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三章 迷宮の洗礼

傲慢の大迷宮

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「魔石の買い取りですね。こちらに入れてください」

 漏斗のようなもののついた大きな機械があったので、俺はそこに容赦なくウルフの魔石を注ぎ込んだ。
 ここのギルドは簡単に大声を上げない優秀な人のようだ。

 そう感嘆していると、査定が終わったようだ。

「すべて合わせて五万三千円です。よろしいですね?」

 と聞かれた。俺はそのあたりわからないので信用するほかないだろう。「はい」と答えるとすぐに現金で渡してくれた。
 それを財布の中にしまっていくと、受付の女性に声をかけられる。

「そういえば、仮面の人ってあなたですか?今日もっぱらの噂でして」

 やはり、あいつのせいだろう。

「たぶんそうですね、ちなみに噂の内容って聞いて問題ないですか?」

「そんなに秘密なわけではないですよ?ただ、ソロで#狂化_バーサーク__#してウルフを大量に倒した人がいる、というだけです。ご丁寧に受付嬢の話題が一切絡まずに」

「全部じゃねぇかコンチクショウ! あの受付マジ許さん!」

「あの人、前もやらかしてたみたいで、こっちで実習やり直しって今日こっちに来たばかりですよ」

 そう聞くと、嫌な予感がした。俺のこういう場合の予感は大抵当たるんだ。さっさと帰ろう。と席を立ったところで、ギルドの裏からカウンターにそいつがやってきた。

「あ! あんた、昨日のやつでしょ! あんたのせいで私実習やり直しなんだけど! 私心配してあげただけなのに、全部あんたのせいよ!」

 もう運の悪さを嘆いていいと思うのだが。
 しかもこの声が大きく、あたり一帯に聞こえてしまった。噂が俺個人しか流れてないのに加えて向こうは容姿も整っているほうということもあり、悪者は完全に俺となっている。

「自業自得だろ」

 もう悪者なのをあきらめた俺はそいつにそう吐き捨てると、探索者ギルドを後にした。


 今日は迷宮都市の迷宮にもぐるか。

 そう決めた俺は、都市の中心にそびえたつ巨大な門へと向かった。


 敵の情報を見ると、さっさと門へと入ってしまう。
 しかし、いつもならもう内部に入っているのに、ここは光の道みたいなものがあった。
 ここは門超えたらすぐにつくんじゃなくて、内部まで少し距離があるのか?
 俺はそう推測しながら歩いていく。その時、

「傲慢の大迷宮へようこそ」

 そう聞こえたのは、俺だけなのだろうか。


 やっと一階層へと到着する。

 傲慢の大迷宮、か。
 それを聞いて俺の推測は確信に変わった。とはいっても、百階層のことは何もわからず、昔から抱いていた疑問のほうだ

 とりあえずその疑問を片隅に置いておいて、俺は攻略を開始する。

 傲慢の大迷宮は、遺跡型であり、罠も多く設置されているが、一番の特徴はいまだに一階層しか見つかっていないことだ。

 一階層の中に複数強ボスがいることから、ここは一階層しかないとまで言われている迷宮である。

 周囲には倒れて砕けた石の柱などが散乱している。俺はその柱を飛び越えて先に進む。

 少し進むと、敵の反応が。どうやら、ゴーレムみたいだ。
 人型の動く無機物、ゴーレムは、材質によって強さも変わるという性質を持っている。

 今回エンカウントしたのは石なので、俺でも十分倒せるだろう。

 俺は心臓の位置に魔力を100ほど込めて魔弾を撃ちだす。

 以前は3しか込めていなかったために威力も低かったが、魔法は魔力を込めれば込めるほど強くなる。
 ではなぜみんな使わないかというと、属性魔法のほうが、威力の上昇率が高いのだ。
 しかし俺は属性などを使えないので、魔弾でごり押しているというわけだ。

 100の魔力を込めた魔弾は石のゴーレムはコアを破壊し、活動を停止させた。石はすべて霧となり、その場には魔石しか残らなかった。

 俺は戦利品であるウルフより少し大きい魔石を拾うと、さらに深くへと潜っていく。


 奥へ、奥へ。
 俺は足を進めていく。

 等間隔に並んだ柱とたいまつで大まかなマップを頭に刻んでいく。
 と、ここで部屋を見つけた。ボス部屋のような荘厳な扉があるわけではなく、ただの木と言っても過言ではないくらいに質素で小さかった。

 その部屋に入ると、そこにあったのは金で装飾された宝箱だった。

 宝箱は、どの迷宮でも発見されるのだが、人工物のマップの発見例が多くを占める。
 この迷宮はずっと遺跡なので、迷宮装備なども多く見つかるのだ。

 俺は宝箱を開封する。そこには、何も入っていない......ように見えて、何か透明なものが入っていた。
 この形状......コンタクトの迷宮装備か?

 そう思い、一度両目に着けてみる。

 しかし、何も効果がなかった。

 効果の中には、魔力を通すことで有効化できるものもあるので、両目のコンタクトに魔力を通してみる。



 その瞬間、両目に激痛が走った。
 両目がはじけ飛びそうだ、最近痛い目に会いすぎだろう!

 そう思いながらも、俺は痛みに耐える。

 数分後、痛みが引いたので、探索を再開する。

 毎回現れる石ゴーレムに対して、俺は魔弾を撃ちだしていると、今度は鉄......ではない。この少しピンクがかった銀のような光沢は、魔銀ミスリルだろう。軽量である程度の強度と同時に魔力電伝導性が高いこの金属は、魔法使いを中心に好まれて使われている。

 しかし、魔弾をボール状から本物の銃弾レベルまで小さくし、固定をかけ、射出する。

 ボールよりも貫通性の上がった弾丸が、魔銀ミスリルのゴーレムの魔石を貫通した。

 これからは多少消費が増えても、銃弾の形のほうがよさそうだ。


 そう考えているうちに敵は霧となって消えていて、そこに残ったのは魔石と......、これは魔銀ミスリルか。握りこぶし一つ分だが、結構な値段で売れるだろう。が、装備が少ない俺は司に装備依頼することしか頭にないのだが。

 とりあえず二つをカバンに詰め、これ以上欲を出して罠にかかるのを防ぐためにも、来た道を戻るのだった。
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