魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

文字の大きさ
上 下
18 / 68
二章 体育祭編

迷宮探索2-1

しおりを挟む
 四月二週目となる土曜日となった。

 今日は迷宮にある実験をしに行く。まずは、一番近い迷宮まで自転車で向かう。

 そして仮面をつけ、いつものように迷宮にもぐると、分体ドッペルゲンガーを呼び出す。こいつ、結構消し方が特殊だった。二人で手を合わせると、合体したかのように二つが一つになる。そしてその時なら再召喚が可能らしい。

 迷宮の一階層、人目につかないところで発動する。
 すると、一人が二人になるような錯覚とともに、分体ドッペルゲンガーが生成される。

 俺と瓜二つの分体ドッペルゲンガーに任せるのは。

 「分体ドッペルゲンガー、俺が学校行ってる間とかも、迷宮でレベル上げしてくれ、できるか?」

 つまり、俺が迷宮に行かなくてもレベルアップできる環境を作る。

 分体ドッペルゲンガーは頷くと、スライムをつぶしながら奥へと進んでいった。

 これで俺がヒモ生活できる......じゃなく、俺もスライムを倒して二倍効率でレベリングだ。

 そう考え、俺は洞窟を進んでいく。

 「そうだ、支援魔法の練習するか。」

 支援魔法はステータスを上げるために必要になるだろうから、しっかり練習しないと。

 「対象:自身 全ステータス。『強化エンハンス』」

 すると、自分の周りにうっすらと光の膜が張られる。

 ・支援魔法適正が支援魔法lv1へと変化しました。

 この光の膜、ちょっと目立つから消したいが、MP消費増えるし支援魔法レベルも足りないんだよな......
 がっかりしながらも、一応発動しているのでステータスを確認する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
藍染 拓海 人間 男 魔力タンクlv10

HP10/10
MP170/220
筋力10(+1)
体力10(+1)
敏捷10(+1)
知力10(+1)
魔防10(+1)
器用10(+1)
幸運10(+1)

スキル
魔力譲渡lv2
魔力回復増加lv2
魔力操作lv1
支援魔法適正
分体ドッペルゲンガー lv1
スキルポイント   11


分体ドッペルゲンガー 人間 男 

HP10/10
MP0/220
筋力10(+1)
体力10(+1)
敏捷10(+1)
知力10(+1)
魔防10(+1)
器用10(+1)
幸運10(+1)

スキル
魔力譲渡lv2
魔力操作lv1
支援魔法適正

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ま、まぁlv1でこれは上出来だろう。そして練習していた新しい文字で戦術の幅が一気に人がる!

 そんなことを考えながら、五階層、ボススライムを目指すのだった。

 ボス部屋の前。
 俺は、またこの彫刻のような扉の前で足を止める。

 また、殺されるかもしれない。

 その可能性が脳裏をよぎる。だが、ここを超えられないと百階層など夢のまた夢だろう。
 ここで俺は足踏みをしているわけにはいかない。

 俺は竦む足に喝を入れると、あの日と同じように扉を開く。

 やはり中央に陣取るキングスライム。

 また同じ戦法を取ろうと上を見上げると

 ―――なかった。

 シャンデリアが、復活していなかったのだ。

 迷宮の壁や床、装飾品などは、時間経過で消滅、そして再設置されるようになっているのだが、ボスを殺されるとわかったっ迷宮が対策したのだろうか。

 天井の明かりはシャンデリアではなく天井に星のように埋め込まれた水晶へと変わっていた。

 こうなると、同じ戦法は使えない。
 俺は迷わず新しい文字をを起動する。
 それは、操作。
 その名の通り操ることができるようになる中級クラスの魔法文字だ。

 俺はそれを組み込んだ魔法をナイフにかける。

 「付与:魔法刀身」
 魔法陣は書き込まれた通りに魔力を拡散、操作で刀身を伸ばした形状を取らせて、それを固定する。
 それは、マイナーな魔法だった。
 というのも、理由が三つある。
 一つ目は、射出した時点で魔法陣は終了している魔弾と違って、この魔法は継続的に制御しなくてはならない。そのためコスパが非常に悪いのだ。
 二つ目は、伸ばしたところで、後衛である魔法使いが使う場面がない。
 最後に三つ目、魔法の構造上、どうしても長さを変えるときは、一度魔法陣を解いて、魔力を追加して、操作しなおしたうえで、また固定という四工程を踏む必要がある。そのため不意打ちには使えないだろう。

 が、魔力が大量にあり、後衛などいないソロの探索者の俺にはデメリットはほとんどないのだ。

 ナイフの刀身を槍より長くする。そしてスライムの魔石を突く。

 少しずつ吸収されているが、固定が少し抵抗していたようで、すぐに魔石を攻撃できた。

 しかし、破壊には至らず、魔法が吸収されつくされた。

 俺は吸収され維持の対象を失い、無用となった魔法陣を破棄すると、もう一度組みなおす。

 「付与:魔法刀身」

 二回目の付与が終わったところで、スライムもそうはさせるかと触手をたたきつける。

 しかしその大振りの攻撃は俺には当たらず、また魔石を攻撃されるボススライム。

 「これは......ループいただきましたー!」

 動きがほぼループ化し、俺も幾分か余裕が出てきた。

 スライムの触手をよけ、突いて、離れる。魔法刀身をかけなおし、またよける。

 その動きを八回ほど繰り返したところで、ボススライムは倒れる。

 ・ボススライムを倒しました

 ・経験値10を獲得

 ・レベル12になりました

 さっそくステータスを確認する

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
藍染 拓海 人間 男 魔力タンクlv12

HP10/10
MP170/220
筋力10
体力10
敏捷10
知力10
魔防10
器用10
幸運10

スキル
魔力譲渡lv2
魔力回復増加lv2
魔力操作lv1
支援魔法適正
分体ドッペルゲンガー lv1
スキルポイント   15


分体ドッペルゲンガー 人間 男 

HP10/10
MP0/220
筋力10
体力10
敏捷10
知力10
魔防10
器用10
幸運10

スキル
魔力譲渡lv2
魔力操作lv1
支援魔法適正

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 五階層ボスであるスライムを倒したため、六階層へと向かう門が開かれていた。

 俺は一度分体ドッペルゲンガー と合流すると、二人で、六階層への門をくぐった。


 涼しい風。
 生い茂る草花の香りが鼻をちらつく。
 太陽の光が心地よいここ六階層は、草原であった。

 先ほどまでのじめじめとした空気から解放されたからか、一層爽快な気分になる。

 周囲を見渡しても、草、草、草。

 迷宮という割には、迷わせる要素が皆無である。

 二人で少し周囲を探索する。この階層の敵は、っと......

 そう思っていた矢先、現れる。

 そこにいたのは、臭い、汚い、怖いの3Kがそろった、緑の肌を持つ魔物

 ―――ゴブリンが、現れた。

 俺は迷いなく魔弾を撃ちだすと、ゴブリンはギャアギャアといいながら、手に持つこん棒で抵抗してきた。

 俺はすんでのところで回避すると、もう一度魔弾を、今度は魔力をしこたま込めて頭部に向けて撃つ。

 ゴブリンは回避できず、頭が爆散する。
 その後、頭部と残された体は霧となって吸収された。

分体ドッペルゲンガー のレベルが上がりました

分体ドッペルゲンガー 内スキル、感覚共有を獲得しました。

・魔力回復増加がlv3になりました。

 おお、一気にレベルが上がる。分体ドッペルゲンガー の上昇の心当たりは......一緒に戦ったとか、そんなもんしか思いつかないな。魔力回復増加はさっきから減った魔力をフル稼働で回復させようとしてくれてるからだろう。

 そこに関しては気楽に考え、前を見る。

 ゴブリンはもういない。
 しかし、魔法陣によって多少恐怖耐性が与えられていても、気分が悪くなった。
 人型の魔物とはいえ、ためらいなく殺せた。

 その事実が、誇らしく、それに恐ろしく感じた。

 しかし、体育祭では恐らく人を殺すだろう。

 覚悟を決めないと。そう考え、もう少し六階層で戦闘を続けるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...