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1章

戦闘

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 クレディの放った火の槍は、四本ずつでまだ生きている人たちに襲い掛かる。
 だが、リーダーは二本を回避、そして一本を弓で撃ち落とすと、最後の一本を無理やり死体となった剣を持っていた男で防いだ。

 仲間を思う気持ちは、なんて気持ちも少しは湧き上がるが、自分が生きるために手段を選ばない、その精神だけは尊敬できるものだ。目指そうとは思わないけど。

 そしてもう片方、呪術師のほうは、脇腹に食らって動きが悪くなっていたためか、またもや一本、腕に食らいながらも木陰に隠れ、三本をやり過ごした。

 呪術師のほうは、怪我で動きも鈍くなっているから、何とかなるだろう。

 そして火の槍最後の一本は、上空に打ち上げられた。

「実際、人数差が覆せてない以上救援を呼ぶしかない......」

 いくら人数差が反転したと言っても、俺と聖女様は戦闘するには力不足。そしてクレディは魔力が尽きれば終わりだ。いくら俺がバフをかけて以前のような戦いができると言っても、前衛無しで二対一をさばけるほどの強化を出来ているとは思えない。

 だが、それでもさっきよりは状況は好転した。

「チッ、面倒な。さっさと片付けるぞ」

「わかってる、クヒッ」

 即時に二人は走り出して――――聖女様のほうに、ナイフを構えた。
 その先端は液状のものが付いた照りを見せている。

 即死毒というのは、存在する。
 その毒を食らえば一撃で死亡、俺の治癒が間に合うことはない。
 だが、もちろんそんな毒が、一般で使われるもののはずではなく、大金を積んでようやく一回分程度なのだ。
 それが、聖女様殺害の報酬と比べて安かったのか、それとも単に仕事をこなすという義務感からか。
 ともあれ、動きからして――――

「誰かに、雇われているな」

 でなければ、この状況で、逃げればもしかしたら助かるかもしれない状況で一人を狙うことはないだろう。
 とすれば、誰かが聖女様の殺害を依頼している、というわけだ。

 目的は、何だ。



「行かせない、ファイアウォール!」

 二人と聖女様の間に、火の壁が作られた。
 今クレディには魔法系バフを山ほどかけている。だが、もちろんバフにも弱点は存在する。
 まず、重複はしない。最後にかけられたバフが有効になる。
 そして、永久に効果が続く、ということはない。特に俺は効果に魔力を割いているため、持続時間はせいぜい三十分。そこからは効果がどんどん減衰し、一時間もすれば消えるだろう。
 最後に――――ゼロを一には、出来ない。
 どれだけバフを使おうが、極端な話運動音痴に身体強化をかけるのと、運動神経抜群の人に身体強化をかけるのとでは、効果は天と地ほどの差がある。

 つまり、何が言いたいかと言うと。

「クレディも、接近されれば終わる――――」

 クレディは俺よりも運動はできない。つまり俺よりも身体強化系バフの効果は薄いわけだ。
 幾ら俺のバフが人を英雄にすると言っても。

「わかってるわ、そんなことくらい――――なんて、説得力はないだろうけど」

 そうクレディはつぶやくと、魔法を使用した。

「ファイアボール」

 それは、持久戦を嫌う彼女には珍しい、燃費を意識した魔法だった。
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