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2章

作戦なんて大層なものでもない

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 俺なら、どうされたいか。

 もし俺が捕らえられて、洞窟の最深部に入れられたとして。
 その時俺は、どう思っているだろうか。

 その時、胸の中にあったのはある一つの感情だった。
 それは、自分のせいで誰かが悲しむのは嫌、だ。

 自分がへまをして捕まって、それで罪を許して代わりに解放されたとして、その後きっと死にたくなる。
 それは罪への意識。自分が助かったせいで罪を許されたときに、悲しむ被害者。
 それを考えるだけで、もう気が狂うだろう。


 だから、俺は強硬手段を選ぶ。


「突入する。作戦はこう――――」

 俺は作戦の全容を話す。
 それは少し危険な、でも一番理想に近いもの。

「確かにそれなら、でも――――」

「即席だし、相手も馬鹿じゃあない。きっとすぐにばれるだろう。けど、これが一番、状況解決に向いている」

「そうですね。そうしましょう」

 その後、総隊長、また部隊長たちと相談の上、俺は練り込まれてもいない思い付きの作戦を実行する。



「そこの盗賊たちよ、おとなしく出てくると良い」

 思い浮かべるのは森で盗賊に襲われた時のあの聖女様。
 あの時のアミリアさんは、いつしか俺の聖女のイメージそのものとなっていた。

「誰だ、貴様は! それ以上近づくとまた撃つぞ!」

 また、と言っているあたりさっきの爆発物を使用したのはやはり盗賊側だったようだ。
 爆発の跡を見ながら、あと何度、そしてどうやって使用したのかを推測する。

 人数は十五名。
 いずれも武装している。
 そして今は警戒が外に向いているせいで、内部の数人は抵抗するアミリアさんに気を取られている。

「なんの罪を犯したか、言ってみなさい」

「お前に言ったところで、安全は保障されないだろう!」

「俺は新たな聖者。話してみなさい、俺が話を聞こう」

 そう促す。
 これで話を聞いて、彼らに非がないならもちろん罪は濡れ衣だろうから許すだろうさ。
 そうだとしたら穏便に、アミリアさんも救助出来て正義の名のもとに悪を断罪するだけで終わる。

「聖者......確か、もうすぐ任命されるとは言っていたが......お前か」

「そうだ、全員出てきて、話をしろ。そうすれば場合によっては許してやる。というわけだ」

 俺は絶対に許す、とは言えない。
 そんな権限はないし、仮に向こうが快楽殺人者だとして、それを聖者の名のもとに許してしまえば、最悪聖者、聖女という立場そのものが消える。
 だが、そんな俺の心情を知らずに盗賊の男は指示を出す。

「そうか......お前ら、出てこい」

 洞窟の中からぞろぞろと、人――――盗賊が出てきた。

 兵士が武器を構える。

「待て」

 俺が一声で抑える。

 見れば向こうも臨戦態勢を取っていた。
 が、兵士が武器を下したことで盗賊も武器を下した。

「ほら、今攻撃する意思はない。動機を聞かせてくれ」

 これも打ち合わせ通り。
 一度武器を出して、俺がそれを抑えることで本当に俺が聞く意思があると、そう思わせる。
 そしてその思惑通り、一人の男が武器を下ろして話し始めた。

「俺たちは、いずれ世界を変えると、そう誓った仲なんだ」

 そして彼は、そう言ってのけたのだった。
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