういえば、スキル双子座って言ってたよな......双子、だから今まで最大召喚数が増えることがなく、ずっと一人が召喚されてたわけか。
そして魔力値共有。これは俺の譲渡なしにリンクみたいなもので双子座が魔力を使用できるってことかな。
そして最後の自我。これが一番すごくて厄介だろう。
なにせ、俺はこれからスキルとして扱うのではなく、一人の人間を生成するってことだからな。
そう考えていることが思考伝達で分かったのか、俺に向けて俺が言った。
「まぁ、俺はスキルによってできた生物だっていう自覚がどこかあるんだよ、だからそこまで気にすんな、まぁ死なないように魔力は使わせてもらうがな」
「まぁ、そりゃそうだよな」
俺からそういわれて俺が落ち着くという謎状況となっている間に、オルトロスは一つの魔石へと変わっていた。
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